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[書き起こし・要約] エイチーム(3662)IRセミナー・質疑応答 2024.5.6開催

2024.5.6に開催致しましたエイチーム(3662)のIRセミナー&質疑応答の書き起こしになります。

https://kabuberry.com/lab200


登壇者名 執行役員 経営戦略室長 山口貴史  氏

IRセミナー


株式会社エイチーム、経営戦略室の山口と申します。本日は短い時間ですが、よろしくお願いいたします。

会社説明をはじめさせていただきます。まず、アジェンダですが、イントロダクション、エイチームのご紹介、事業・ビジネスモデル、直近の決算概要、成長戦略、業績予想と配当という構成です。

イントロダクション

では、イントロダクションです。私の自己紹介になりますが、私は名古屋ではなく、神戸の出身でございます。その後、大日本印刷株式会社(DNP)という印刷会社に勤務し、その後は、船井総合研究所という経営コンサルティング会社におりました。事業再生などの仕事をさせていただいた後、2016年にエイチームにジョインいたしました。

本説明会の要旨を3点にまとめて申し上げます。まずは、エイチームの強みは何かという点です。エイチームの強みは、「企画力」「デジタルマーケティング力」「高い技術力」だと考えております。二つ目は、今後の成長戦略として、M&Aによるインオーガニック戦略に取り組んでおります。三つ目は、エイチームはゲームを祖業としたデジタルマーケティングの会社だということです。この三つ目のデジタルマーケティングが非常に重要です。

現在の売上構成比として、デジタルマーケティング領域であるライフスタイルサポート事業が売上の大部分を占めている状態ですが、我々としては、エンターテインメント事業(ゲーム)をエイチームの祖業であり原点として扱いつつ、デジタルマーケティング企業として生まれ変わりたいと考えております。

エイチームのご紹介

エイチームは、2000年2月29日に設立されました。うるう年の2月29日生まれで、今年で24周年を迎えました。4年に1度の設立記念日のため、今年で6回目の誕生日ということになります。創業者であり代表取締役社長は林高生でございます。

業種は情報・通信、セクターはインターネット・ゲームです。代表の林高生について紹介させていただきます。林は1971年に岐阜県土岐市に生まれました。子供の頃からコンピュータープログラミングやゲーム作りに没頭していました。

林は異色の経歴の持ち主です。そして同時に苦労人でもあります。林は、陶芸が盛んな地域に生まれ、父は未来を嘱望された陶芸家でした。比較的裕福な家庭だったようですが、林が小学生の頃に病気で亡くなってしまい、林家族は一転して貧しく、借金だらけの生活に陥ります。すべり止めの高校を受験しなかった林は、高校受験に失敗し、中卒になってしまうのです。
新聞配達のアルバイトをする生活を送りながら、高校生たちが楽しそうに外食している様子を涙ながらに見ていたというエピソードもあります。

エイチームという社名は、林が好きだったアメリカのドラマ「特攻野郎Aチーム(原題:The A-Team)」に由来しています。将来、プロフェッショナルの集まりのようなチームを作りたいという思いからつけられました。1997年に個人事業として「エイチーム」を創業、そして、2000年に株式会社化しました。

エイチームの転機は、2006年でした。この年に、MMORPGの「エターナルゾーン」をリリースしました。当時はフィーチャーフォン(ガラケー)向けゲームで、非同期型が主流でしたが、同期型のRPGを作ったことで画期的でした。チャット機能もあり、ゲームの可能性が広がりました。エイチームを語る上で、この「エターナルゾーン」の開発は最もエポックメイキングな出来事と言えます。

「エターナルゾーン」は、一人の天才プログラマーが開発したものですが、それは林ではありませんでした。あまり会社に来ない社員がいて、同期型RPGを作ったらどうかと提案したところ、3日後にはできていたそうです。

もう一つの転機が、同時期の2006年にリリースした引越し比較・予約サイト「引越し侍」です。現在でも18年続いているビジネスです。当初は釣り船予約サイトのアイデアもありましたが、市場が小さかったため、市場規模がそれなりに大きい引越し業界に注力することになりました。当時の引越し業者の集客方法はタウンページが主流でしたが、それをインターネットに移行させていったのがポイントです。

2006年にライフスタイルサポート事業が始まり、2007年には中古車価格査定サイト「ナビクル」、2008年に結婚式場情報サイト「すぐ婚navi」(現:ハナユメ)がローンチしました。また、2008年から2010年頃にかけてフィーチャーフォン(ガラケー)からスマートフォンへの対応を進め、2011年からスマホ向けゲームを作り始めました。スマホゲームが大ヒットし、2012年に東証マザーズに上場を果たします。

上場後、2017年に「Qiita」を運営するIncrements株式会社(現 Qiita株式会社)を買収しています。ライフスタイルサポート事業、エンターテインメント事業ともに、2020年のコロナ禍まで順調に成長を続けました。上場後に停滞期に入るIT企業が多い中、エイチームは業績面で好調を維持したのが特徴です。

経営理念は、「みんなで幸せになる会社にすること」と「今から100年続く会社にすること」の2点です。林自身、社員によるプログラムの持ち逃げ未遂事件など苦労した経験から、経営理念の重要性を痛感したそうです。

