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すばらしい歴史書のご紹介

ある方から薦められて、『十二世紀ルネサンス』という本を読みました。
あまりにおもしろかったので、昨日一日で一気読み 😊
著者の伊東俊太郎さんは、残念ながら昨年亡くられていますが、本当にすばらしい学者さんです。


本の内容は、ひとことで言えば『ヨーロッパのルネサンスは、アラビア文化の影響で起きた』というもの。
その経緯を、古文書を丹念にひもときながら解説してくださっています。
ベースになっているのは、アラビア語文献とラテン語文献を比較し、英語で執筆された論文。
とはいえ、上記著作では、その内容を岩波セミナーとしてわかりやすく噛み砕いてくださっています。

ルネサンスは、一般的にはイタリアを中心に起きた知的ムーブメントと思われていますが、それはもっぱら『内的要因』だけに注目した歴史だと著者は指摘します。
そうした土壌がありつつも、そこに『アラビア文化』という種(=外的要因)がまかれて、はじめてルネサンスが起きたのだ、と。
わたし自身も、もっぱら内的要因ばかりに気を取られていましたから、その大枠の提示自体に驚かされました。

さらに言えば、自分たちの文化を研究する際には、えてしてそうなりがちなことも指摘されています。
ヨーロッパの文化に対しては、わたしたちは比較文化的視点を持てますが、日本文化に対する中国や朝鮮の影響を軽視しがちです。
以下、そのことに関わる部分の抜粋。

これは日本人が日本史の研究をするときも、私は同じ危険はあるだろうと思うのです。その意味で外国人が日本史の研究をすることは、たいへんよいことだと思います。われわれが当然としていることが彼らにとっては当然ではない。当然でないから新しい視角からそれを見つめることができる。そうすると、同じ史料を使っていても、我々がはっとするような新しい見方を提出してくれて、ああそうか、離れて見るとこういうことになるのか、と教えられることがあります。

『十二世紀ルネサンス』伊東俊太郎

内容もさることながら、歴史に対するすばらしいスタンスを堪能できる本。
超オススメの一冊です 😊

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