角田裕毅2022年振り返り 後半戦

1.ここまではどんなシーズンだったか

前半戦の振り返り記事を書いておりますのでこちらも合わせて是非ご覧ください。
角田裕毅2022年の振り返り 前半戦|K|note

2.レースごとに振り返る  後半戦

第14戦  ベルギー  予選P19  決勝P13

サマーブレイク明け初戦、F2時代にポールトゥウインを飾ったこともあるスパ。復調のきっかけを掴みたいレースでした。
前半戦最後のハンガリーGPではマシンが不可解なまでの不調でしたが、ここではFPで見る限りそこまで悪い状態ではなさそう。ただエンジンブレーキの不安定さを訴えていたのが気になりました。

そして迎えた予選では、Q1は突破できると思っていましたが最後のアタックでタイムを更新できずまさかのP19。このアタック中もエンジンブレーキは不調で、さらにマシンが非常に不安定な挙動を見せており、何か異変があるようでした。後から角田選手のインタビューでフロアにダメージがあったと分かりました。

決勝では前日の異常を受けPU交換やセットアップ変更を行い最後尾からスタート。マシンの状態は改善し、ハードタイヤをうまくマネジメントしながら走り順位を上げていましたが、2回のピットで作業が遅れタイムロス。それでもポイント争いのトレインに追いつき、周選手(アルファロメオ)をオーバーテイクしますが、入賞圏内までは届かずP13でフィニッシュ。

予選まではマシンの異変、決勝ではピットの遅れと嚙み合わない週末になってしまいました。ただレースでのペースは十分にあり、中団の中でも戦えていたことはすごくポジティブだったと思います。ファンとしては、ハンガリーでの絶望的なペースを最後に夏休みに入ったため、やはり不安は大きかったですが、久しぶりに「戦える」角田選手の走りが見れたことが嬉しく、最終盤の周選手とのバトルは声を出して応援しました。ポイントには届きませんでしたが、終わった後の感覚としては悪くなかったなと思いました。

第15戦 オランダ 予選P9 決勝DNF

この週末の感情を表すならば、「Woooo!!!!」からの「????」という感じでしょうか…。

高速コーナーもありAT03とはあまり相性が良くないかな?という印象のコース。事実、FPでは一度もトップ10に入っておらず、予選前最後のFP3ではP16と厳しい順位。今シーズン、予選に向けてパフォーマンスを上げてくる傾向のある角田選手とは言えど、今週は厳しいかな…。という感覚でした。

ところがいざ予選、蓋を開けてみると「一体、どこにそのタイムを隠していた?」と言ってしまうような走り。Q1で1回目、2回目のアタックと順位を上げていき、3回目のアタックではなんとフェルスタッペン選手(レッドブル)、ハミルトン選手(メルセデス)に続くP3!!セクター2は全体ベストのおまけつき。Q2でも新品タイヤ1セットのアタックをしっかりとまとめQ3へ。進出を決めた後は珍しく角田選手が無線で喜びを爆発させました(見てる側はずっと叫んでましたが)。それだけ難しい週末だったのだと思います。Q3は新品タイヤでのアタックがイエローフラッグにより完了できずP9に終わりましたが、今シーズンベストと言える素晴らしい予選でした。

この勢いで決勝もポイントを目指します。スタートで順位を落としますが、ポイント圏内のすぐ後ろP11でレースを進め、セカンドスティントではタイヤを持たせ2回目のタイヤ交換後のプッシュに備えて走っていました。
ところが2回目のピットから出た直後、角田選手が無線で「タイヤがハマっていない」と訴え、一度チームからマシンを止めるよう指示を受けます。チームから今度は「タイヤは正しく着いているから走って」と再度指示がありますが、角田選手は引き続きマシンの異常を訴え再度ピットイン。コースに戻ったところでデフにトラブルが見つかりもう一度コース脇にマシンを止めました。