幸せの定義として、「みんなから必要とされる存在であること」「金銭的に豊かであること」「幸せにしたい人を幸せにできること」を掲げています。私自身、エイチームに入社を決めた時、特に「金銭的に豊かであること」は秀逸だと感じました。お金はゴールではなく道具だと思いますが、お金がなければ何もできない。だからこそ、儲けることに対してポジティブでいることが大切だと、林は社内に徹底しているそうです。

2020年頃からパーパス経営の必要性が叫ばれるようになりました。コロナ禍で社員が不安になる中、我々はビジネスとして金儲けをしているが、本当に世の中の役に立っているのかという声が社内から上がってきました。

エイチームの経営理念は内向きで、ビジョン型だと言えます。しかし、2020年に入社した社員からすると、内向き姿勢では世の中の役に立てないのではないかという違和感がありました。そこで、外に向けた、つまり世の中に向けた存在意義として、「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」というパーパスを定めました。

エイチームの歴史を振り返ると、最初は受託開発や公式サイトの開発から始まり、2006年にライフスタイルサポート事業、2010年頃からソーシャルゲームを展開。そして、2015年以降は、ウェブサービス、スマホゲーム、ECの3つの柱で事業を進めてきました。

しかし、この3つの柱は、事業というよりは「産業」としての分類に近く、エイチームの強みが何であるか表現できていないという課題感がありました。何が強みの源泉なのかをアピールしきれていないのが、IR面での課題だと考えています。そこで、適合計画(東証プライム市場上場維持基準の適合に向けた計画)で新しい成長戦略を描くことにしました。

株価の推移を見ると、かつては3,000円程度でしたが、現在は600円程度まで下がっています。適合計画の目標には届いていませんが、水面下で成長戦略を遂行しているところです。

業績好調だった2017年12月頃は3,000円近くまで上昇しましたが、そこから株価は下落。一つの転機となったのが、スマホ向けバトルロイヤルゲーム「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」です。商業的には大失敗し、約9億円の営業損失を出しました。しかし、業界内での技術的な評価は高く、受託開発案件においては多数の引き合いがあるという状況です。

事業・ビジネスモデル

事業・ビジネスモデルとしては、インターネットを軸に事業を展開する総合IT企業というのが以前の位置づけでした。しかし、これでは何の強みもない八百屋のようだと私も林に言っています。オーガニックに特化するなど、強みをしっかり出していく必要があります。

現在の3つの事業軸は、ライフスタイルサポート事業、エンターテインメント事業、EC事業です。中でも、ライフスタイルサポート事業は「不安の解消」をテーマとしており、当社のビジネスと非常に相性が良いと考えています。

不安の解消というのは、ネガティブな状態からポジティブな状態への転換を意味します。一方、ゲームは面白い存在で、ポジティブな人がプレイすることでイライラしたりハラハラしたりなどネガティブになることもあります。つまり、ネガティブな状態からポジティブな状態への転換だけでなく、ポジティブな状態からネガティブな状態への転換もビジネスになり得るということです。

ライフスタイルサポート事業の代表例としては、引越し比較・予約サイト「引越し侍」が18年続いている他、中古車価格査定サイト「ナビクル」、結婚式場情報サイト「ハナユメ」などがあります。また、昨年ローンチしたお金の情報メディア「イーデス」というWebメディアもあります。

我々の永遠の課題であり強みでもあるのが、広告宣伝費の高さです。つまり、我々は検索エンジンをハックし、有料広告で検索結果の上位に表示させることで集客しているわけです。しかし、純粋な検索でも上位に来るようにしていかないと利益率は上がりません。そこで「イーデス」というメディアを立ち上げました。

もう一つ、2017年12月にM&Aした国内最大規模を誇るエンジニアコミュニティ「Qiita」は、日本のエンジニアのほぼ全てを会員として抱えています。現在は広告モデルが主流ですが、120万人というコミュニティを活用し、オフラインとオンラインの両面で展開しているところです。

エンターテインメント事業では、「ユニゾンリーグ」が10年経った今でも主力タイトルとなっています。その2年後にリリースした「ヴァルキリーコネクト」は、業界でも初めての3DのRPGでした。他にも、ダークファンタジーの「ダークサマナー」、競走馬育成ゲーム「ダービーインパクト」なども健闘しています。

EC事業では、現在は化粧品ブランド「lujo」とドッグフードブランド「OBREMO」を展開中です。

エイチームの共通の強みは、企画力、デジタルマーケティング力、高い技術力だと言えます。特にデジタルマーケティング力が一番の強みだと考えています。

EC事業についても触れますと、昨年までは自転車専門通販サイト「cyma」を展開していました。小売業に必要な能力は、集客力、商品力(マーチャンダイジングを含む)、そしてサプライチェーンマネジメント(SCM)の3つです。

「cyma」ではSCMが非常に大変でした。自転車は大きくて重く、輸送が難しい上に、一生で数回しか購入しない商品です。かつ、ブリヂストンやパナソニック、ヤマハなどのナショナルブランドのシェアが高く、利幅が薄いという問題もありました。

当社の強みはデジタルマーケティング、つまり集客力です。集客に多額の広告費を投じるなら、その回収率、つまり粗利率が高くなければなりません。化粧品は粗利率が80~90%と高く、ペットフードやペット関連ビジネスも粗利率が高い商品です。その次は美容健康関連になります。

