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【小説】人は、自分が本当に好きなものを忘れる

人は、自分が自分にした洗脳を忘れてしまう

人間って、自分の周りの人が「すごい!」と言っていることを自分がすごいと思えない時に、

(これをすごいと思えない自分はダメなんだな。これはすごいと思えた方がいいんだな。よし、これはすごいと感じるようになろう。これは、すごい!すごいぞ!)みたいな洗脳を自分にしますね。

そして自分に洗脳したことを忘れて、普通に本心から「すごいですね!」と思ってるつもりで生活していたりする。

それをなにかのきっかけで「いや元々はすごいと思ってなかったわ。みんなとズレてるとダメな気がしてすごいと思い込んだんだ」と思い出したりもする。

自分の本当の気持ちに気づく。好きなこと、嫌いなこと。周りに合わせたものではなく、自分の本当の好き嫌い。


人はそういう嘘を自分につく。そして本当だと思い込んで、自分の本当の気持ちを忘れて生活するようになることがあると思います。

仕事で失敗して上司に怒られて。その場では悪かったと思って落ち込むのだけど、本当の気持ちでは特に自分が悪いと思っていなかったり。気にしてなかったり。


自分はこれができなかった。これができなかったことについては「ショックです。次はがんばります」って思った方がいいんだろうな。だからいま自分の感情として「ショックだ」と思うようにする。

でも本当はどうでもいいと思っている。だから2ヶ月後には「忘れたぁ」ってなってて、また同じような失敗をして怒られる。


そんなややこしい嘘を人は自分につく。周りは大事だと思っていること。それを自分はどうでもいいと思っているけど、でもそれはよくないから自分も「大事だ」と思うようにする。でも本当はどうでもいいので大事にしている行動はできない。



そんなことを知り合いの大学生と話していて思ったのですが、これは作品づくりにおいても同じだなーと思いました。

人は自分が好きなもの、おもしろいなと思うことを、周りに合わせて忘れてしまったりする。


自分が本当に書きたいものはなんだったのだろう?

「テレビドラマでやっているような可愛くておしゃれな恋愛物語は全然好きじゃなくて、もっと人間の欲望がむき出しの、というか人間ではなく動物のオスとメス!みたいな本能的な恋愛物語が好きだ!」

そんな自分の「好き」を10代のころは共感してくれそうな人が周りにいなかったので、みんなと話を合わせるために自分もテレビの恋愛ドラマに夢中なフリをした。


でもそのフリを長く続けているうちに、自分が本能的なオスメス恋愛が好きだったことを忘れてしまい、いざ恋愛小説を書いてみようとなったときに普通の恋愛小説を書いてしまう。

いちおうは書きあげたけど、自分のなかで大きく湧き上がってくる感動はない。投稿サイトに出してみるも読者の反応もいまいち。

自分が本当に好きなもの、書きたいものはなんだったのだろう?



自分が本当に好きだったものを思い出してみる

そんな人が私の小説の講座だったり、編集作業の打ち合わせだったりで2人で話していると、

「そういえば、動物みたいな本能むき出しの恋愛が好きだったんです」

と思い出す場面に遭遇することがあります。

私は、自分が好きなものを書くのが1番パワー出て、おもしろいものが書ける可能性が高いよねと思っているので「じゃあ次はそれを書いてみましょうよ」と言ってみたり。


自分が本当に好きだったもの。人は大人になるにつれてそれを忘れてしまうことがあります。

好きなことを書いたらそのままそれが読者にウケたり売れたりする訳ではありませんが、しかし私はやはり、書き手としての個性や他の人には思いつかないストーリーやキャラクターは、自分が好きなものから生まれると考えています。

おもしろい作品を生み出す1つ目のかけら。それはきっと外の世界ではなく、自分のなかにあるものだと思います。



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