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悪口や誹謗中傷の行動原理と解決法について(後編)

前回、「誹謗中傷にはEQの向上が効く」と書きました。今回はその詳細について、そして相手方がいわゆる「発達障害者・パーソナリティ障害者」の場合には、どのように向き合ったら良いか解説します。

前編はこちら。


悪口・誹謗中傷にはEQの向上が効果的

これは、誹謗中傷をされる側、する側双方に言えるでしょう。
まずは、EQについて説明していきます。

EQとその効果

EQは、Emotional Intelligence Quotienの略です。日本語では「心の知能指数」と表現され、自分の感情を適切にコントロールし、思考や行動に活用できる能力のことです。
中でも、アメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマン著『Emotional Intelligence』(邦題:『EQー こころの知能指数』)が有名です。

EQは、ビジネススキルの一つとしても注目されています。
ビジネスで成功する人は、対人関係能力に優れている傾向があると言われます。
その理由として考えられるのは、自分の感情の状態を把握・コントロールできる人は、周囲の人にも良い影響を与えられるから。

さらに、感情的ではなく合理的に行動できるので、パフォーマンス力が高くなり、他人への共感力が高いので組織の中でも成功しやすいと言われています。

IQとEQ

似た用語では、IQがあります。こちらは知能指数を指し、頭の回転の速さや記憶力などについて指標化したものですが、IQとEQは別の能力です。

さらに、IQはある程度固定化されますが、EQは自分の努力次第で大人になってからも向上し、かつ誰でも向上させられると言われています。

EQを司るのは扁桃核

近年脳の研究が進んだ結果、感情や理性が言動に働きかけるメカニズムが解明されてきているとのこと。
脳の各部位のうち、物事の認識や分析を司っているのは、大脳新皮質。生き物の中でも、ヒトが特に発達している部分だそうです。

ですが、強い感情が込み上げた時、すなわち何らかの衝動に駆られた時は大脳新皮質を経由せず、扁桃核(扁桃体)から神経に信号が発せられるとのこと。
扁桃核は本能的な情報を決める場であり、とりわけ生存を脅かされるようなときに活発に反応する部位です。
本来は生存戦略のために働きかける部位であり、嫌悪、不快、不安などを感じた時にこの部分が反応します。情動的な行動を取るのは、一種の生存本能とも言えるでしょう。

ただし、ビジネスシーンなどでは「ありのままの感情」をぶちまけると、良い結果をもたらさないことが大半です。
そのため、この働きをうまくコントロールできる人は、知的・理性的と評価され、信頼されやすくなるのです。

4種類のEQの能力

EQは、4段階のサイクルを複合的に連動させ、循環させることで効果を発します。どれか1つだけ突出していても、うまく機能しません。

それぞれの能力は、以下のようなものです。

①感情を識別する
相手の気持ちを読み取り、自己と他者の感情を認識・識別する能力

②感情を利用する
その場にふさわしい気持ちを作り出し、問題・課題解決のために感情をコントロールする能力

③感情を理解する
感情の原因を分析し、変化を予想する能力。感情の発生・移行まで理解できる

④感情を調整する
感情をコントロールし、その場にふさわしい行動へつなげる能力。周囲から期待される行動を取るために、感情を調整する。

いずれも、当たり前と言えば当たり前の能力です。

たとえば、身内で葬儀があったとしましょう。その場はしめやかな雰囲気に包まれるでしょう。遺族は悲しみに暮れています。
そのような場で、故人の良からぬ噂話をしたりふざけたりするのはご法度。たとえその衝動に駆られたとしても、コントロールして周りに合わせるのが、大人のマナーというものです。

このように、EQは子供の頃からの社会生活を通じて自ずと身につく能力であり、社会人としてごく一般的・普遍的に求められる能力と言えます。

EQの高い人の特徴

EQの高い人は、以下のような特徴が見られます。

ストレス耐性が高い
自分の感情を冷静に把握・分析し、自信と感情をコントロールできます。その結果、ストレスへの適応能力が高くなります。

傾聴力・共感力が高い
相手の話を丁寧に聞き、感情を理解しようとします。コミュニケーション能力が優れ気配りができるので、リーダーとして頼られることも。

柔軟性がある
違う価値観を受け入れられる包容力があり、状況の変化にも強いのが、EQが高い人の特徴です。問題解決能力が高く、ミスやトラブルが発生しても冷静に対応できます。

EQの高め方
では、EQを高めるには、どのような方法があるのでしょうか。
よく紹介されるのは、次のような方法です。

相手に寄り添うことを心がける
話を聞く時は相手の言葉のトーンや表情に気を配り、話を遮らずに最後まで聞きましょう。

周囲の人をよく観察する
日頃から相手の良いところを見つけるようにすれば、少々のネガティブさには動じなくなります。

言語化を習慣にする
自分自身の気持ちを言語化するだけで、自分の感情に気付くことがあります。後で深掘りし、行動・状況の改善に役立てられることもあるでしょう。

EQとネット

ここで注意したいのは、ネット上に「何でもかんでもアップしない」ということです。特に恒常的にネガティブな発信をしている人は、「ただの構ってちゃん」と見られ、人を遠ざけるリスクが大きいです。

もっともEQが平均値以上の人は、恐らくそんな真似をしないだろうとは思うのですが……。

EQの手法が通じない人々

ここまで「EQを高める」ことによって問題解決を図る方法を提案してきましたが、残念ながら、この方法が通用しない人もいます。

それは、「一部の発達障害者やパーソナリティ障害者」。一部というのは、たとえ同じ病名の診断が下されていても、こちらに寄り添ってくれる・寄り添おうとしてくれる人もいて、ケースバイケースと言わざるを得ないからです。

ですが、なぜか「人への非難・誹謗中傷」が好きな人には、これらを自称する人が多いと感じられませんか?