つまり、粗利率が高いビジネスの共通点は、人間の欲望に直結していることです。我々としては、粗利率が高く、かつ小口で配送できる商品を扱っていきたいと考えています。

EC事業はあくまで、既存のアフィリエイトメディアで培った集客力を横展開したものです。物作りを頑張っているというよりは、広告を受ける商品を選んでいるというのが実情です。

ライフスタイルサポート事業が今や売上の約70%を占めています。他にも「ライフドット」「ナビナビ保険」「キャリアピックス」など多数のメディアを展開中です。なかでも、「キャリアピックス」は人材ビジネス領域への参入として、M&Aにより獲得したビジネスです。また、お墓のメディア「ライフドット」は、デジタルとの相性を模索中という状況です。

我々のビジネスモデルは、生活者からの見積もり依頼を、事業会社に送客して成果報酬を得るというB2B2Cモデルです。生活者向けのように見えて、実際のマネタイズ先は事業会社というB2Bなのが特徴です。

例えば「引っ越しのサカイさん」が必要としている集客力について、我々が運営するメディアというソリューションを通して集客の支援をしています。こうしたものが、我々のビジネスモデルです。

ライフスタイルサポート事業の業績の推移です。こちらは、複数のサービスの積み上げによって利益を創出しております。売上高についてはYoYで減少しておりますが、FY2023Q2と2024Q2で一番大きな違いがございます。減少の主な要因としては、「引越し侍」に付帯販売している電気やインターネット回線の影響によるものです。

多くの場合は、引っ越ししたら電気の契約やインターネット回線の開通が必要です。引越し侍を利用したユーザーにこれらもセットで販売していましたが、昨今のいわゆる電力小売ビジネスが不調の煽りを受け、集客をストップしました。さらに、インターネット回線においても、大手3社がしのぎを削って費用をかけて集客を強化していましたが、競争が落ち着き、当社からの送客が減少しました。

このように、「引越し侍」の付帯サービスによる減少に伴い売上が減収していますが、この影響額を差し引くとYoYでプラスになっております。ライフスタイルサポート事業のアフィリエイトメディアにおいてYoYで微増しているのが今の現状でございます。

ライフスタイルサポート事業の広告宣伝費の推移と、ピア企業3社との広告宣伝費率の差異です。広告宣伝費の高さについては良い側面・悪い面それぞれありますが、ピア企業3社と比較しても当社の広告宣伝費率は高く、現在の広告宣伝費は約60%となっております。

広告宣伝費はテレビCMなどの認知広告と売上に連動するWeb広告の2つに分けられますが、広告宣伝費のほとんどは、Web広告によるものです。多額のWeb広告を運用するため、Googleなどプラットフォーム運営者との契約では多少のディスカウントも在ります。

この多額な広告宣伝費について、利益率を圧迫している側面もありますが、これほど多額の広告宣伝費を投下する企業は珍しいはずです。つまり、莫大なWeb広告費用の投資で得られるものの1つにデジタルマーケティングノウハウの実績とノウハウの蓄積があります。「引越し侍」を開始してから長年培ったデジタルマーケティングの運用力の高さが当社の強みであるとも言えます。

こうしたデジタルマーケティングの運用力の高さに加え、「集客」というものに対して力を入れています。Web広告などを経由してユーザーが最初にアクセスするページのことをランディングページ(LP)と言います。多くの企業では、1人につき3枚くらいのランディングページを担当します。我々の場合は、1枚のランディングページに対して、企画担当、エンジニア、デザイナーなど、3・4名のチームで制作に取り掛かります。つまり、「集客」に対して、広告宣伝費に加え、人的資本も投資し、他社には実現できないほど力を入れて取り組んでいます。

デジタルの世界というのは、結局ティッピングポイントを超えなければいけない。先行投資の速さの量が重要です。しかし、誰でもできるものではありません。費用を投資するわけですから、通常は躊躇してしまいます。しかし、我々は、このようにして勝ち続けてきたのでティッピングポイントを超えるまでしっかりとアクセルを踏み続けることができている。これがオーガナイゼーション、組織レベルとして浸透してることが、我々のデジタルマーケティング力の強さではないかと考えています。

このようにデジタルマーケティング力の強みを活かして各サービスのシェアを順調に伸ばし、いくつもの業界シェアトップクラスにまで成長しました。改めてとなりますが、我々の強みは集客力であり、デジタルマーケティング力です。

続きまして、エンターテインメント事業です。主な展開ゲームとしては、「ヴァルキリーコネクト」や「ユニゾンリーグ」が主流で、自社のオリジナルタイトルです。その他にも、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」、「三国大戦スマッシュ! 」などを運営しています。しかし、「三国BASSA!!」「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」などは失敗し、サービスを終了しております。ご心配をおかけしております。

昨年では、研究開発としてNFTゲーム「Crypt Busters」をリリースしており、新たな領域にもチャレンジしています。

ゲームの主なビジネスモデルについてです。マネタイズはいわゆる「ガチャ」と言われるガチャモデルです。キャラクターや装備、イベントなど、ゲームを快適かつより楽しんでいただくためにユーザーに課金していただくというものです。この10年の日本国内のゲーム市場において、このガチャモデルは主流なマネタイズになっております。

