九尾の末裔
・
〜 poemサイド 〜
玄翁眠る
金剛石に似た霜柱覆う
北の国
国一つ滅びるとき
国三つは息絶える
朔風払葉
夜もふける頃
北狐運ぶ狐火は一つ
国境を越えれば
黒南風から白南風の
荒南風纏う氷柱は
滴る
色静かな氷河期に
淡い彩り紅き声
狐火の熱揺れるとき
九尾象る神獣の影
凍る国にきく
東風の
色
end
by kabocya
・
〜 SS(ショートストーリー) 〜
・
方角は南に位置する我ら火の国は、東に位置する青く息吹く樹の国からの知らせを今か今かと待っていた。
"火の国"に"樹の国"続いて"白金の国"そして"水の国"。
四つの国は各々に現世の季節を司り四季の秩序を保っているはずが、このところ異常をきしている。
近年、火の国の田畑は干魃に泣き、時には土をも蒸しあがり荒れ狂う日々に誰しもが危機感を覚えていた頃。
・
このままでは貧困がゆえに反旗を翻す者達の火種となりうるやもしれぬと、行燈に揺れる小さな灯火が揺れるさまに国の行先を重ね行末を案じ、どうするものかと縁側に足を伸ばしていたその矢先。
屋敷内に青々とした木の葉が東風(春風)と共に吹き纏う。
よくぞ来てくれたと冬の言付けを運んできた春の風達を労い、早急にヤツデの葉を仰ぎ見る。
芯の強いヤツデの葉でさえも、虫の息だという現状に嫌な汗がひとつ背筋をはしった。
・
足早に行燈の箱をそっと持ち上げ、ヤツデ葉を火元に当て炙り出す。
浮かび上がる水の国の情勢は、どうらや氷河期に入ったという内容だった。
煤になり任を全うしたヤツデの葉を土へと弔い、一息おき心持ちを添えた。
後毛が遊んだ髪を
動揺した自身の胸を改め、結い直す。
・
玄翁の眠る水の国が、今崩れれば四季は終わることになる。
我らの先祖にあたる九尾を滅した"玄翁"の警鐘ということに複雑さも混じりながらも、ごくりと飲んだ息を引き締め、帯を解き支度にはいった。
・
ひとつの火種が、窓辺から涼風(夏風)へ。
涼風から新涼(秋風)まで無事に届くようにと、伝書蛍に狐火を宿し新たな言付けを託す。
・
殺生石ひび
割れる時
玄翁により封印されし
九尾の心音は
僅かに灯る
淡く咲いた狐火の熱に
氷河期に眠る四季は
季節は
目を覚ます。
・
end
by kabocya
・
※要約
東西南北各々の国のバランスは崩れ、なかでも北国はダイヤのように硬い氷に覆われた氷河期の時代を舞台に物語は始まります。
九尾を封印した玄翁の元に、九尾の末裔が狐火を起こし、玄翁を救う話を自身で創り詠みました。
※poemは自身のX内にて投稿したものです。
見つけてくださり、ありがとうございました。
失礼します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?