なんともドタバタした終わり方でしたが、いずれにしてもレースはリタイア。決勝のペースはライバルに対しアルファタウリ勢はやや遅れを取っていたため、ポイントに届いていたかは分かりませんが、非常に良い予選からの決勝だったため、残念な結末になってしまいました。ただ角田選手個人で言えば週末を通してしっかりビルドアップし良いパフォーマンスを改めて示したため、歯車が嚙み合えばいい結果が出るはず、とも思えるレースではありました。

第16戦 イタリア 予選P15 決勝P14

前戦のリタイア時に一度シートベルトを緩めてから走ったということで戒告を受け、今シーズン5度目となりグリッド降格が決まっていました。そのためPUも交換し最後尾からのスタートとなったのですが、後から思うと勿体なかったなと。

というのも、FPでのタイムの出方を見ていると、この週末はガスリー選手とも比較して非常に角田選手が好調に見えました。予選でもQ1のみ走行しましたが、新品タイヤ2セットのみで楽々とQ2進出タイムを出しましたし、おそらくQ3も行けてただろうなと。ほかにもグリッドペナルティを受けるドライバーが多かったため、通常通りの順位でも大きくグリッドが上がっていたはずなので、ペナルティが勿体なかったなと思いました。5回の戒告も、正直全部が全部ドライバーが悪いのか…?と思うことも多かったし、ちょっと悔しいなと思ったところでした。ただこの週末はFPで黄旗無視のペナルティも受けていたのですが、これに関してはチームとの無線に齟齬があったとはいえ角田選手の判断でカバーできる部分でもあり、一つ一つが今後に向けた経験なのかもしれません。

いずれにしてもこのレースは最後尾からスタートなので、ペース良く決勝で追い上げることを期待しましたが、レースでは想定より苦戦した印象でした。最初のミディアムでは好調で順位をどんどん上げていきましたが第2スティントのハードはペースが全く上がらず。結果P14でのフィニッシュとなりました。AT03が硬めのタイヤでペースが上がらない傾向があり、正解の戦略としてはミディアム→ソフトだったと思われます。ただガスリー選手は同じ戦略でトレインの中に入りながらもポジションを守りP8で入賞したことを考えると、やはりグリッド位置が惜しかったな…。と思うばかりでした。角田選手個人として出来ることはやり切っていたと思います。

第17戦 シンガポール 予選P10 決勝DNF

イタリアGP翌週の9月22日に角田選手の来期契約延長が発表されました。シートに関してはガスリー選手のアルピーヌ移籍が取り沙汰されて以降、様々な噂が出ましたが、角田選手の残留に関してはほぼ確定と思われておりました。
ただ彼の周辺での色々な動きの中で発表に時間がかかり、ファンとしてはやきもきする期間でした。角田選手もストレスがあったことを後に明かしています。
思ったよりも正式決定まで待たされたものの、これで角田選手自身、しっかりとレースに集中できるようになったので一安心といったところでした。

そして迎えたシンガポール、予選では初走行のストリートサーキットに強い角田裕毅の本領発揮となりました。AT03とは相性が良いであろうと言われていましたので、良いパフォーマンスが出せれば…。とは思っていましたが、土曜日は雨。トリッキーなコンディションで初走行組にとっては難しい予選になるはずでしたが、変わっていく路面状況でもしっかりタイムを上げていきQ3進出、P10を獲得しました。
これでデビューから初走行のストリートではバクー、ジェッダ、マイアミに続く4回目のQ3進出。この適応力、やはり素晴らしいなと感じました。

決勝もウェットになり、多くのドライバーがミスをするような難しいコンディションでした。そんな中、角田選手は粘りの走りでポイント圏内を守っていましたが、途中コーナーで失速した際にアンチストールに入ってしまい順位を落とします。その後もエンジンブレーキが不安定でペースも上げられない中、路面の乾きを見てドライへ早めに交換するギャンブルに出ます。ポジションを取り戻すべくアウトラップからプッシュした角田選手でしたが、翌周にブレーキングポイントを見誤りウォールに直進、リタイアとなってしまいました。

