旅にでたいオートバイ

年に一度の旅乗りを楽しみにしているララライダーの思い出話

旅にでたいオートバイ

年に一度の旅乗りを楽しみにしているララライダーの思い出話

最近の記事

“また会いましょう”

たぶん現行車ではないがそれほど古くないオフ車が駐車場の端に停まっていた。 最近のSUVにありそうなカーキっぽい色とカモフラ柄が目を引いたのだが、もっと気になったのは横に立つライダーだった。 そのライダーは年配の男性だった。 「いい色ですね。」と声をかけると 「一番軽いやつって言ったらこれだって言うんで買ったんだよ。いま中古高いね。」 失礼ながら想像に反してしっかりとした声だった。年齢を伺うと86だと言う。 多分、周りからはそろそろ止めろと言われていてもおかしくはない齢。 自

    • ゲストハウス 2:43AM 

      人のイビキで夜中に目を覚ますなんていつ以来だろうか。 イビキの主は衝立の向こう側の年配の男性。昼間に見かけたときは頭にタオルを巻いていた人だ。 距離で言えば1mと離れていないところに音源があるので仕方がない。ここはそういう宿だ。 今までに泊まったゲストハウスはどこもベッドだったのだが、ここは違う。 六畳の和室が衝立で4つに区切られていて、それぞれに布団を敷いて寝る。2段ベッドのようにカーテンを閉めれば個室感覚と言う感じではない。貴重品は抱いて寝るか階下のコインロッカーにいれ

      • 好きな街で生きること

        長野でのサッカー観戦を終えて、さあ今夜の宿に向かおうとスマホのメールを見返して心臓が止まった。 楽天の予約日は明日の日付になっている。 そこからは祈るような気持ちで宿に電話をかけた。電話口でこちらの事情を話すと、今夜も空きがあると言う。 胸をなでおろし、何度もお礼を言って宿に向かった。 「今年で9年目なんだけど、実質稼働6年かな。」 宿の女主人は笑いながら言った。 今夜の宿もゲストハウス。この女主人はこの場所が好きでわざわざ県内の別の場所から移り住んできた方。 築120年の

        • 彼女のオートバイ

          彼女がオートバイの免許を取ったのは19歳だった。 高校を出て自動車部品会社に就職した彼女は営業部に事務員として配属された。 当然というべきか会社には車いじりが好きな人が多くて、草レースに出ている人たちに誘われてサーキットに行ったりもしたが、彼女に刺さったのはなぜかオートバイだった。 やがて彼女はニ輪の教習所に通い始めた。当時女性がオートバイ免許といえばまず小型自動ニ輪免許からステップアップすることをを勧められることが多く、彼女も小型自動二輪の免許を取得した。 「小型で練習し

        “また会いましょう”

          安宿とイケオジと瓶ビール

          珍しく近所の仲間とSSTRに参加したときのこと。 例によって17時に金沢市内の某コンビニ集合という400km先の現地集合方式のツーリングにしながらも、実は早めに着いて金沢の回転寿司屋に行くという裏テーマを達成し(七尾のアジ最高)、余裕の表情で合流したあと無事に千里浜にゴールし、その夜の宿がある和倉温泉へ向かった。 あの有名は和倉温泉である。「和倉温泉に安宿など無い」と言い切る貴兄には申し訳ないが、ちゃんとベッドに寝られて2800円の宿がある。貧乏ライーダーにとっては最高だ。

          安宿とイケオジと瓶ビール

          陽が落ちるまで80km

          その日の晩は輪島に宿を取っていた。 夜明け前から600kmぐらい走って、さあもう一踏ん張りと海岸線に別れを告げ、のと里山道路を目指して走リ始めたのだが、ふと太陽がまだ意外に高いところにあるのに気がついた。 いまから海岸線に出れば海に沈む夕日を見ながら走れるじゃないか。山の中のバイパス走るのと比べたら断然エモい。 そう思ったらすぐに路肩に停まってナビをリルートした。なんだあと80km。2時間だから20時すぎに輪島ならば文句はない。 海岸線に出るまで少し時間がかかった(少し迷った

          狐のタコ焼き

          どこのまちにもありそうな夕方のバイパス渋滞をやっと抜け、横道に入ったら急に日が落ちた気がして、コンビニの灯りが少し眩しく思えた。ナビのマップがここだと言っている場所は細い路地で、そこは年季の入った寿司屋だった。 薄いガラスの引き戸の奥は真っ暗で、こりゃあGoogle先生にやられたかと思っていると、後ろから「今夜ご予約の方ですか?」と声がした。 オートバイに跨ったまま慌てて振り返ると小柄な女性がエプロン姿で立っていた。狐かと思った。 よくよく見ると道の反対側に町家風の民家があ

