同人誌装丁メモ①
初めまして、kitanoです。
特殊加工や紙が好きで度々他の方のnote等も拝見したりしていたのですが、備忘録も兼ねて自分の同人誌の装丁仕様とデザインコンセプトなどを記録してみようかなと思い、気が向いた時に残していきたいと思います。
過去に出した本もやるかも(やらないかも)
※露骨なカップリング表現やR18の表現はありませんが、二次創作BL同人誌を扱った記事になります
※記事中に本の仕掛けに関する説明がありますので、もしこの本を手に取ってくださった方やこれから手に取る予定の方がいらっしゃいましたら、ぜひ本を最後まで読んだ後に目を通していただけると嬉しいです
前置きとして、特に装丁にこだわって本を作る時は「本で出すものには本の形にする意味を持たせたい」と思って同人誌の作成に取り組んでおり、ここ近年は1つ1つの本に紙ならではのデザイン・仕掛けなどを施すことが多くなったなあと思います。(もちろん毎回やるわけではないですが)
基本的には、作品の内容とリンクしたデザイン・加工を施すというのを自分の中でのコンセプトとして取り組んでいます。
全体の装丁仕様自体は上記の通りです。
それぞれの加工の説明などを項目ごとに記載していこうと思います。
(目次クリックで読みたい項目に飛べます)
コンセプト
この本は、話の内容的に「白」がキーワード・キーカラーだったので、装丁も白をコンセプトにデザインや仕様の決定を行いました。
また、話の内容とイメージカラーに合わせて、「雪・雪解け」もサブコンセプトとして設定しています。
カバー
カバーに使うのは透明フィルムかトレーシングペーパーかで結構迷っていたのですが、クリアに絵が見えるよりもぼんやり見えるようなイメージの方が今回のお話には合いそうだなと思ったので最終的にトレーシングペーパーを選んでいます。(いい感じの透け具合で満足です)
雪の降っている視界の悪い日の空気感みたいな感じになりました。
カバーのインクは印刷所の方からオンデマンドインクの方が透けないとアドバイスをいただいたので、今回はオンデマンドの白インクを使用しています。
ただ、それでも思ったよりも透けたなという印象なので、今後デザインする時は白インク部分も下が透けること前提のデザインにするか、何度か重ねて刷ってもらうことで透けを軽減するなどの工夫はしたいな〜と思っています。
今回初めてカバー付きの本を作ったのですが、断裁の関係等でカバーと表紙は2mm程度のずれは出る可能性があるということでしたので、あまり厳密すぎる絵柄合わせを要求しないデザインにしています。
カバーをかけ、表紙との二層構造にすることで、カバーに印刷した文字や花びらと表紙のイラストとの間に奥行きが生まれたり、カバーの印刷がない部分から表紙の絵を覗かせたりといった面白い見せ方ができて、一回やってみたかったことなのでいい経験になりました。
また、カバーがかかっているとモノとして少し高級感が出るというのを自分で作って初めて実感したので、また機会があればカバー付き同人誌出してみたいな〜と思います。
キャラクターの頬の辺りにあるキスマークは、カバー側に印刷されているのでカバーを取ると消えます。
これは「皮膚が白くなる」という原作中に出てきた病気の症状と今回のタイトルにもある「KISS」という単語をかけたデザインにしているのですが、今回の本の話を通してその呪縛から解き放たれるというイメージでこういった仕掛けにしてみました。
表紙
表紙に使用したヴァンヌーボは、その手触りや色味が今回のイメージにマッチしているからというだけでなく、銀インクを使うことも踏まえて選定しました。
銀インクは平滑な紙の方がメタリックな輝きが綺麗に出る印象なのですが(マーメイドなどのように凹凸のある紙だと、経験上キラキラと光る感じはかなり弱くなります)、ヴァンヌーボは以前別の本で使用した時にかなりしっかりとメタリックインクの煌めきが出るのを確認しており、ファインペーパーならではの魅力のある手触りと、メタリックインクをしっかりと光らせることの両立が可能な紙なので、お気に入りの紙の一つです。