乾き始めの路面で濡れているところも多く、同じ状況でハミルトン選手やフェルスタッペン選手もコースを飛び出しており、細心の注意が必要な場面だったと言えます。
一方で、アウトラップ~クラッシュまでの走りに関して、同じタイミングでタイヤを変えたガスリー選手よりも角田選手は速いペースで走行していました。ガスリー選手は経験豊富であり、やはりリスクを取っていたのだと思いますが、角田選手がもしあのペースのままミスなく走り切れていたならば素晴らしい路面への適応力だったと言え、そこは紙一重だなとも感じました。
その走りをミスなくできるのがアロンソ選手などのドライバーであり、角田選手もそういった選手たちの仲間入りをするための過程だったのかもしれません。

第18戦 日本 予選P13 決勝P13

角田選手にとってF1キャリア初の地元グランプリ。ホンダ育成で鈴鹿レーシングスクール(現:ホンダレーシングスクール)出身の角田選手にとっては最も走り慣れたサーキット。とはいえ、最後にこの場所で走った4年前はまだ日本のF4に乗っていたときでした。
前週のシンガポールから2週続けてのレースとなり、日本入りしてからはイベントや番組への出演で忙しく過ごしていましたが、その中でも角田選手は初の日本GPに向けて非常に楽しみにしていることが感じられました。

これを書いている私も初めてF1を観戦しに鈴鹿へ行きましたが、サーキットの至る所にホームヒーローである角田選手の写真があり、3年ぶりの開催となった鈴鹿、そして7年ぶりの日本人F1ドライバーである角田選手への大きな期待が感じられ、非常に胸が熱くなったことを覚えています。

日本のファンからの期待を一身に受け、鈴鹿でのレースに臨んだ角田選手でしたが、このサーキットは求められるダウンフォース量が多く、実はアルファタウリのAT03とは非常に相性が悪い場所でした。実際、予選直前のFP3では角田選手P17、ガスリー選手P20と非常に苦戦。予選Q1突破も難しそうかな…という印象でした。

予選では走り始めるとすぐに両ドライバーがブレーキの不調を訴えます。特にガスリー選手は最後まで不安定なまま、P17でQ1敗退となってしまいました。角田選手も同様に苦戦しますが、どうにかラップをまとめQ2へ。Q2でもブレーキには自信を持ちきれない状況でしたが、地元ファンの前で最大限の力を出し尽くし、惜しくもQ3進出まで0.15秒差まで迫るP13で予選を終えました。結果としては最高ではないのかもしれませんが、角田選手が今シーズン見せたパフォーマンスではベストと言える予選でした。

決勝日は事前の予報通り雨。スタートで順位を4つ上げP9になった角田選手でしたが、直後にレースは豪雨により赤旗。2時間以上に渡る中断を経てレース再開。弱くなったものの雨は続き、トリッキーなレースとなりました。角田選手はピットの間に順位を落としP10を走行、後方から迫るラッセル選手(メルセデス)相手に粘っていましたが最終的には抜かれ、P11となります。時間制のレースとなりタイムアップが迫る中、思い切って2回目のタイヤ交換をするギャンブルに出て、古いタイヤを履くライバルを何台かパスし失った順位を取り戻していきますがポイントまでは届かず、P13で初の地元GPを終えました。

コンディションやマシンの状況を含め、とにかく難しい週末だったと思います。そんな中でも常に声援への感謝を述べ、赤旗中断中は寒い中で待つファンを盛り上げ、フィニッシュ後にはスタンドへ手を振りながら一周し、そして何より、マシンから引き出せる最大限のパフォーマンスで日本の観客に応えた角田選手に私は本当に感謝したいと思いましたし、もっともっと彼のことが大好きになった、そんな週末でした。