エンターテインメント事業の業績に関してですが、少しずつ回復傾向にあります。QoQで黒字に転換しており、主な要因としては固定費の圧縮です。また、マネタイズの点においては、開発費の負担軽減を図れる受託開発の案件を増やし、着実に利益を確保しております。このようにエンターテインメント事業をファンダメンタルにしっかり位置付けていきたいと考えています。

エンターテイメント事業の強みや特徴についてです。強みに関しては、先ほどの「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」で説明にあった通り、国内初のバトルロイヤルを実現した技術力、「ヴァルキリーコネクト」で実現した高品質なグラフィックが特徴である業界初となる3Dのグラフィック力・技術力、国内初の携帯電話向けMMORPG「エターナルゾーン」のリアルタイム通信の技術など、様々な高い技術を使ってきました。

最後にもう一つ、ライフスタイルサポート事業でも今後展開を期待したいところですが、「グローバル展開」も強みとしております。グローバル展開において、展開する国の言語や文化などにあわせたローカライズが必要です。このローカライゼーションを自社のグローバルチームで対応しております。自社に内製しているため、ライフスタイルサポート事業において海外展開を視野に入れたビジネスが出てきたら、このグローバル展開力を活かして海外ビジネスにも挑戦できるのではないかと考えております。

最後にEC事業についてご説明します。EC事業では、化粧品ブランド「lujo」、ドッグフードブランド「OBREMO」を展開しています。売上比率は、「lujo」が8・9割を占めており、「OBREMO」は今はまだ成長段階にあります。

「cyma」(2023年3月に売却)を運営していた頃との一番の違いは、以前はサプライチェーンに力を入れていましたが、「lujo」「OBREMO」に関しては集客に全力を注いでいるモデルであるという点です。つまり、EC事業もデジタルマーケティングを活用したビジネスであります。

「cyma」を2023年3月に売却してから、EC事業は右肩上がりの成長を見せています。この好調な要因は集客です。「cyma」の大きな失敗として、ショット型の商品であったため、継続顧客が少なかったという問題がありました。

一方、現在の化粧品やドッグフードなどは定期購入するサブスクリプションモデルですので、安定した継続成長が見込めます。このように、EC事業が今後の成長ドライバーであり、手堅いファンダメンタルになると考えています。

直近の決算概要

直近の2024年度7月期第2四半期決算の概要です。売上高は59億4,000万円、営業利益はマイナス1,500万円、当期純利益はマイナス5,100万円です。当期純利益の赤字の要因は、投資有価証券の評価損を計上したことによるものです。

前年同期比では減収減益となりましたが、今期の進捗としては、売上高が41.5%で、営業利益は上期累計でマイナス1億8,500万円という状況です。当初の予定通りの進捗ではありますが、Q3・Q4で取り返していけると考えています。

営業利益の業績予想に対し、FY2024 Q1の赤字幅は縮小し、FY2024 Q2も予定よりも改善しました。

直近の4月の数字を見ると、しっかりと回収できる見込みです。下期にかけて、開示した6億円の営業利益目標に向けて努力していきます。

成長戦略の概要と取組

次に、東証プライム市場 適合計画についてお話しします。

業績が好調であったFY2019の売上高は371億円で、前期のFY2023は275億円、この100億円の差は主にエンターテインメント事業の落ち込みによるものです。FY2015は、ライフスタイルサポート事業とエンターテインメント事業の売上は半々、FY2019にかけてアフィリエイトビジネスであるライフスタイルサポート事業が大幅に伸長しながらも、エンターテインメント事業もしっかりと伸ばし、全体で大きく業績が伸びました。
現在(FY2023)では、ライフスタイルサポートが67.1%、ECが13.3%を占めており、デジタルマーケティングを活用したビジネスがライフスタイルサポートとECで全体の8割を占めています。残りの2割がエンターテインメント事業となります。

我々が強くお伝えしたいのは、デジタルマーケティングがエイチームのビジネスの中核だということです。しかし、日本国内市場だけでは限界があると考えています。

また、他社のデジタルマーケティング企業は、メディアだけでなく広告代理店なども手がけていますが、エイチームはエンジニア出身の創業者であるため、営業が得意とは言い難い。そのため、デジタル技術に特化して成長してきました。

技術力の要素は高いものの、デジタルマーケティングを外販する力が不足しているのが課題です。そこで、インオーガニック戦略により、営業力を取り込んでいきたいと考えています。営業会社になるつもりはありませんが、営業力のある会社をグループに加えることで、技術力と営業力の相乗効果を生み出し、デジタルマーケティングを活用したビジネスの新たな柱を作ります。

具体的には、B2B2CモデルのアフィリエイトビジネスでSNS運用や広告代理店、マーケティングコンサルティング会社などをM&Aで取り込み、ハブとして機能させます。さらに、デジタルマーケティングツールを提供する会社をM&Aで獲得していきます。

現在の我々のソリューションは、主にメディアを通じたものですが、今後はB2Bでのデジタルマーケティング支援にも力を入れていきます。ツールの提供や広告代理業を通じて、お客様の集客を多角的にサポートしていきたいと考えています。

M&Aに関しては、ロングリストを作成中で、昨年12月時点でLOI(意向表明)を出した企業が複数社あります。近いうちに良い話ができるかもしれませんが、まだ具体的には言えません。期待して待っていただけたらと思います。

