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鬼と天狗

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幕末二本松藩の様子を描いた拙作「鬼と天狗」の各話(スピンオフ含む)をまとめたマガジンです。 マガジンイラスト/紫乃森統子さま ©紫乃森統子.2023
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鬼と天狗~【主要登場人物・目次】

二本松藩の泰平の眠りを醒ましたのは、尊皇攘夷の嵐だった――。 文久2年、思いがけず名家を継…

k_maru027
9か月前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~筑波挙兵(2)

「十右衛門」  鳴海の言葉に、十右衛門が驚いたように顔を上げた。それに構わず、鳴海は膳を…

k_maru027
21時間前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~筑波挙兵(1)

 二月二十日、ようやく京都警衛組が帰藩した。鳴海も暖かな日差しに包まれた千人溜の最前列で…

k_maru027
1日前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(5)

 ――城への道すがら、鳴海は平八郎との会話を思い返していた。やはり現在の水戸藩は家中が真…

k_maru027
4週間前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(4)

 眼の前で手を叩く音が起き、鳴海ははっと顔を向けた。権太左衛門が、槍を振ってみせている。…

k_maru027
4週間前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(3)

 藤乃家は温泉神社からすぐのところにあった。事の発端となった守山の三本木鎗三郎が嬉々とし…

k_maru027
1か月前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(2)

「藤乃家に泊まっている守山藩士らの人数は分かるか」  鳴海の質問に、おていが指を折って数え上げた。 「確か、四人でございます。腫れ物の御侍様だけは、半月ほど前からいらっしゃっていますけれど、あとの御三方は三日前に当地にいらっしゃいました」  鳴海に説明している間に、おていも守山藩士らの詳細を思い出したのだろう。先程までのだらしない有り様はすっかり消え、背筋を伸ばして鳴海らに真剣な面持ちを向けている。 「あ、あれですよ。御頭様」  湯守が、番所の直ぐ側にある温泉神社の境内にぞろ

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(1)

 ――半刻後、鳴海は権太左衛門や政之進と共に、馬首を嶽温泉の方へ向けた。 「鳴海様。守山…

k_maru027
1か月前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(5)

 那津の婚儀の日は、この季節にしてはうららかな穏やかな日だった。白絹の綿帽子を被った義姪…

k_maru027
1か月前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(3)

 彦十郎家に黄山が訪ねてきたのは、それからしばらくしてからのことだった。十右衛門の手紙が…

k_maru027
1か月前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(2)

「先日の拙宅の結納では、世話になり申した」  努めて明るく屈託のない様子を心掛けながら、…

k_maru027
1か月前
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【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(1)

 文久四年正月。鳴海は初めて「正月御目見得」の席に臨んだ。正月に行われる藩主から家臣らへ…

k_maru027
1か月前
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【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(7)

 十二月十六日、鳴海は針道村へ赴いた。この日は公休日であるが、朝早くから紋付袴を身につけ…

k_maru027
1か月前
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【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(6)

「万が一、藤田小四郎とやらの勢いに武田殿が引きずられるようなことがあれば、厄介なことになるな」  源太左衛門の声に、憂いが混じる。その様子を見た岡は、小首を傾げた。 「今のところ、それはないかと存じまする。漏れ聞いたところによりますと、武田殿は幕閣の伝手を利用し、水府之徒を一堂に集めて鎮撫するおつもりとの由」 「そのような事が可能なのか?」  鳴海は、怪訝に思った。尊攘過激派の動きは、幕府ですら手を焼いているのである。西では八月に天誅組の変があったばかりであり、それと前後する