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【コラム】マイノリティになった赤いランドセル

約20年前の映画、「プラダを着た悪魔」を初めて観た時から、アン・ハサウェイの可愛さに釘付けで、今でも彼女の作品をよく観ます。

「マイ・インターン」では、ロバート・デ・ニーロ演じるシニアインターンとの関わりから、仕事や友人、家族との人間関係を見つめなおす女性社長を
演じ、非常に気軽に、そしてコミカルに「多様性」を考えられる素晴らしい映画です。

そんなアン・ハサウェイが主演を演じる最新映画、「The idea of you(アイデア・オブ・ユー)」がAmazonプライムで公開になったので、早速鑑賞しました。

同名小説が元になったこの映画は、アン・ハサウェイ演じる40歳のシングルマザーと、ひょんなことがきっかけで出会った16歳下のミュージシャンが恋に落ちる物語。

ラブストーリーの展開としては、典型的な流れなのですが、注目点はその設定です。

これまで、「年の差」を描くラブストーリーでは、年上男性と年下女性の恋愛を描く設定が既定路線でした。

しかし、時代の変化も伴い、「無意識の決めつけ」を意味する「アンコンシャス・バイアス」や、多様性を受け入れる「ダイバーシティ&インクルージョン」の浸透から、「女性はこうあるべき」などの性別役割の決めつけや
押し付けからの脱却を、エンターテイメントからも感じることが出来ます。

しかし、そんな劇中で1つ気になったセリフがあります。
それは、アン・ハサウェイ演じる主人公が40歳の誕生日を迎えたパーティーでの場面。

近しい人同士での食事の場で、親戚のおじさんが
「mile stone(節目)を迎えた気持ちは?」と聞く場面で、私は少し違和感を感じてしまいました。

劇中でも、主人公はその質問に違和感を感じるような表情をしていたのですが、年齢に対する「節目」の概念は、まだ色濃く存在することを象徴しているようでした。

「〇歳の人間はこうあるべき」
私にとっては少し耳の痛い話です…笑

日本の作品でも、最近ではそれまでの既定路線を崩すような設定が多く見られます。
私は大学時代に「秒速5センチメートル」を観た時から、新海誠監督作品が大好きなのですが、世界的にも評価された「すずめの戸締り」も、設定の
新しさを感じます。

これまで主流は “boy meets girl”。
つまり、男性主人公が女の子(ヒロイン)に出会う設定ですが、
こちらの作品ではその逆の “girl meets boy”。

ありそうで、けれど珍しい設定にもワクワクしました。
少し話は外れてしまいますが、新海さんの作品は本当に絵が秀逸なのと話が深くて、何度も噛み砕きながら観たくなる作品ばかり。

心が疲れた時は、新海作品に限ります!笑

このように、年齢や性別バイアスが色濃く残る現代でも、多様な変化に早く馴染むことができた例は「ランドセル」ではないでしょうか。

私はもちろん、この2色世代です。笑
女の子は赤、男の子は黒。
迷いなく両親もこれを私に買ってくれたのだと思います。

私が小学生だった時代は、今から30年近く前。
平成初期。
そのころは、周りも当たり前にこの2色を使っていて、一学年に140名程度いる生徒の中で、一人だけピンクのランドセルを使っている同級生がいました。

その頃は「ピンクのランドセル」という概念が新しすぎて、むしろ誰もそこに触れられない雰囲気でしたね。笑

けれど、それから少しした頃から、なんて色鮮やかなことでしょう。
まるで雨傘かのように、色とりどりのランドセルが売られ、みんな違う色のランドセルを背負っている様子をよく目にします。

女の子でも暗い色を選ぶし、男の子でも暖色を選んでいい。
その普及スピードも非常に早かったと感じます。

昔はマジョリティー(大多数)だった女の子の赤いランドセルも、今やマイノリティ(少数)化しています。

何がきっかけだったのか?
そんなことはどうでも良くて、実は我々も自然と「多様性」を当たり前に
受け入れられる土台を持っているということに、希望や期待を感じます。

年上女性が16歳下の男性と恋愛するストーリーに対しても、珍しさを感じない世の中も近いのかも知れませんね。

以前、テレビで多様性に関する活動をしている芸能人の方が、こんなことをおっしゃっていたのが印象に残っています。

「真の多様性は、自分と異なる何か(習慣や嗜好、文化、思考)を持っている人がいたときに、真剣になりすぎずに「へぇ〜、それもいいね〜」と軽く言い合える状況」

この言葉を聞いて、私は自分の行動を振り返るきっかけになりました。
「多様性!」「ダイバーシティ!」と、これまで声高々に言いすぎていたなと感じたのです。

ことを荒立てるような、そんな行動とも言えるでしょう。

問題提起することと、ことを荒立てることは違いますよね。
そのようなリテラシーを考えさせられる、良い気づきになったことを思い出します。

時代の変化に柔軟に。
「みんな違って、それでいい」
それこそが、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンの原点なのでしょうね。

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