現在、複数社のCEO、CFOとコンタクトを取っており、8社ではありませんが、2桁の企業と面談をしています。そこでリールを進めているのが今のM&Aの状況です。

M&Aの規模としては、事業価値(EV)で50億円を考えています。エイチームの強みは、デジタルマーケティング力に加え、現預金が約60億円、有価証券で約25億円あり、合計で約90億円の非事業価値を持っています。BSは約130億円なので、そのうち90億円が非事業価値ということになります。

また、今年12月にデットファイナンスで30億円の調達を完了しました。つまり、非事業価値で90億円とデットファイナンス30億円で、合計120億円の資金があります。運転資本を考えると、20から25億円あれば安全なので、100億円規模のM&Aが可能な状況です。

ただし、M&Aの後にはPMIなどの統合作業があり、人的リソースが不足しているのが課題です。第1段階としてEV50億円でM&Aを活性化していきます。

また、M&Aを進めていく上で、事業とキャッシュの管理が重要になります。これまでは各サービスが順調に成長していたため、ポートフォリオマネジメントよりもサービスそれぞれの成長に注力していました。しかし、コロナ禍で状況が変わり、経営管理の重要性が増しました。

M&Aでインを増やしても、コーポレート部門のキャパシティに限りがあるため、アウトも同時に行わないと効率的なお金儲けができません。そのため、適合計画を機にポートフォリオマネジメントを強化していきます。

インオーガニック戦略を進めるためには、資金調達が不可欠です。デットファイナンス、エクイティ、売上・利益の増加という3つの方法があります。これまでは成長投資を優先してきましたが、今後はファンダメンタルズを重視し、M&Aにも活用していきたいと考えています。

配当予想及び株主還元

また、株主還元についても力を入れていきます。当社は高成長を経験してきたため、年10%の成長ではグロース感が乏しいかもしれません。そこで、EPSの成長と配当利回りの向上により、TSR(株主総利回り)を12~13%程度に維持したいと考えています。

さらに、生理日予測・体調管理アプリ「ラルーン」をメドレー社に約5億円で売却し、得られたキャッシュの20%を特別配当に充てました。普通配当16円に特別配当4円を加え、合計20円の期末配当予想を発表しました。来期以降も利益を出すことで、この水準の配当を維持したいと考えています。

当社はパーパスである「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」の実現を目指しており、、成長だけでなく株主還元にも注力し、資本市場と社会に対して価値を提供していきたいと考えております。

質疑応答

Q. M&Aの買収資金について、三井住友銀行で30億円のコミットメントラインを活用するということになったと思うのですが、その経緯を教えてください。

A. M&Aを進めていく上で、デットファイナンスをM&Aに当てるということは本当は明言できません。当社は現金として約60億円を保有しており、その資金をM&Aの資金として先に使う予定です。しかし、現金は運転資本にも回していく必要があり、安定的かつ流動性の高い現金の確保が急務だと考えています。そのため、今回コミットメントライン契約を結び、安定的で流動性の高い運転資本確保を主目的とした調達を行いました。

Q. M&Aは競争も激しく買収コストも上がっていますが、M&Aを行う上で重視することはどのようなことでしょうか。PMIの方針やIRRの基準値などもあれば教えてください。

A. 方針としては、EV÷EBITDAを6〜7年くらいをベースに見ており、目標は5年回収です。そのため、黒字会社を買収する方針です。昨今SaaSのバブルが弾けたことで、非常に価格が落ちている状況です。グロース市場の適合計画次第では、上場価格が高くなる可能性もありますが、現在動いているところでは3、4年前の価格から半額ぐらいのイメージです。競争激化で値段が吊り上がる可能性はありますが、3、4年前の半分以下という感覚です。

Q. 株価が目標株価とだいぶ離れていますが、目標は達成できそうですか。上場維持基準の計画書と比べて株価が下がっていますが、その現状認識について教えてください。

A. 株価が当初の目標よりも低くなっているのは、弱気な業績予想であったことと、FY2024 Q1の決算がマイナスでスタートしたことで、株価を落としてしまいました。当社は決算プレイ銘柄のような状況が続いており、この流れを変える必要があります。また、出来高が全然ついていないという現状も変えなければなりません。

今回、特別配当を発表したところ、1週間ほど出来高がつきました。出来高が全然動かないところから動くことがわかったのが一番大きな収穫です。株価について今が割高か割安かを議論しても仕方がないので、現状が普通だと思っています。

ただし、我々が考えているインオーガニック戦略が実現した暁には、それがアンダーバリューなのかオーバーバリューなのかを評価していただきたいと思います。M&Aには博打的な要素がありますが、M&Aをすることでモメンタムを得たいと考えています。このモメンタムを得ることで、しっかりと株価を形成していきたいと思っており、愚直にM&Aを進めることでプライム適合計画の目標株価を目指していきたいと考えています。

Q. 過去の実績を見ると、下方修正が多いように思います。強気の見通しを好む方もいるかもしれませんが、私としては正確な見通しを好みます。来期の見通しはコンサバティブに考えるのか、高めに考えるのか、どのように考えているのでしょうか。

A. ご指摘の通りで、当社は資本市場の方々に対して信頼を確保できていなかったと自覚しております。下方修正が非常に多い会社であり、エンターテインメント事業のボラティリティが高く、ギャンブル性が高いことが原因でした。これからコーポレート部門を強化して全社戦略を遂行することで、しっかりとした予算、開示をしていきたいと考えています。

