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◆フィットネスのちから◆ZUMBAを特別支援学校の授業に!~長濱かなえさん(福岡県)

―特別支援学校高等部の音楽科の教員をされている長濱かなえさんにお話をうかがいます。長濱さんは授業でZUMBAを導入されていますが、どのような経緯があったのでしょうか。


長濱 10年ほど前、教員採用試験の勉強をしていた時、高校の音楽Ⅰの教科書に「世界のダンス音楽」という項目があり、ラテンアメリカのメレンゲやクンビアなどが太ゴシックで書かれていました。よく分からなくて、このままでは授業で教えられないから勉強しようと思ったのが始まりです。


 
ZUMBAは以前から愛好していました。そういえばZUMBAにはメレンゲやクンビアがあるから、もしかしたらヒントになるかもしれないと思って豊福章江ZESのBasic1を受け、それからBasic2、豊福ZESの勧めでZUMBA GOLDを受講しました。特別支援学校には基礎疾患や運動によるリスクがある生徒も多いため、専門知識を高めるためにPCも取得しました。

―音楽の授業にZUMBAを取り入れる上で、どのような工夫をされましたか?

長濱 ただ音楽を聞くだけではなく、実際にダンスを通して身体で感じてもらおうと考え、まずはZUMBAの体験クラスを行ってみました。7年前のことです。


 
私たち教員は学習指導要領に基づいて教育活動をしているので、ZUMBAと音楽の学習指導要領のどこに関連付けていけばいいのか、ZUMBA自体が目的というよりも、ZUMBAを通して何を子どもたちに伝えていくのか、悩みに悩みました。

 特別支援学校の生徒たちの多くは、卒業後は事業所や福祉施設で働きます。仕事だけの毎日だったら、行き詰まったときにきつくなりますよね。余暇を充実させるためにも、ZUMBAは1つの手段になるのでは、とも思いました。

 実際に体験クラスをしてみたら、生徒たちに楽しんでもらえて「ずっとこればっかりやりたい」という声が多かったです。担任の先生方の反応も「子どもたちが笑顔で帰ってきましたよ。先生、またやって」と。それが音楽の授業にもつながっていきました。

―ZUMBAが初めてでも、子どもたちを引きつける何かがあったのでしょうね。

長濱 どこかに知っている音楽があったからかなという気がします。当時はZIN70前半で、FirehouseとかMakosaとか、シンプルに動ける曲が多かったんですね。運動が苦手でも、ちょっとまねしたらできるし、「めっちゃ楽しい!」と。

 私も動きやすい曲を選んで、「正解はないんだから間違ってもいいんだよ。とにかく自分がまず楽しんで」と言うところから始めました。特に障がいがある子たちの中には視野が狭くなる生徒も多いので、音楽に興味をもって少しずつ広げていってほしいと思いました。

 その後赴任した特別支援学校では肢体不自由の部門に所属し、自立活動の時間にチェアクラスをしてみました。自立活動の学習指導要領にある項目のうち、身体の動きや感情の安定など、どの項目と関連付けていけばいいのか、ずい分考えました。

 自分で四肢を動かすことが難しい生徒も多いので、先生方にサポートしていただきながら行いました。ZUMBAが盛んな地域の学校でしたので、理解は比較的得やすかったと思います。

 生徒たちは楽しそうでした。翌日に、歩行訓練を受けている生徒の保護者から「関節の動きが非常にスムーズになっていると、理学療法の先生が驚いていた」という声をいただきました。股関節から引き上げる動きが体に良い効果をもたらしたようです。

 他にも、血流が良くなくて末端の冷えがある生徒さんも、少し良くなって温まるなどいろいろな効果があって、ZUMBAを取り入れてみてよかったと思いました。

―寄宿舎でもZUMBAを取り入れたいというお聞きしています。



長濱 はい、現在の勤務校の寄宿舎の余暇活動で行う予定で、トレーニングコースを再受講しました。今の子どもたちはスマホやタブレットのゲームなど、デジタルの一人遊びが多いんですよね。またオンラインでつながって、トラブルが起こることもあるんです。

 寄宿舎の先生方がいろいろなことに興味を向けさせようと奮闘されていて、それぞれの先生方の専門領域である剣道やバスケットボール、書道の筆で文字を書いてうちわ作りなど、いろいろなことをされていたんです。私もお手伝いしたいと思って、ZUMBAのクラスができますよ!とアピールしました。

―JWIでは「ZUMBAを教育の現場へ!」というプロジェクトを進めています。長濱さんのお話をうかがってとても参考になりました。体育のダンス授業はもちろんですが、音楽の授業や生徒のための余暇活動など、幅広い分野にアプローチをしていくことができますね。

長濱 学校現場でZUMBAを導入していく場合、1つの教科だけではなくて、教科横断的な、複数の教科への視野が、これからのキーワードになっていくような気がしています。例えば音楽と体育で絡めていくとか、音楽には必ず歴史的な背景もあるでしょうし、英語やスペイン語、世界の文化の理解というところからもアプローチできますよね。

 地域によってはZUMBAを知らない先生が多いかもしれません。日々忙しくて、新しいことに取り組んでいく余裕が現場にはないんです。ZUMBAをしたことのない先生にクラスをお願いするにしても、トレーニングコースの受講やZIN会員の会費は個人持ちとなると負担も大きくなりますよね。

 今、ZUMBAインストラクターの資格を持っている現場の先生方が、その資格をどのように有効に使っていくか、現場に知ってもらうために研修などで体験してもらうなど、いろいろな知恵を出し合う場が必要なのかなと思います。

 私は特別支援学校でやっておりますが、他の校種の体育の先生方だったらどうするのか、小学校だったらキッズクラスもありますし、中学校や高校、保育園、幼稚園それぞれに活用の仕方がある。いろいろな人たちの考え方を聞いて、今は点でもやがて線になり、平面として広がりをもっていくことを願っています。

―ありがとうございました。

※ZUMBAは商標登録されたプログラムです。

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