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触覚を磨く

ヒトは五感により外界の情報を得ています。武術で重要なのは主に視覚・聴覚・触覚でしょう。このうち武術に必要な「触覚」の獲得には訓練が必要です。おそらく一般の人は触覚の能力のほんの一部しか活用していないと思われます。

大脳の運動野や体性感覚野と体のどの部分が対応しているかを反応領域の面積に応じて地図にし、これを人の形に描き起こした「ペンフィールドのホモンクルス(小人)」というものがあります。これによると、ヒトは顔や舌・手特に親指が非常に大きい姿になります。すなわち、触覚のために脳が提供(用意)している容量は非常に大きいということです。触覚を磨いた結果、点字の認識・職人がミクロン単位で表面の凹凸や質感を感知する・彫刻家が微細な振動をコントロールし作業するなど精度の高い能力が発揮されます。

さて、大東流では、掴み技から稽古が始まります。掴まれる・掴むことから手の触覚を磨いていくのです。また、平行して得物(杖・太刀など)を通じて手の触覚を磨く稽古も行ないます。ただ、触覚は外力による皮膚表面の小さな機械的変形によって生じる感覚(情報)のことですから、これが何を意味するか・どう理解すべきかを判断するのは知覚(感覚的経験)の仕事なのです。しかも、この感覚自体個人の経験に基づくものですから、客観的な評価や判定が難しいのです。したがって、体得した指導者から教わり、それを信じることから始める他ありません。もちろん自得も可能ですがかなり苦戦するハズです。

先ずは、骨に触れる・関節をロック(動きを封じる)する・皮膚(皮)を掴まえる感覚すなわち柔術テクニックを覚えることから始めるとよいでしょう。そうすると、自他の力感・どこに力が入っているかなど感知できるようになり、得物や人の手などを介しても同じように感知できるようになります。

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