開示計画についても、ポートフォリオマネジメントの杜撰さがあり、成長が終わっているのに新規開発が多く、利益が出ないモデルになっていました。しかし、新規事業が回収フェーズに入り、10億から12億円ほど利益が積み上がると予想しています。そこから20億円が見えてくるのが現状です。M&Aと既存事業でプラス、エンターテインメント事業でマイナスもしくは受託開発の案件により黒字化するかという形になりますが、EBITDAで25億円前後は十分目指せると考えています。

Q. M&Aでインオーガニック戦略を進める上でキャッシュが重要になるという話でしたが、一方で株主還元でDOE4%以上を目指すというのはトレードオフの関係にあるのではないでしょうか。DOE4%を目指す意気込みについて教えてください。

A. 当社の利益、つまり分母が低いのが問題ですが、DOE4%は現在の株式価値100億円に対して配当原資4億円、1株あたり20円程度になります。この4億円は死守していきたいと考えています。DOE5%を目指すよりは、利益をしっかり出して、配当性向35~40%を安定的に維持することが重要だと考えています。

基本的にはM&Aで本質的な成長を目指すことを軸としつつ、成長と株主還元の両方を追求していきます。当社はGARP銘柄になることを目指しており、成長しながら配当も継続していきたいと考えています。DOE4%以上を目指したいと思います。

Q. 資料23ページを見ると、広告宣伝費率が他社より高いようですが、ROASの費用対効果はどうなっているのでしょうか。

A. 当社のアフィリエイトメディアはショット型で、既存顧客ではなく新規顧客を広告で獲得するモデルです。そのため、ARPU÷CPAがほぼROASと同じと考えていただければと思います。

広告宣伝費の内訳は、約9割が売上連動の獲得のWeb広告で、残りの1割がテレビCMなどの認知広告です。獲得の広告を落とすと原価を落とすのと同じ状況になるため、売上も一気に落ちると思われます。リスティング広告で集客することで件数を担保し、契約単価も上がっています。広告宣伝費を下げてSEOにシフトしても、いずれ契約単価が下がって利益率が低下すると考えています。

とはいえ、60%という広告宣伝費率は異常に高い状況であると自覚しており、SEOと認知度を高めることで下げていきたいと思っています。

Q. 広告宣伝費率が高いこと自体は問題ないと思いますが、売上高が伸びていない方が問題だと思います。ポートフォリオのバランスを見ると、ライフスタイルサポートやECは伸びているのに対し、ゲームは落ち着いているイメージです。ライフスタイルサポートやECは広告を出せば売上が上がると思うのですが、現状売上が横ばいや減少している理由は何でしょうか。

A. 2019年の売上高371億円の内、ライフスタイルサポートが220億円ほどでした。現在は275億円の67%なので、実際の額としては下がっています。これは金融メディアの売上が下がったことが一番大きな要因です。

2020年頃から金融メディアの競争が激化し、母数が下がっていきました。2019年当時は金融メディアが伸びて広告宣伝費率が高い状態でしたが、金融メディアのポートフォリオ内のシェアが低下すると、CPAが比例配分で下がっていく構造になっています。

サービスポートフォリオの変化で広告宣伝費率が動いたり、金融メディアの増減でYoYが変わったりする部分はありますが、「引越し侍」は顕著に成長しています。必ずしも全体の売上だけで見るのではなく、個々のサービスの動向を見る必要があるということですね。

Q. ECについて、サイマを2023年3月に売却した後も赤字が続いている要因は何でしょうか。

A. 「lujo」はもう黒字転換しました。「OBREMO」については、まだ集客の段階で継続顧客を積み上げている状態で、単体では来期中に黒字化を目指していきたいと考えています。

Q. 今日の話では、御社の成長戦略は投資会社になるということだと思います。一方で、既存事業のリストラについてのお話はないようですが、既存事業で成長が見込まれるのであれば当然お話されると思います。そこが非常に残念です。

A. もちろんそうしたご意見もあることは承知しております。現状、具体的なリストラの話は出ておりませんが、ご指摘の点は今後の検討課題とさせていただきます。

Q. エンターテインメント事業は最近サービス終了ばかりで全然うまくいっていないと思います。スマホゲーム自体がサービス終了ばかりで、他社も同様ですが、もう撤退した方がいいのではないでしょうか。

A. 外部の方からは、コングロマリットディスカウントに感じることもあり、エンターテインメント事業の撤退を示唆する声もあるのは確かです。しかし、現状では具体的な撤退の話は出ておりません。

これまでは自社のオリジナルタイトルを展開していたため、ボラティリティが高かったのですが、受託案件によって安定的に収益を上げることで、事業を存続させる方針です。

Q. 今エンターテインメント事業ではどんなタイトルをやっているのか全くわからないですが、どんなタイトルを作っているのでしょうか。開発中止などもあり得るのでしょうか。

A. 現在、協業案件で2社と2タイトルの受託開発を行っています。受託開発ですので、開発中止の決定権は先方にあることは確かです。開発中止はあり得ると思いますが、開発費で利益を稼いでいる状態にあります。

Q. 広告宣伝費がキーになると思いますが、ティッピングポイントについてのお話がありました。実際どの程度まで進んでいるのか、もしわかれば教えてください。

A. 現在、アフィリエイトメディアで新規に立ち上げているメディアはございませんので、すべてティッピングポイントを超えている状態になります。立ち上げ時には月間で2,000万円程度の赤字、年間で2億から3億円のアフィリエイトメディアの赤字を出していましたが、最近苦戦していたブライダル領域でも市場が盛り返しを見せており、赤字幅が少なくなっている状況です。今は開発中の新規メディアがないので、ティッピングポイントは超えていると感じています。

