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仏教との関係5

密教は、この孔雀明王の修法においてもうかがえるように、諸仏を讃仰するだけにとどまるものではなく、術者が肉体を次第に形而上化していくことによって、諸仏の機能の中に身をせり入れ、ついにはその機能を引き出し、それによって現世の利益を得る、ということで始めて密教的に完結するのである。

これが「孔雀明王の咒(じゅ)の伝の事」である。バラモンの行者の孔雀の行という修行は・・・
まず、両ひじの先端をヘソの両側に触れさせつつ、両掌をベタりと地面につける。首は真っ直ぐ突き立てる。その次の動作は困難だが、地面につけている両掌に力を入れ尻を浮かせるのである。それだけでなく両脚を杖の如く空中に突き立てる。いかにも格好が孔雀である。行者がこの姿勢をとれば、すなわち「一切の罪障を滅す(悪を破壊する)」とシュリー・ジャーパーラ・ダルシャナ・ウパニシャッドの第3章にある。

惣角は試合の時「宗教用語」の様なことを口ずさめば、絶対に負けないと時宗に伝えていた。大東流は口伝伝承方式を採用し、合気柔術中伝技法はヨガ技法であり、密教さらにはインド哲学の知見がとりこまれている。皆伝の口伝「孔雀明王の咒(じゅ)の伝の事」とは、このようなことを伝えているのである。

補足説明:シュリー・ジャーパーラ・ダルシャナ・ウパニシャッドとは、インド哲学の奥義書で第3章はアーサナ(ヨガのポーズ)が示されています。ここで鶴山先生が引用したのは孔雀のポーズのことで、ダルシャナウ・パニシャッドにはクンダリーニ(生命エネルギー=武田惣角が天地陰陽の残身のとき発していたとされる言葉)が含まれています。(完)

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