発達障害については、一般的な脳と異なった特性を持っている、則ち脳に何らかの問題があるために、「普通の人と同じことができない」ことが研究結果からわかっています。
ですので、ある程度までは健常者側(マジョリティ)がその特性を理解した上で、対応する能力が求められます。

ですが、次項のような警鐘を鳴らす専門家がいらっしゃることも、私は知ってほしいと感じます。

専門家からの警鐘

筆者のバク先生は、ご自身がADHDの特性の持ち主でありながらも、精神科医となられたキャリアをお持ちです。
詳しくは上の記事を読んで頂きたいのですが、私が特に気になったのは、以下のご意見です。

• 「生きづらさ」を病気のせいにしたい人がセルフ診断して、「病気だから仕方ない」と自己完結しているケースがあるのではないか
• 疾病利得となる場面があり、「病気だと主張したほうが得だ」という状況が生まれている
• 発達障害は、集団において他人に迷惑をかけてしまう可能性を自覚した上で、ある程度社会に溶け込む努力・実践が求められる

これは、ネットなどでいわゆる「メンヘラ」に悩まされていた人に、刺さるご意見ではないでしょうか。

中でも私がはっとさせられたのは、次の主張です。

「定型発達の人が発達障害に合わせてくれ」という根本的な考え方が間違っており、「私は発達障害なんだから許されるべきだ」という主張は、傲慢と言わざるを得ない

同じ主張を定型発達者(マジョリティ)が発したならば、たちまち「差別だ」とバッシングされることでしょう。
ですが、障害者側からもこのような意見が出ているのです。さらに先生は、「ファッション発達障害者」の存在自体が、本当に発達障害などで悩んでいる人への差別を助長しかねないとも警告していらっしゃいます。
※ファッション発達障害=「自称」発達障害者でありながら、実態はネット上診断などに頼った自己診断であり、専門的な治療を拒絶している人を指します。

もちろん、積極的に発達障害者やパーソナリティ障害者を叩いていいわけではありません。ですが、障害者が「当たり前のように特別扱いを求めることもまた間違いであり、傲慢である」というのは、一方的に我慢を強いられてきた側にも、考えさせられるご意見ではないでしょうか。

やはり基本は「逃げるのが正解」

さらにバク先生は、別記事で「ネット上の悪口は反応した者負け」とはっきり断じておられます。

根がポジティブだろうがネガティブだろうが、丸腰で立ち向かおうとすれば、病むとも。

私の場合は、「丸腰」でない(=法律上の知識で戦える)からこそ立ち向かえる部分もあって、やはりこの手合は「スルー」「ブロック」が基本だと思います。私も真っ向から戦ったのは2例くらいで、後は一方的にスルーしています。面倒ですし。

ただし、一点私が先生と意見が異なるのは、「冷静さを保てているならば、チェックだけはあり」ということ。
というのも、悪口だけにとどまらず「パクリ」をやってさらに自分のネタ・飯の種にする人もいるからです。
その場合は著作権の問題や法的対応も絡んできますから、やはりある程度まではチェックも止むを得ない部分が出てきます。

もっとも見るのが辛い場合には、とりあえず証拠となりそうな「スクショを取るだけ取って」、後からじっくり対応を考えるというのもありだと私は考えています。その場合は、あえて深く読まずに斜め読み程度に留め、法的対応などを決めていけば良いのではないでしょうか。深読みしすぎると感情的に揺さぶられ、相手と同レベルに下がりかねません。

まとめ

以上、前編・後編に渡って「誹謗中傷」問題を真正面から扱ってみました。
結論としては

• 誹謗中傷をすることに何一つメリットはない
• 誹謗中傷をする人は脳や心にバグがある可能性がある
• 誹謗中傷者からは「逃げ」が基本。相手方への安易な同情は禁物
• 自分自身はEQを高めて冷静に対処できるようにする

当たり前のことですが、誹謗中傷に勤しんでいる人、それに便乗している人は今すぐ止めたほうが自分のためです。

おまけ

ちなみに私自身のEQを測定したところ、「105」。世界標準グローバルスタンダードの中では平均値、もしくはやや上といったところでしょうか。(IQと同様に、100が平均値です)
私を喧嘩っ早いと決めつけている人もいらっしゃるようですが、少なくともデータ上は、決してそんなことはないということです。

同じ「オキシトシン分泌」を求めるならば、その分泌要因となる「プラスの行動」――自分の創作活動に力を入れたり、ネットから離れてちょっとした楽しみを数多く見つけてみたり。そんな簡単な方法でいいと思うのです。
後は、誹謗中傷者の手が届かなくなる位の高みを目指して、努力精進することですね。
これらは、脳の仕組みを理解した上で、プラスに作用させる工夫の一つだと思いますが、いかがでしょうか。

以上、長くなりましたが、私なりの「誹謗中傷」に対する理解及び対応方法でした。

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