赤旗中断中の角田選手
鈴鹿に展示された角田選手の写真。雨の中で撮りました

第19戦 アメリカ 予選P15 決勝P10

初の地元GPを終え、アメリカ大陸での3連戦に臨む角田選手。まずは昨年ポイントを獲得したオースティンでのレースを迎えます。
鈴鹿に似たS字区間のあるセクター1など、アルファタウリの車体とは決して相性が良いわけではないこのコース。予選までは今シーズンこれまでの戦いと同様、中団下位での争いに加わり、角田選手はトラックリミット違反でのタイム抹消もあってP15で予選を終えます。

予選後、ギアボックスに異変が見つかり交換することに。決勝はグリッド降格でP19からスタートします。ポジション的にポイントは厳しいかな…。という予想をしていましたが、この予想は良い方向に裏切られました。
スタートの蹴り出しで遅れたものの、逆にこれが上手く働き、ターン1での混乱をすり抜けて順位を上げます。その後もラティフィ選手、シューマッハ選手を立て続けにかわし、1周目でP14までポジションアップ。好調な滑り出しを見せると、この後も勢いに乗ってオーバーテイクを連発。なんと入賞圏内まで上がってきます。

途中で入ったSC明けのリスタートではノリス選手もパス。アロンソ選手とストロール選手のアクシデントで再度SCになりますが、この時点でガスリー選手の背後、P8につけます。ここまでレースペースは絶好調。ガスリー選手はハードタイヤ、角田選手はミディアムタイヤで角田選手のほうがペースはあったため一気に抜いてP7に…。と思ったのですが、SC明けはガスリー選手に仕掛けずポジションをキープするようチームから指示。
結果、角田選手はガスリー選手の後ろでタイヤを消耗させタイムも失ったため少し勿体ない形になってしまいました。
(チームとしては2人にバトルをさせることで後方のノリス選手に対してポジションを失うことを警戒していたため、意図を考えると指示は理解できますが、角田選手が前に出てフリーエアで走るレースを見たかった気持ちもありました。)

最終スティントのハードタイヤではペースに苦戦。1ストップで走るアルボン選手や周選手を抜きあぐね、逆にノリス選手やベッテル選手にかわされてポイント圏内から外れてしまいます。しかし何とか終盤タイヤが消耗した1ストップ勢を仕留めてP10に。そのままフィニッシュを迎え、第6戦スペイン以来、5か月ぶりとなるポイントを獲得しました。

とにかく、ここまで長かった。角田選手本人のミスもありましたが、それ以上にマシンの戦闘力不足、トラブル、アクシデント、戦略やピットのミスなど外的な要因も多くあり入賞を逃し続けてきました。このレースも一時はポイントを逃しかけましたが、自らの力で逆境を跳ね返して入賞をつかみ取りました。前回の鈴鹿で非常に難しい状況でも集中を切らさず戦い抜いたことが角田選手の自信に繋がったかもしれません。とにかく、力強く、素晴らしいパフォーマンスを見せたレースでした。とても、とても大きな価値のある1ポイントになりました。

第20戦 メキシコ 予選P13 決勝DNF

前回の入賞から勢いに乗って挑んだメキシコ。パフォーマンスとしてはポイントに挑めるかどうかというところでした。
予選はP13。この時点のAT03から引き出せる結果としては限界だったと思います。ガスリー選手とも近いタイムで並んでおり、ドライバー2人は力をすべて発揮したと言えました。

迎えた決勝、スタートで順位を上げ入賞圏内の一つ下、P11で走行を続けます。このレースはタイヤマネジメントが非常に上手く行き、ファーストスティントを伸ばすことに成功しました。今シーズンの中でもかなり良い方のマネジメントだったと思います。
セカンドスティントのハードタイヤでもしっかりとマネジメントし、後半のプッシュに備えていましたが、後方からソフトで追い上げてきたリカルド選手(マクラーレン)と接触し大きくダメージを受け、リタイアとなってしまいました。

