認定NPO法人 野生生物保全論研究会(JWCS)

1990年からずーっと野生生物と共に生きる未来を考え続けている会。国際会議の参加報告や…

認定NPO法人 野生生物保全論研究会(JWCS)

1990年からずーっと野生生物と共に生きる未来を考え続けている会。国際会議の参加報告や研究会の成果など、一般向きではないこともあえて発信します。 https://www.jwcs.org/

マガジン

  • ワイルドライフ カレッジ 成果集

    ワイルドライフ カレッジは、「1年後の私は野生生物のために何かできるようになっている」を目標に、認定NPO法人 野生生物保全論研究会(JWCS)が主催する教育プログラムです。そこで学んだ受講生のレポートをまとめました。

  • サメの保全

    サメとエイの4分の1に絶滅のおそれがあります。なぜそうなってしまったのか。サメに関する記事をまとめました。

  • JWCSラジオ 生きもの地球ツアー

    ポッドキャストを使ったラジオ番組「生きもの地球ツアー」をもっと楽しむマガジンです。 ラジオ番組ではご紹介しきれない詳しい話や、資料のリンク先をご紹介しています。

  • 象牙と日本

    ワシントン条約での決議を受けて、象牙は国際取引だけでなく、多くの国が国内での取引も禁止したり、規制を強化したりしています。しかし日本は象牙の取引に肯定的です。象牙と消費国・日本に関する記事を集めました。

最近の記事

日本の野生生物取引:ポジティブリストの必要性

この記事の”Take-Home Message” 野生動物の取引に伴う多くのリスクが存在します。これには、種の絶滅、感染症の拡大、動物福祉の損失、生態系への悪影響、そして意図せずに違法取引に関与するリスクが含まれます。 これらの問題に対処するため、多くの国々ではワシントン条約のようなネガティブリスト方式に代わり、ポジティブリスト方式を採用しています。この方式では、取引が許可される種を明確にリストアップします。 ポジティブリストを用いる予防原則的な規制により、新たな取引

    • ニホンザリガニの保全と活用―教育から地域振興への展望―

      秋田大学教育文化学部地域文化学科地域社会コース地理学研究室 犬塚友樹  菅原泰良 (ワイルドライフ カレッジ2023 受講生) テーマ設定の理由  ニホンザリガニを保全するにあたって、ニホンザリガニにとって好ましい環境を整えることが必要になる。そのニホンザリガニにとって好ましい環境が、他の生き物ひいては人間社会にとっても好ましい環境であれば、ニホンザリガニを保全することが結果的に地域振興へと繋がるのではないかと考え る。なお、ここでいう地域振興はニホンザリガニをターゲット

      • 【第22回JWCSラジオ リンク記事】カバに迫る危機 牙が狙われて密猟が?

        並木美砂子( JWCS理事・帝京科学大学教授 ) 2023年5月31日配信のJWCSラジオ「生きもの地球ツアー」第22回「カバは赤い汗をかくって本当?」のリンク記事です。 かつて日本にもカバがいた!? カバは、現在、アフリカ大陸のサハラ以南に暮らす草食動物です。その祖先は約5500万年前(始新世)のアジアで登場したアンコタテリウム(炭獣とも呼ばれます)で、やがてアフリカ大陸にも進出しました。2004年5月に兵庫県三田市で発見された下あごなどの化石が「サンダタンジュウ(三

        • 日本の野生生物取引: 不透明さと問題点

          この記事の”Take-Home Message” 野生生物取引は多様な用途で世界中で行われ、多くの人々が野生生物に依存しています。しかし、持続不可能な取引は生態系に悪影響を及ぼし、種の絶滅や生物多様性の損失をもたらす可能性があります。 ワシントン条約、国際渡り鳥保護条約、種の保存法など、野生生物取引を規制する法律が存在し、絶滅のおそれのある種を守っています。しかし、違法取引や不透明な取引も依然として存在しています。 JWCSはそのような問題に、生き物視点に立って、多角

        日本の野生生物取引:ポジティブリストの必要性

        マガジン

        • ワイルドライフ カレッジ 成果集
          3本
        • サメの保全
          4本
        • JWCSラジオ 生きもの地球ツアー
          7本
        • 象牙と日本
          2本

