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宇宙船六畳一間カプセル号に想いを馳せて


今から約50年前に「それ」は生まれた。

高度経済成長、バブル崩壊を経て、働き方やライフスタイルの変化をコロナ禍がさらに後押しする2022年現在。

今こそ求められるコンセプト、デザイン性、その実用性に、やっと時代が追いついたようにも思える。

しかしそんなタイミングで「それ」の取り壊しが決まるという数奇な運命は、一体なにを意味するのだろう。

内部見学会に行った際に購入したパンフレット(復刻版)を手に取り開く。

「それ」ー。

宇宙船六畳一間カプセル号に想いを馳せるー。

中銀カプセルタワービル
竣工1972(47)
中央区銀座8丁目首都高沿いに位置
黒川紀章がメタボリズム思想をコンセプトに設計。世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅。見た目は一つ一つの部屋が独立したカプセル型で窓が丸く、ドラム式洗濯機を積み重ねてるような、まるで宇宙船のようなSFの世界観が銀座の外れで異質な雰囲気を醸し出し、アーティスト、廃墟マニア、国内外の建築好きから熱狂的な人気を集める建築物。


宇宙船六畳一間カプセル号。

別名(という名の正式名称)『中銀カプセルタワービル』の取り壊しが決まった。。。(2022.8月現在、解体作業中)

去年、内部見学会に参加しその体験記を音声で残したばかりで、複雑な気持ちを隠せない。

パンフレットにある、50年前の当時の黒川紀章の対談文をあらためて読むと、あまりの未来予知ぶりに言葉を失う。

「カプセルは面積を売るものではなく、機能装置を売るものであり、これこそ未来住宅を指向する21世紀のすまいであると思います」

「住宅の質が広さであった時代は過ぎた。あらゆる都市施設を利用できる都心の場所で、フル装備のカプセル住宅をもつことが現代人の条件になる時代になるであろう。」


、、、いやいや、未来予知やないか!!!

言葉を失うどころか、一人大声でニセ関西弁で突っ込んでしまった。

すごい。すごすぎる。

この文章を書かれたのは、物質至上主義であった高度経済成長期真っ只中。

家、車、家具、家電など、かつてはそれらを保有することが富の象徴であった時代。

それが現在。

ミニマリスト、ノマドワーカーの出現、リモートワークの普及、コワーキングスペースの増加。

あらゆるものがサブスク化され、物よりサービスや体験に価値を見いだす時代になった。

全て想定して、現在その通りになっている。

まさに今こそ求められる実用性とデザイン性ー。

もし存続できたなら。改修され実用化されたなら。
どれだけのニーズと価値のある建物であっただろう。

こういった歴史的建造物が失われることは、この国が経済的にも精神的にも貧しく、カルチャーを超えた、大切な何かを失うことのようにも思えてならない。

分解されたカプセル細胞たちは、私たちは、どこへ行くのかー。

22世紀を見据えた黒川紀章は何を思うのだろう。

「建築家という生き方」2001年/日経BP社刊より
こんな言葉を残している。

(前略)マイナーな世界のなかに、次の時代のヒントになるようなことが隠されていると思うのです。」


次の歴史を作るムーブメントはもうすでに、始まっているのだ。

それは多くの人の目に触れぬところで。


「それ」は50年も先を見据えて。


※音声にて内部見学会へ行ってきたときの感想を話しています。

◆地下駐車場をロケ地にしたPV
Flamingo/米津玄師

◆見学してきた内部と地下の写真


◆中銀カプセルタワービルの外観写真


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