          彼のオートバイ

          人と走るよりオートバイは一人がいい いつもどこへでも気ままに走って、休んで、コンビニで缶コーヒーを片手にタバコ吸いたい “ああ、今日タバコ多いな”って反省して吸うの我慢しながら走りたい 知らない場所でよそ者の顔して地元の人の言葉に“あ、そうなんですか“って言いたい “飯どうすっかな“ってその土地のどローカルな店に入ってチャーハン食いたい この道いいじゃんって感動して誰にも見せない自撮り写真撮りたい ぷらっと入ったお店の人と話し込んじゃってそこで仕方なく土産買って帰りたい ここ

          どうせ乗るなら速いのじゃないと 

          金沢の宿に着いてオートバイがあることを伝えるとフロントの女性が「こちらでよろしければ無料で停めていただけますけど」とホテルの中庭に案内してくれた。ホテルのフロントからガラス越しに見えるスペースで広い庇がついている。先客にVストロームが1台停まっていた。 「あんまり停められないので台数限定になっちゃうんですけれど まだ停められるので。有料も地下にあるんですけれどお金かかっちゃうんで もしこちらでよろしければ」 そう言いながらオートバイを見て「あら、CBR?」と嬉しそうな声を上げ

          どうせ乗るなら速いのじゃないと 

          立ち食いそば屋

          6月の少しどんよりとした朝、寒くもなく暖かくもない、そろそろ梅雨かなという朝。 せっかく走りに出てきたのにコンビニでおにぎりをかじるもの芸が無いし、道の駅はバイクで溢れていそうで嫌だしと思いながら、ふと浮かんだのが正丸駅の立ち食いそばだった。 ここは早い時間からハイキング客が降りるので、こんな田舎では珍しく7時からやってる。 蕎麦のつゆの匂いを思い出したらもうそれ以外は考えられない。看板を見つけたらちょっと鋭角の上り坂を上がって売店横にバイクを止めた。 温かい天ぷらそばにあり

          尻尾を巻いて逃げてきた 天龍村

          秘境駅というのをYouTubeでみた。 乗車人数の年間平均が4名ほどと言われるその駅は中井侍駅(なかいさむらいえき) 近くの急峻な山の斜面に茶畑があってお茶も有名らしい。その茶畑からの景色もいいらしい。 なにしろ名前がかっこいいじゃないか。中井侍。それに秘境という言葉の響きよ。 それだけの動機で来た天龍村を、ちょっと秩父の奥の方の雰囲気を感じながら、天竜川のターコイズ色の水の色、深い鮮やかな緑の木々と日頃の行いの賜物の晴天で、それはそれは気持ちよく進んでいった。 途中に開ける

          尻尾を巻いて逃げてきた 天龍村

          海の街 女川町

          地震があって暫く経ってから、やっと訪れる事ができた。 そこはちょうど2000年の頃に半年ほど近くに住んでいただけなのに、すっかり好きになった街があってずっと行かなくちゃと思っていた。 「ごめん、やっと来れたよっ」て誰も待ってるわけじゃないけれど、そこに行った時はそんな感じだった。 テレビで見ていた、以前よりずっとキレになった街は新しい駅舎から海に向かってなだらかに下っていて両脇にはとてもきれいな商店街があった。でも、あの頃通っていたあの魚屋さんはもうない。奥さんも旦那さんもも

          初めてオートバイで旅をした話

          オートバイに乗るのに夜明け前に家を出るなんてことは今までになくて、ちょっと自分でも「テンション高いな」と思いながら、まだ暗い高速道路を走って今日の最初の目的地へ向かった走った。ずっとでたいと思っていたSSTR。まあテンション上がるよね。さむいけど。 前回の300台からエントリーを1,000台にまで増やしたこの大会。スタート地点では初めて導入された位置情報登録のためのシステムがスタートからダウンして、あっちでこっちで「繋がんないっすよね~」という会話が聞こえる中、誰かがガイドブ

          初めてオートバイで旅をした話

          馬籠峠

          馬籠宿を歩いたら16:00を過ぎていて、今夜の宿へここから1時間半と踏んで出たは良いが、どうやら逆方向へ走っていることに気づいた。 途中の駐車場へ入ってUターンして、さあもう一度馬籠峠を通ってと思ったところに、向かいの家から2台のオートバイが出てきた。 赤のCB750Fourと、その後ろのGPz750は待っているこちらにペコリとお辞儀をして出ていった。それを追ってこちらも出たので3台で峠道を走っていく事になった。 先行の2人はどちらも白のヘルメットに似たような赤いブルゾンとジ

          See you somewhere again.

          note いつか行ったあの場所やいつかのあのことを 思い出しながら書いていく