        記事

          獣害を乗り越え農村に明るい未来

          JWCSインターン 杉山莉音 はじめに 日本各地で野生鳥獣による農林水産業や自然環境への被害が問題となっている。農林水産業への被害としては、人里に降りたシカやイノシシが農作物を食べる、畑を踏みつける、掘り起こすなどの被害が発生している。これらの被害の中でもシカ、イノシシによる被害が最も多い。    自然環境への被害としては、シカが高密度に生息している地域では、食害、角こすりの被害が発生している(写真1)。シカにぐるりと一周樹皮(形成層)を食べられると、その樹木は枯れてしま

          獣害を乗り越え農村に明るい未来

          【第19回JWCSラジオ リンク記事】 プラスチックに群がる野生動物と、その体内にある大量のプラスチック

          スリランカ政府はようやく、使い捨てプラスチック製品の輸入、生産、販売、使用の禁止に踏み切った。施行は2023年6月からだ。 この国に生息するゾウやシカの死因の一つとして、プラスチックの誤食が挙げられ、大きな問題となっていた。 野生のゾウといえば、アフリカの自然公園内を悠々と移動するサバンナゾウを思い浮かぶ私にとっては、投棄場でゾウが餌を求め徘徊する写真には衝撃を受けた。 これまで、野生動物による誤食を防ぐために、スリランカ政府は使い捨てプラの禁止を講じる前、いくつかの試

          【第19回JWCSラジオ リンク記事】 プラスチックに群がる野生動物と、その体内にある大量のプラスチック

          東京・上野の不忍池での自然観察会!

          2月11日(土・祝)に、ワイルドライフカレッジ受講生やJWCSの会員の方々と、上野の不忍池で自然観察会をしました。 都会にも野生の生き物がたくさんいることや、それらの生き物との付き合い方などを考えようと企画した自然観察会。 どんな生き物が観察できたかを紹介します。 東京・上野駅から歩いて行ける距離にある不忍池(しのばずのいけ)では、多くの野鳥が観察できます。 そんな不忍池で何十年も生き物観察をし、今でも観察会を定期的に行っている小川潔さん(JWCS理事・東京学芸大名誉教

          東京・上野の不忍池での自然観察会!

          【国連 生物多様性条約】種の保全と取引に関する新しい国際目標

           JWCSは国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)のメンバーです。そのIUCN-Jの国際経験継承事業の一環として、JWCSの若手スタッフが、国連生物多様性条約締約国会議第15回第二部(以下、CBD COP15)に参加してきました。このブログでは、CBD COP15の現地の様子や、CBD COP15で最も注目を浴びた2020年〜2030年の新しい国際目標である昆明・モントリオール生物多様性枠組(以下GBF)のうち、JWCSの活動に関わる目標について、現地の議論も含めご報告し

          【国連 生物多様性条約】種の保全と取引に関する新しい国際目標

          持続可能なビジネスのルールとして考える、サメのワシントン条約附属書Ⅱ掲載提案

          1.ワシントン条約とは  ワシントン条約(以下CITES)の正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約」である。国際商業取引による種の絶滅を防ぐのが目的である。そのため、「絶滅しそうかどうか」だけでなく「国際取引の影響を受けているかどうか」も規制対象種を決める基準となっている。  CITESは動植物の派生物も対象としている。例えばサメの場合、CITES対象種のサメが含まれるふかひれ入りの食品、肝油、サメ肉を含む製品、サメ軟骨入りサプリなども輸出入に輸出国

          持続可能なビジネスのルールとして考える、サメのワシントン条約附属書Ⅱ掲載提案

          【第8回JWCSラジオ リンク記事】自然撹乱と人為的撹乱の違い

          3月30日に配信されたJWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第8回放送、 『なぜ保全のために生息地をかく乱させるの?』 聞いていただけましたでしょうか。  本記事は、第八回放送とのリンク記事です。まだお聞きになられていない方は、ぜひお聞きください。本記事では、自然環境の中で起きている撹乱について、より詳しくお話ししていきます。  ラジオでは、自然撹乱(Disturbance)が多様な種が生息するために必要であることを紹介しました。これは、1978年にJ. H

