同人誌装丁メモ②
今回は主催したアンソロジーの装丁についての記事になります。
(自分以外の執筆者名等はうつらないよう全て伏せております)
※露骨なカップリング表現やR18の表現はありませんが、二次創作BL同人誌を扱った記事になります
全体の装丁仕様自体は上記の通りです。
それぞれの加工の説明などを項目ごとに記載していこうと思います。
コンセプト
自分が主催したカップリングプチオンリー合わせの記念アンソロジーとしての発行でした。
プチオンリーのテーマカラーが白と青だったのでそれに合わせつつ、アンソロジーの装丁テーマを海のイメージにしようと思い(プチオンリー名の前半をアンソロジーのテーマで回収し、後半を装丁で回収しました)今回はそこに沿った形でオプションやデザインを考えていきました。
カバー
カバーに使う紙は、白と青をイメージカラーに設定したときに「今回はコンセプトに沿える限りはパチカにしたい!」と決めていました。(個人的にですが、特殊装丁好きが一度は憧れる紙だと思っています)
パチカは加熱型押し加工した部分が透ける特殊な紙なのですが、水の透明感、映り込みの表現としてうまく使えないかな、と採用しました。
パチカへの広い面積の加熱型押し加工はヨレやシワが出る可能性が高い、大きなベタ面はムラになりやすいということで、パチカの透け感、そして白と青のコントラストを活かしつつ綺麗な仕上がりにするため、最終的に文字中心のデザインとなりました。
タイトルロゴのデザインは水面の揺らぎをイメージして制作しています。
また、カバーの裏を青く印刷してもらうことで、加熱加工部分から透ける色がよりはっきりと見えるようにしたいな〜と思っていましたが、こちらは意図したほどの効果はなかったな〜というのが今回試してみての感想です。(印刷しないよりは…程度)
写真で見ると結構綺麗に青いですが、肉眼で見るともう少し暗く沈んで見えます。
下記の作例を参考にしたのですが、印刷方式の違いなのか使用した紙の厚みの違いかもしくはそれ以外の要因かわからず難しいなと思いました。
インクの色とかも関係あるかもしれないです(派手な色の方がわかりやすいのかも?今回は青だったので、影色なのか透けているのか判別がつきにくい可能性はある気がします)
※今回頼んだ印刷所ではパチカへのオフセット印刷ができないということでしたので、オンデマンドのフルカラー印刷を用いて1色の色を刷ってもらっています
※そもそも参考にした作例も実物を見たら印象が違う可能性はあるなと思ったので、実物を確認できない限りはパチカに限らず特殊加工の見え方については参考程度にした方がいいのかもしれないです
カバーは寸足らず加工にすることによって表紙の一部が見えるようにしました。
これによって青と白とのコントラストをより際立たせられたのと、もう一個狙った効果があるのでそれについては表紙の詳細セクションで説明したいと思います。
表紙
・表紙用紙
表紙をめくったときにも青いと綺麗だな、と思い、今回は色のついた紙を使うことにしました。イラストを印刷するようなデザインの場合だと上手く使うのがなかなか難しいのですが、デザイン表紙だとこういった選択肢も選べるのは良いところだなと思います。
「マーメイド 海」は今回使用した印刷所の標準ラインナップにはない色の紙なのですが、名前も色も今回のイメージにドンピシャだったので問い合わせた上で取り寄せをお願いしました。
マーメイドはおそらく私が同人誌を出してきた中で一番使ってる紙なのですが、竹尾さんのサイトを見ると本当にカラーバリエーションが豊富で、他の色ももっと使ってみたいな〜と思わされます。神保町にある見本帳本店やその他店舗では実物も確認可能なので、行ったことのない方はぜひ足を運んでみてください。
・表紙印刷
表紙はオンデマンドの白インクを使用しています。
今回、表1のロゴ周りに箔押しを施し、それ以外の部分は白インクで文字を印刷するデザインになりました。個人誌でトレーシングペーパーに白インクで印刷した時には思ったよりも透けが目立ちましたが、色紙にする分には全く問題のない濃さで印刷できた印象です。
(個人誌については別で記事を書いているので、よろしければこちらもどうぞ〜)
・箔押し
使用した箔はアバロンシルバーです。
アバロン箔はアバロンシェル(孔雀貝)の裏側をイメージした箔ということで、今回のコンセプトに合わせて選定しました。海のイメージにピッタリ!綺麗〜
ただ、アバロン箔特有の繊細なテクスチャーが今回マーメイドの凹凸に若干負けてしまった印象はあるので、もっと平滑な紙だとより映えそうだなとも思いました。
色味や模様は使用された箔の場所によって異なるため、1冊1冊違う表情になっています。
表紙側のロゴは「OF」の「O」の部分だけベタの円にしており、カバーを寸足らずにすることでここだけカバーをかけた状態でも見えるように設計しました。
ベタの円にすることで、カバーをかけると夜の海に浮かぶ月に変化する、と言うデザインになっています。(カバーを水面に見立てています)
月は潮の満ち引きとも大きく関わっているので、海というコンセプトにもモチーフとしてぴったりでした。カバーをつけても外しても二度美味しい! こういうのを思いつくと楽しいですね。
その他オプション
・フルカラー口絵
今回イラストの寄稿をいただいているので口絵を巻頭に差し込んでいます。
口絵の紙にはモンテルキア81.5kgを使用しました。アラベールと迷ったのですが少し硬くて本が開きにくくなりそうだったのと、薄い紙にすると今度は裏透けが発生してしまいそうだと思ったため、ある程度の厚みを担保しつつ柔らかくて捲りやすい紙、と言うことでモンテルキアを採用しました。
(モンテシオンも候補になりましたが、モンテルキアの方が白く印刷再現度が高いのと、経年劣化による退色が少ないと言うことで今回はこちらの紙にしています。)
・本文一部インク変え
本文の巻頭・巻末の事務ページは刷り色をDIC-579に変えています。インク色は印刷所さんから表紙の紙色に近い色を提案いただきました。
(漫画・小説は読みやすさを優先して通常のスミ刷りにしています)
・小口染(青)
小口染を施すことで本を閉じた時に「白」「青」の印象がより強くなるようにしました。漫画本文があるとどうしてもタチキリまで絵やコマ枠がある関係で小口にスミが出てしまうのですが、今回くらいの色味だと色味が濃いため意外と目立たずにぱっと見一色に見えるというのは大きな学びになりました。
本文用紙は真っ白なコミック紙と少し迷いましたが、個人的に嵩があって軽く、捲りやすい紙が好きなので今回はコミック紙ラフにしました。(小説も寄稿いただいているので、真っ白な紙よりも少し生成りの紙の方が読む時に目が痛くない、という理由もあります)
振り返り
こちらの本は他の執筆者様から寄稿いただいた大切な原稿を集めていることもあり、イメージしている装丁がその通りに仕上がりそうかどうかと言うことを、個人誌に比べてより綿密に印刷所とすり合わせながらデザインを決定しました。
失敗するわけにはいかないという気持ちもあり緊張しましたが、結果イメージに近い綺麗な本に仕上がったかなと思います。
表紙にイラストを使った華やかな本も素敵ですが、今回はそれとはまた違ったアプローチで魅力的な本が作れたらいいな〜と思いながら取り組んだ次第です。
今回は以上です!