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地域再生

地域再生の経済学―豊かさを問い直す

人間が人間としての能力を高めるには、人間が生物的存在としても健康でなければならない。しかし、人間が生物的存在として健康であるためには、自然環境が保全されていなければならない。そのため自然環境の保全も、共同作業による生産の前提条件となってきたのである。

もちろん、人間の絆によって人間を育成し、人間の健康の向上を図るために自然環境を保全しようとすれば、地域社会において営むしかない。というのも、そうした人間の絆の形成には継続的な人間的接触を必要とするからである。

もっとも、日本のように情報手段が高度化する知識社会では、人間の絆が弱くなると考えられている。情報が動き回るようになると人間が激しく動くようになると想定されているからである。しかし、こうした認識は妥当とはいえない。事実は逆で、情報が動けば、人間は動かなくてすむようになる。というよりも、人間が移動しなくてもよいように、情報を動かすのである。それゆえに、知識社会は自然環境にフレンドリーになる。人間が動き回れば、自然環境を破壊せざるをえないからである。

情報を動かせば、人間は移動不要になる。遠くまで自動車を動かして買い物に行くこともなく、インターネットで注文して、ユニバーサルサービスの郵便で配達してもらえばよい。人間の移動性が低くなると、継続的な人間的接触は増加して、人間の絆は強まることになる。

知識社会の社会的インフラストラクチュアは、地域の自発的協力を基盤に、自己決定権を把握した地方自治体が供給する人的投資と自然環境ということになる。しかもそれは同時に社会セーフティ・ネットにもなる。

地域再生の条件

地域の人々が意識的に意欲を持って地域再生に取り組むとしたら、おそらくそれらの人々の政治意識もまた変わってくるはずです。人々の政治意識が変わるとすれば政治そのものも変わらざるをえなくなる。政治が変われば、戦後ずっと変わらず進められてきた国土計画や地域政策も変更せざるをえなくなります。迂遠ではありますが、それが今日のわが国における地域格差を解消するもっとも有効な手立てであるかもしれません。

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