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「みーこのおっぱいが見たい!」「着替える時だけでもいいから」

友達・みーこ(29)が、いとこの子ども(3歳・男)に号泣されながら外でこんなお願いをされた。 


「みーこのおっぱいが見たい!!お願いやから見せて!!みーこのこと好きやから!一回だけでいいから!着替える時だけでもいいから!みーこのおっぱいお願いぃぃいい」


まるでトイザらスでおもちゃをねだっている子どもみたいで思わず笑ってしまった。

「着替える時だけでもいいから」が個人的にぐっとくる。子どもながらにして妥協案を提示してきたのである。

この子の中ではまだ「世界」は構築されていなくて、おもちゃと同様におっぱいはお願いしたら見せてくれるものだと思っているのだ。しかも真っ昼間の外で。その世界のルールの甘さが眩しい。

おもちゃとおっぱいは同等なのである。

この子どもはまだほとんど白いキャンバスのような状態で、これから一つずつ学んでいくことでいろいろなことが描き足されていく。


中学生の頃、プールの授業を休みたくて、マジックでふくらはぎにデカデカと「肉離れ」と書いていた女子がいた。

この子の中で一番スムーズに体育の授業をさぼる方法が「ふくらはぎに肉離れと書くこと」だと思ったのだろう。

そうすることで身体の内側で起こっているはずのこと(実際には起こっていないこと)を具現化させてみせたのである。

あまりの発想の豊かさと柔軟さに唸る。

完成にはまだまだ遠い気がするが、世界に知恵がつき始めたようだ。真っ白だったキャンバスにしっかりと色がつき始めている。

ただの子どものお願いとは違う。これが成長か。




ペットショップで趣味の熱帯魚を見ていたら、5才児くらいの二人組の子ども達が元気いっぱいはしゃぎながら店員さんをずっと困らせていた。

「ねぇねぇ、この魚はなんて言うの~?」
「こっちは~?」
「これはこれは!」
「あ!これも教えてほしい」
「今何してるの~??」

二人組できゃっきゃっしている。

土曜日のお昼間、一番忙しいであろう時間帯に、でもそんな子ども達を無下にすることもできず困っていた。


すると、ある女性スタッフさんが立ち上がり、子ども達にこう諭した。


「ニモ何匹いたか数えて。数え終わったら伝えに来てね」




そう言うと、ニモを数えることに夢中になって、見事に子どもがしばらく話しかけてこなくなったのだった。


その言葉にはもう子どもの世界のような純粋な輝きや眩しさは失われていたが、

それでも子どもの世界とオトナの世界とが重なり合うベン図のような場所を偶然見かけてしまい、その日、僕は思わず唸らずにはいられなかった。





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