銀インクが乗る部分は、フルカラー印刷の上に銀インクを乗せると濁るためそこだけ絵を抜いて直接地の紙にインクが乗るようにしました。
タイトルの文字はカバーとのずれが発生してもなるべくはみ出ないよう、カバーの文字に比べて一回り細くしています。
表紙は基本的にカバーから透けて見えることを前提とし、表1-4がつながった全面デザインにしています。
また、カバーをつけたままだとメタリックインクの輝きはわからないのですが、カバーを外した時にキラキラと光って見えるというギャップを狙いました。
銀インクを選定したのは、雪のイメージ(=銀世界)です。
カップリングやサークル名などの諸情報は表1側にはデボス加工で、表4側には銀インク印刷で入れています。
デボスは雪についた足跡のようなイメージで加工として取り入れています。
本文中見開き口絵(フルカラー)
これは映画のオープニングだったり少年漫画のセンター・巻頭カラーみたいなことをやってみたら面白いかな〜という唐突な思いつきで捩じ込んだ仕様です。(プロローグの後に挟まる形になっています)
口絵の裏には本文を印刷しています。読書時のノイズになってほしくなかったのと、めくった時に突然カラーだった方がインパクトあるかなと思ったのであえて本文用紙とおなじ紙に印刷してもらいました。
カラーイラストの再現という面ではコート紙やファインペーパーを使った方がおそらく綺麗に仕上がるだろうとは思いますが、個人的には非常に満足しています。
漫画の同人誌で本文中にこういう形でカラーイラストを差し込むのは初めてだったのでなかなか新鮮でした。でもバリバリ演出という感じで、ちょっと恥ずかしいですね…(?)
巻末ペーパーアイテム挟みこみ
作中のアイテムを実際にものとして手に取れるようにするというのにロマンを感じているので、今回も装丁に組み込みました。(前に別の本でもやったことがあるんですが、何度やっても良いものです)
作中、エピローグでキャラクターが受け取ったアイテムをそのまま再現しています。また、作中で伏線と匂わせるセリフの描写はしていますが、渡した側からのメッセージが具体的になんと書かれているかの描写をしておらず、本を読み終わった後にこちらを見て初めてわかるという仕掛けになっています。
こちらは手作業で準備したものを印刷所に送付し、本の最後に挟み込んでもらいました。
おまけ:印刷所への相談資料
今回の本を作るにあたり、印刷所さんへ事前にイメージをお送りして加工の可否や想定している加工をする際のデザイン等に関して注意した方がいいことがあれば教えて欲しいと相談をしました。
印刷所の印刷・加工サンプルや、その他資料になるようなサンプル帳等も結構買い集めて手元に置いてはいますが、やろうと思っていることがそれだけではイメージしきれないことも結構あるので、そういったことはなるべく事前に確認するようにしています。(手持ちのサンプル集や本の紹介記事もそのうち書きたいな〜)
基本的にどの印刷所を使うにしても、紙の特性で気になることがあったり、やったことがない加工・装丁をする場合は見積もりと合わせてイメージ通りの仕上がりになるべく寄せるために問い合わせてから制作・本デザインにかかることが多いです。(凝ったものであるほど綿密に計画しています)
印刷所で標準用紙として取り扱ってない紙も、追加料金はかかりますがお願いすると使えたりします。いつもわがままたくさん聞いていただいて感謝…
※今回は質問事項や装丁イメージをpdfにまとめてお送りして相談に乗っていただいたのですが、印刷所さんからいただいた返信を元に&自分でその後こっちの方がいいな〜と調整を入れたため、お送りした資料と最終デザインとには少し差があります
今回の記事は以上です!
今後作る本でも引き続き色々試していきたいな〜と思います。
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