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キャバレーの朝

〜 poem サイド 〜


パサージュを二つ目

ブリュレ色の風見鶏まで

風に吹かれるまま
追い風流されるまま

SSまで息をタップした

フリンジが連なる
アーチをくぐれば

原色なネオンと
横っ面をぼかす

紫煙は漂う
捩じ込んだチップを
ガーターベルトに忍ばせた

キャバレーの夜

唇に
レモンピールの苦さを
知った夜

ジンに馳せて
ブルーレディになった

倉庫に一人
ヒール削って見よう見まねに
モンローウォークを
決め込んだけど

幾度夜を終えても

柑橘の人は
まだ

来ない

チップに付いた
BLEUの残り香が
微かに香るから

きっと
まだ

大丈夫

夜に焦がした胸が
滲む

あさひ

end

by kabocya


〜 SS(ショートストーリー) 〜





フランスに引っ越してきて丸一年、今夜もステージ用のタイツを無造作に引き上げて、歩くたびに揺れるビスチェのスパンコールの谷間に香りを垂らした。





大通りを抜けた二つ目の路地、ガラス製のアーケードを姿見にして身支度を終える。


反射するネオンが眩しいのよね。


年季が入った屋根の風見鶏を目印にして、素焼きした煉瓦に貼られた流行りの男優の頬に口付けの挨拶をした。


通りを抜けて地下まで駆けたら、ほら
私たちの


キャバレーが待ってる。





うちの店は入店したらまず、お得意さんのところまで各々挨拶へ。


めんどうったらないわ


でも
あの人がいるか確かめれるから


だからかしらね。





この仕事を始めて、私の初めてのお得意さんはジンベースのカクテルを毎回カウンター席の隅で口にしてた。


ステージの合間に挨拶に行けば、一緒に音楽のステップを踏んで絡ませたりね。
挟んでくれるチップは多くないけど、いつも柑橘系の香りをお土産にしてくれて。


BLEUの香りだと知ったのは
そうね


だいぶ後の話よ。


今でもお守りのように薫るチップをガーターベルトに捩じ込んで、モンローウォークのステップを鳴らしてペットにサックス、ピアノの挑発にのってるってわけ。


あの人の声に横顔がしだいに霞んでいくわ、夜が明ける度にね。
だから香りだけは覚えていたいのよ。


そしたらまた
出逢えるから。


名前の由来はそうね
ブルーレディはカクテルからとった名前よ。


勿論
柑橘の


ジンベース





決まってるでしょ。





end

by kabocya



※poemは自身のX内にて投稿したものを、一部修正をかけたものです。

※見つけてくださり、ありがとうございます。失礼します。

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