Q. 営業力の話で、営業が苦手というのが社風の一つだというお話がありました。今後これをどのように進めていくのでしょうか。運用代行のM&Aの話もありましたが、営業力を補完していくのか、それともここは諦めて技術に全振りしていくのか、わからなかったので教えてください。

A. 営業力は補完をしていく方向になります。補完の仕方としては、M&Aでマジョリティを取るだけでなく、マイノリティ出資という形で事業提携をしていきたいと考えています。

Q. エンターテインメント事業について伺いたいのですが、ファイナルファンタジーの件で技術力が見えたという話があったと思います。それがゲームの受託開発に結びついているという理解で良いでしょうか。受託開発のビジネスモデルについて詳しく理解していないのですが、自社開発と比べると、受託開発では一定の報酬や代金、売上が上がり、それにプラスしてゲーム自体が伸びれば出来高のようなものがもらえるのでしょうか。

A. おっしゃる通りです。契約にも複数種類ありまして、純粋に人工の2倍の金額をもらってそこでお金を稼ぐ完全な受託開発モデルと、人工に対して100倍の金額をもらった上でレベニューシェアを設定するモデルがあります。レベニューシェアを20%や30%に設定したり、人工の7割や6割を負担してもらう代わりにレベニューシェアを上げていくようなケースもあります。

当社としては、まずはボラティリティを小さくしていく必要があると考えています。そのためには受託案件の比率を高めていきたいと思います。とはいえ、エンターテインメント事業の存在意義は何なのかと考えると、チュートリアルのような状態になっているのは確かです。エンターテインメント事業で株価形成を行うのは非常に難しいと考えていますが、キャッシュを得るという点ではアップサイドが見えると思っています。状況を見ながら、受託案件の割合とレベニューシェアの割合を増やしていきたいと考えています。

Q. 化粧品事業について、粗利が80%を占めているとの説明がありましたが、それが好調であれば化粧品に特化してやっていけばいいのではないでしょうか。

A. 化粧品と言いましたが、当社が扱っているのは主に基礎化粧品の領域になります。現在一番売れているのは「ニードルセラム」という「塗る針美容液」というもので、そのシェアを徐々に上げています。化粧品全体を伸ばすというよりは、個々の単品を伸ばすという感覚でやっています。

化粧品の領域は、少しゲームに近い部分があり、商品によってヒット・不ヒットの差が大きいのが特徴です。常に集客に対するレスポンスの良し悪しをテストしながら、新商品を投入していく形になります。化粧品は新商品の領域になりますので、今後もチャレンジを続けたいと考えています。

Q. ライフスタイルサポート事業の同業他社比較で、同業他社との違いは広告宣伝費の大きさだという話がありました。広告宣伝費を削って利益を出すというのは合理的なのでしょうか。

A. 広告宣伝費を削ると売上が下がってしまい、利益を生むことができなくなります。広告宣伝費は仕入れ在庫に似ていて、売上と連動する性質があります。

もし広告宣伝費を削減した場合、3ヶ月から半年ベースではSEOの効果で持ちこたえられるかもしれませんが、広告宣伝を落としていくとドメインからの送客が落ち、ドメインの力が低下して利益率が悪化します。とはいえ、現在の広告宣伝費の高さは確かに課題だと認識しています。

リスティング広告だけに頼らず、SEOの比率を上げていくこと、また投資に余裕があれば認知広告にも回してCVRを改善することが、利益向上につながると考えています。

Q. P社は業績が伸びているのに対し、エイチームは横ばいなのはなぜでしょうか。

A. P社とZ社は金融、人材、リフォーム(外壁など)の領域を手がけており、基本的にリクルートが展開しているマーケットのニッチな部分を攻めています。一方、当社は引っ越しや中古車査定など、大きなマーケットに行っていないのが大きな違いです。

「カーセンサー」と「ナビクル」、「ゼクシィ」と「ハナユメ」など、多少ぶつかるところも在りますが、少しずれているのが特徴です。ピア企業とはマーケットが違うことと、当社はニッチトップを取っているので、そのポジションを維持するためにPPC広告への投下を止められないのが現状です。

Q. であれば、P社が稼げているのと同じことを当社も攻めていく考えはないのでしょうか。

A. P社はM&Aで事業領域を増やしています。当社としては、同じ業界を深掘りするようなM&Aは現時点では考えておらず、デジタルマーケティングという軸でテーマ型、ファンクション型のM&Aを進めていくのが方針です。

Q. 日経新聞のプラチナ企業ランキングで9位にランクインした秘訣や、他社と比べて良い点は何でしょうか。

A. 当社は働きがいのある会社ランキングの常連ではありますが、中にいると特段良い点は気づきづらいですね。ただ、社員食堂、休日の取りやすさ、男性の育休取得率の高さ、女性の復帰率の高さなど、働きやすい環境にあるとは感じています。ただ、それがどう利益につながるのかは今後の課題だと認識しています。