このアクシデントはリカルド選手に10秒ペナルティが出た通り、責はリカルド選手にあります。(彼らしくない、不用意なマシンの置き方だったと個人的には感じました)
ただ、DAZNで中野信治さんも言われていましたが、責が相手にあるとは言え、ものすごくいい走りをしていたレースが終わってしまうのはやはり勿体ないのです。リカルド選手に対して少し牽制を入れてインに入らせないなど、多少狡猾な動きになっても自衛したかったなというところでした。
何にせよ角田選手に非はないので、良い走りを結果に繋げられる強いドライバーになるための一つの経験だったと、ポジティブにとらえるしかないと思いました。

安定していいペースを刻み、タイヤを管理していたすごく良いレースだったので、アクシデントに巻き込まれたのはほんとに悔しかったです…。

第21戦 ブラジル 予選P19 スプリントP15 決勝P17

この週末は走り始めからペースがなく、角田選手はとにかくグリップがないことを訴えていました。どこかで聞いたな?と思った方、その通りです。そう、ハンガリーと全く同じ事象が起きていました。
思えばハンガリーのときも、前戦のフランスでオコン選手に当てられリタイアしており、車にダメージが残っていたのかもしれません。今回も前戦メキシコでの接触が影響していた可能性がありました。

予選はだんだん乾いていく路面に対してグリップがなくタイムを上げられず、P19。スプリントも他車の後退で順位は上がりましたが、やはりペースはなくP15。

このまま決勝を迎えても状況が好転する見込みはなく、角田選手も明らかに車に違和感を持っているようでした。ハンガリーではその状態のまま決勝を走り苦しいレースになりましたが、今回はしっかりとチームが対応をし、セッティング変更やフロアの交換など、決勝ピットスタートを選んででもどうにかする方向に動いてくれました。
個人的な推測として、ハンガリーとの違いはチームが角田選手のフィードバックを信頼してくれたことではないかと思います。この週末を通して角田選手は一貫してマシンの異変を訴えており、いかにグリップがないかをコメントし続けていました。
今シーズン、角田選手自身がフィードバックの重要性をより認識しており、改善したい点だと語っていました。当然、無線以外のマシンを降りた後のコミュニケーションは明かされないので、ハンガリーからブラジルまでの間で、角田選手のコメントにどんな変化があったか、その全てを知ることは出来ません。ただ今回、決勝に向けてチームがマシンに変更を加えてくれたのはその変化の証なのではないかと感じていました。

決勝のレースも決して好調なペースとは言えませんが、少なくとも前日までの希望が見えない状況からは大きく改善されていました。AT03とは相性が良くないコースであり、ポイントは望めないながらも角田選手は着実にレースを進めていました。
ところが終盤、SCが入り、その時点で周回遅れになっていたドライバーにラップを取り戻す許可が出たとき、ウィリアムズの2台と共にラップダウンだった角田選手にはその許可が出なかったのです。わけもわからず取り残された角田選手は、残りのレースで戦う権利すら与えられずチェッカーを受けることになりました。

のちに判明したのは、周回遅れの判定がされる周に角田選手がピットインし、一時的に周回遅れでなくなったことが要因でシステムが判定できなかったということでした。
昨年のアブダビで起きた問題を受けてシステム変更が行われていましたが、そこで想定がされていなかった事象であり、角田選手はただただ不運だったということになります。しかし、ポイント争いをしていなかったとはいえ、一人のドライバーのレースがコントロールによって権利を奪われることはやはり受け入れがたいことであり、この件を契機にさらにシステムの改善を図ってほしいと感じました。苦しい状態でも角田選手はしっかりと戦っていただけに、個人的に今まで見てきた中で一番憤りを感じたレースでした。

