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水と生きる

僕は飲み会が好きだ。家でひとり映画を見ながらビールを流し込む時間もたまらなく幸せだけど、やっぱり友人や後輩とお酒を酌み交わし会話に興じる時間の方が楽しい。飲みすぎた日の翌日に「もうこんなことしない」と後悔しても、次の週末にはそのことをすっかり忘れて夜の新宿を歩いている。僕の脳には都合の悪い記憶を自動消去する便利な機能がついているのだ。

会社の人とのいわゆる〈飲みニケーション〉は気を遣うし若手の僕にめんどうな幹事の仕事はすべて押し付けられるから積極的に手を挙げることはないけれど、誘われたらそれなりに嬉しいし参加してしまえば楽しめないこともない。アルコールの力というものは偉大で、これさえあればどんなにくだらない友人のひと言でも過呼吸になるぐらいゲラゲラ笑えるし、微妙な距離感の同期や苦手な先輩との会話も(表面上は)なんとかなってしまう。

大学一年の頃に新歓コンパで泥酔して暴れまわる先輩たちを見て「どうしてアルコールが入っているというだけでたいして美味くもない水に高い金かけて喜んでいるんだ?」と蔑み、こういう大人にはなりたくないものだと18歳ながらに決心したものだったが、残念ながら、いま自分はその〈なりたくなかった大人〉に近づきつつある。僕だってもうすぐ25歳だし、いつまでも大切にしたいなと思う楽しい思い出があれば、できればタイムマシンに乗ってやり直したい過去もある。社会人生活は日々ストレスや悩みとの戦いだ。月並みだけど「大人になればビールの美味しさがわかる」とは味のことではなかったのだなと、いまになって身を持って実感している。

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