Q. ZIP-FMの冠スポンサー番組を務めていますが、宣伝効果はどの程度あるのでしょうか。無駄に思えるのですが、YouTubeの方が合っているのではないでしょうか。

A. 広告宣伝というよりは広報活動の範疇だと思います。広報活動のROIを見るのは非常に難しく、社内からも削減すべきという意見は出ています。ただ、ナビクルに関してはラジオからの集客が多いのも事実なので、止めると売上が下がるのではないかという懸念もあります。

広告を下げたらCVRがどれだけ下がるかわからないので、下げきれないというジレンマに陥っています。チラシをやめたら売上は下がるけど利益は改善するのではないか、というのは多くの企業が抱える課題だと思います。この点は広報部門とも話し合っていきます。

Q. 若手人材に期待すること、人材育成で注力していることを教えてください。

A. 2020年以降の新卒は、コロナ禍真っ只中の世代で対面を怖がる傾向にあります。そのため、新卒の2年目までは原則として出社勤務としていますが、3年目からは在宅勤務を許可しています。しかし、リモートでの働き方になると一気にコミュニケーションが減ってしまうという問題があります。対面でのコミュニケーションを増やすことは今でも重視しています。

若手のオンラインコミュニケーション能力は高いのですが、テキストベースのやりとりが中心になってしまいます。概念を共有するにはホワイトボードなどの方が適していると考えているので、そういった場面では出社してもらうようにしています。今後はオンラインのホワイトボードツールなども活用しながら、コミュニケーションの質を高めていきたいと考えています。

Q. 人手不足が深刻な美容業界などで、個人事業主化が進んでいます。人材不足に悩む日本社会に対して、御社ではどのようなアプローチが考えられますか。

A. 社会的テーマとしてはIT人材の不足が深刻だと思います。Qiitaは120万人の会員を抱えていて、フォーマル・インフォーマルを含めると大きなコミュニティになっていますが、今は広告でのマネタイズに留まっているのが課題です。

このあたりをオープンイノベーション化できれば、人材の流動性を高められると考えています。個人的な見解ですが、優秀な人材も5年もすると無能化が進んでいきます。3年目くらいまでは頑張れるのですが、徐々に惰性に流されるようになります。優秀な人材ほど流動性を高める必要があり、そのためにQiitaは有効だと思います。

ただ、Qiitaはマネタイズが難しいという問題があるので、他社との提携を進めることで、Qiitaを通じて世の中のために貢献できることはないかと考えています。もちろんマージンも稼いでいきたいですが、Qiitaの可能性を追求していきたいですね。

Q. ゲームのマネタイズはガチャが中心というお話でしたが、受託開発でもガチャがマネタイズの中心になるのでしょうか。

A. 日本国内市場ではガチャがメインのマネタイズ手法だと思います。当社の「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」が失敗した大きな要因は、版権の問題でガチャを実装できなかったため、ガチャとIPの両面で課題がありました。

現在は広告収入モデルやリワード広告なども主流になってきているので、ガチャ以外のマネタイズも模索したいと考えています。ただ、爆発的なヒットにはガチャが欠かせません。

グローバル市場ではガチャ以外のマネタイズを進めるべきだと思いますが、自社でそれを手がけるのは難しいというのが正直なところです。当社の身の丈に合った戦略としては、開発費をいただき、一部のレベニューシェアを得る受託開発モデルが適していると考えています。

Q. Qiita Jobsについて、求人サービスを拡大するという話を聞いたことがありますが、今回の説明では触れられていませんでした。稼げなさそうなビジネスだと判断したのでしょうか。

A. ご指摘の通りです。Qiita Jobsは近々サービス終了を予定しています。

当初は優秀なエンジニアが集まるサイトになると期待していましたが、実際にはQiitaを訪れるユーザーの目的は技術的な疑問の解決であり、就職・転職ではないことがわかりました。そこにギャップがあり、ユーザーのモチベーションを変えるのは非常に難しいと感じています。

今後は、Qiitaのプラットフォームを活かして勉強会を開催する企業と提携し、転職支援会社とアライアンスを組むことで、当社がロイヤリティを得るモデルの方が合理的だと考えています。

エンターテインメント事業でガチャ以外のマネタイズができなかったように、Qiitaでも送客以外の収益化ができていないのが課題です。複雑なモデルになるとノウハウ不足が露呈するので、オープンイノベーション化を進めないと、Qiitaという優良資産を活用しきれないという認識を持っています。

投資家の皆様へ

本日は、ゴールデンウィークの最終日にもかかわらず、ご参加いただきありがとうございます。

当社は、まだバリュエーションが十分に反映されておらず、苦戦している状況ではございますが、インオーガニック戦略をしっかりと実現していくことで、必ず割安だと皆様に認識していただけるよう努めてまいります。

また、今後のM&Aに関するニュースにも注目していただければと思います。お時間のある際に、ぜひ当社の動向をチェックしていただけますと幸いです。株価の変動はあるかと思いますが、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

本日はありがとうございました。