第22戦 アブダビ 予選P12 決勝P11

長かったようであっという間だったシーズンも、いよいよ終わりを迎えます。最終戦は昨年自己最高リザルトを残したアブダビ。

昨年に続き、やはりこのコースは得意なんだと感じられる、好調な走りを週末の最初から見せていました。車も前週の不調からシャシー以外を交換し、トラブルは解消されていました。
FPで順調に走り込み迎えた予選では確実にQ2へ進出。今のアルファタウリの車では限界と思われるP12につけました。この一年、予選の一発では確かな強みを見せ続けてきましたが、その集大成とも言える良いアタックでした。

決勝は他車のグリッド降格によりP11からスタート。順位をキープしながら走行し1回目のタイヤ交換。第2スティントはハードを履き、可能な限り周回を伸ばそうとマネジメントします。というのも、アルファタウリ勢はミディアムとハードが1セットずつしかなく、それらのタイヤをすでに使った角田選手が2回目のタイヤ交換をする場合はソフトしか選択肢がありませんでした。ソフトは消耗が大きくレースに向かないことが分かっていたため、できるだけ残り周回の少ない終盤に使うようにしたいところでした。

しかし後方でアルボン選手が早めにピットしたことで、アンダーカットをカバーするために、意図していたよりも少し早くタイヤを変えざるを得ませんでした。角田選手のペースは良く、途中はアルピーヌやマクラーレンと同じようなタイムを刻めている周回もありました。もう少しハードを持たせることは出来たと思いますが、展開上仕方なく2回目のタイヤ交換をし、ソフトを履きます。

この時点で角田選手はP11。前を走るリカルド選手、ベッテル選手は1ストップ戦略をとっており、タイヤをマネジメントしながら走っていました。ソフトタイヤの性能を生かし、一気に前の2人との差を詰め、ポイント圏内を狙っていきます。
しかし想定通りタイヤの落ちが激しく、周回を重ねるごとにタイムは下がっていき、次第に前との差も開いていってしまいました。この順位のままでフィニッシュし、シーズン最終戦は惜しくもP11で終えることになりました。

終わってみると、今年のアルファタウリを象徴するような戦いになりました。予選Q1を突破するために決勝のタイヤ選択を妥協せざるを得ず、戦略が限定される。レースではドライバーが全力を尽くすも、ポイントにあと少し届かない。結果として、コンストラクターズ争いではハースに2点届かずP9で終えることになりました。

ただ角田選手の週末全体を通したパフォーマンスとしては、今期の中でも上位に入るようないい状態でした。予選・決勝を通してチームメイトを上回り、ポイントには届かなかったものの順位を争っていたハース勢に対しても優位に戦いを進めました。今シーズン、厳しい状況の中でも確実にステップを重ねてきた成果をしっかりと見せました。

3.後半戦を振り返って

結果として、後半戦でポイントを獲得できたのはアメリカGPのわずか1回のみ。スペインから続いたノーポイントの期間は、いくら角田選手のことを信じていたとしても、「このままシーズンが終わってしまうのか…?」と不安になったものでした。
一方で、しっかりとレースを見ていれば角田選手がものすごく安定感を増し、力強いレースができていることもよく分かりました。チームがレース後に出すコメントでも角田選手のレースを評して"strong"や"solid"という表現をよく使っており、高く評価していることは感じられました。来年の契約延長に関しても、当然だろうと個人的には感じていました。

特に角田選手がレースでの強さを増したと感じたのが地元鈴鹿での日本GP以降でした。鈴鹿ではマシンも天候も非常に難しい状況のレースを、粘り強く戦い抜きました。もしかするとこれまでだったら集中力を欠いてしまいミスをするような展開だったかもしれません。そこで地元のファンの前で何としてもポイントを取ろうと、最後まで持てる力を振り絞って走ったことが結果として角田選手の自信に繋がったのではないかなと思いました。

応援している立場からすると、角田選手は大きく成長してパフォーマンスを上げているのがわかるのに、国際映像に映る順位では走れないし、進歩を知ってもらえないのが歯がゆいなあと感じることが多い後半戦でした。

ということで、後半戦の振り返りがものすごく長くなってしまったので、2022年全体の感想と2023年への展望は別記事で書きます(笑)

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