【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(6)
「万が一、藤田小四郎とやらの勢いに武田殿が引きずられるようなことがあれば、厄介なことになるな」
源太左衛門の声に、憂いが混じる。その様子を見た岡は、小首を傾げた。
「今のところ、それはないかと存じまする。漏れ聞いたところによりますと、武田殿は幕閣の伝手を利用し、水府之徒を一堂に集めて鎮撫するおつもりとの由」
「そのような事が可能なのか?」
鳴海は、怪訝に思った。尊攘過激派の動きは、幕府ですら手を焼いているのである。西では八月に天誅組の変があったばかりであり、それと前後する