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ニューヨークの氷上を滑る少年

昨夜から、温度がぐんと落ちて、今朝起きると、窓の外は銀世界に変わっていた。雪自体は大したことはない。例年に比べると少ない。

けれど、温度は華氏ー2度(摂氏ー19度)まで下がった。こんなに下がったのは何年ぶりだろう?華氏ー2度を体感してみたくて、私はフーさん(アメリカ人の夫)をけしかける。

「ねえねえ、散歩に行ってみない?」

そう言いながら、私はもう着替えにかかっている。フーさんはまだ、ふとんにくるまって目を閉じ、まったりと日曜の朝の余韻に浸っていた。

「え〜〜、マジー?」正気なの?信じられない、という顔をした。

「うん、だって、おもしろそうじゃん」私はコートに腕を通しながら言う。

「いいよ、行かないんだったら。私一人で行くから」

でも結局、フーさんも着替えて、散歩につきあってくれた。おっちょこちょいの私が雪や氷で転んで、頭でも打ったら大変だと思ったらしい。厚着をして、帽子に手袋、マフラーもして防寒していたけど、華氏ー2度の世界はすごかった。顔も手も足も痛くてヒリヒリ、じんじんする。

誰も散歩なんてしてなかった。でもジョギングしている変人が2人いた。
「ハーイ!」と、声掛けしながら、お互いにニンマリする。こんな天気で外に出ている変わり者同士と自覚しながら。

それでも歩いていると、自然と体は温まってくる。フーさんも雪景色を楽しんでいるようすだ。

「僕たちが子供の頃はニューヨークなんか、冬はいつもこれくらい寒かったよなあ〜。それでも全然平気だった。今じゃあ、すっかり寒さに弱くなっちゃったけど。道が凍っちゃってるからさ、走ってくる車がスピードを緩めるところをねらって、バックバンパーをつかんでさ、スルスルと氷の上を滑ったもんさ」

すごっ!!
それってバック・トゥ・ザ・フューチャーのマイケル・J・フォックスじゃん。

これこれ!

こんな感じをスノーブーツを履いてやっていたらしい。ワイルドである。
8歳だか、10歳の少年がこれをやっていたそうだ。

私も田舎育ちのおてんばで、そこそこワイルドだったが、そんな私もこれには驚いた。

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