          【第8回JWCSラジオ リンク記事】自然撹乱と人為的撹乱の違い

          【第11回JWCSラジオ リンク記事】野生動物を捕獲して動物園で展示することの問題点

          *2022年8月25日、大分市商工労働観光部観光課はニホンザル寄贈事業の中止を発表しました。 「本日、ウルグアイドゥラスノ県から、技術的、経済的等の理由により、ニホンザル寄贈を辞退する旨の書簡が届きました。 本市といたしましてはニホンザル寄贈を、中止することといたします。」 6月16日に配信されたJWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第11回放送、 『野生のサルを捕まえて外国の動物園に送ってもいいの?』のリンク記事です。(以下からお聞きになれます)  JWCSの会員さんか

          【第11回JWCSラジオ リンク記事】野生動物を捕獲して動物園で展示することの問題点

          【第7回JWCSラジオ リンク記事】タコと私の共通点

          2月28日に配信されたJWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第七回放送、 『タコも痛みを感じるの?』 聞いていただけましたでしょうか。  本記事は、第七回放送とのリンク記事です。まだお聞きになられていない方は、ぜひお聞きください。このブログでは、タコやロブスターなどの頭足類や甲殻類について、さらにお話ししていきたいと思います。頭足類(cephalopods)とはイカやタコなどの生物の総称、甲殻類(decapods)とはエビやカニなどの生物の総称です。  これらの生物は我

          【第7回JWCSラジオ リンク記事】タコと私の共通点

          【第6回JWCSラジオ リンク記事】市街地での鳥のフン害から野生生物との共存を考える

           JWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第六回放送、『鳥は人にわざとフンを落とすの?』は聞いていただけましたでしょうか。 本記事は、第六回放送とのリンク記事です。まだお聞きになられていない方は、ぜひお聞きください。 ラジオで取り上げましたように、市街地で集団をつくるムクドリなどの野鳥の騒音やフンの害の対策として、自治体は追い払いを行っています。 しかし野鳥は虫を食べて大発生を防いだり、実を食べて種を散布したりと生態系の中での役割があり、いなくなってしまえばいいというも

          【第6回JWCSラジオ リンク記事】市街地での鳥のフン害から野生生物との共存を考える

          【第5回JWCSラジオ リンク記事】クジラ・イルカウォッチングをする前に知っておくべきこと

           12月23日に配信されたJWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第五回放送、 『安全なイルカ・クジラウォッチングとは?』 聞いていただけましたでしょうか。  本記事は、第五回放送とのリンク記事です。まだお聞きになられていない方は、ぜひお聞きください。このブログでは、ラジオでお話ししたクジラ・イルカウォッチングについて、さらにお話ししていきたいと思います。  イルカやクジラを直接観察する方法を大きく分けると、陸からの観察と海からの観察があります。  ガイドの笹森さん(酪農学

          【第5回JWCSラジオ リンク記事】クジラ・イルカウォッチングをする前に知っておくべきこと

          【第4回JWCSラジオ リンク記事】 クジラ類の種と分類

          11月22日に配信されたJWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第四回放送、 『日本でクジラって見られるの?』 聞いていただけましたでしょうか。  本記事は、第四回放送とのリンク記事です。まだお聞きになられていない方は、ぜひお聞きください。このブログでは、ラジオでお話ししたクジラ・イルカについて、さらにお話ししていきたいと思います。  ラジオ内で笹森さん(酪農学園大学特任准教授・日本クジライルカウォッチング協議会会長)に、イルカもクジラの仲間で、大まかにいうとイルカとは小

          【第4回JWCSラジオ リンク記事】 クジラ類の種と分類

          【第3回JWCSラジオ リンク記事】 感染症による宿主の行動操作

          10月22日に配信されたJWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第三回放送、 『地球温暖化と動物からうつる病気には関係がある?』 聞いていただけましたでしょうか。  本記事は、第三回放送とのリンク記事です。まだお聞きになられていない方は、ぜひお聞きください。このブログでは、ラジオでお話しした感染症について、より掘り下げてお話ししていきたいと思います。  ヒトを含む動物の体内で病気を引き起こす微小な生き物を病原体と呼び、病原体によって引き起こされる病気を感染症と呼びます。

          【第3回JWCSラジオ リンク記事】 感染症による宿主の行動操作