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日向坂46「君しか勝たん」個人PV感想:[TYPE-B]編

前回に引き続き「君しか勝たん」の個人PVを振り返っていこう。今回はTYPE-Bに収録されている作品について考える。

潮紗理菜「潮紗理菜の世界民族楽器の旅」

すさまじくEテレ臭のする企画だ。そもそもなっちょ自身、公共放送の趣がある。「今このような状況の中で誰か一人でも明るい気持ちになれるものがしたい」という思いから生まれたこの個人PVは、彼女の狙い通り、ハッピーオーラに満ちた内容になっている。「ラミラミパロパロルプルプル」と謎の造語でフックを作るあたりもうまい。「日向坂46の『ひ』」で本人が語ったところによれば、当初スタッフから提示されたのは料理企画だったのだが、これでは自分の作りたいPVにはならないと修正をお願いし、現在の形になったらしい。尺が10分にも満たないので、ロケの様子がところどころ端折られてしまっているのが勿体ない。なっちょの目線から見た民族楽器たちはどのように輝いていたのだろうか。きちんとお金は出すので、ぜひ完全版でリリースしてほしい。あと、なっちょの街ブラロケって案外たのしそうだと思った。やはり「日向坂で会いましょう」で春日先生引率の遠足ロケをやるべきだ。そして学級崩壊するさまをこの目で見届けたい。


高本彩花「夜灯」

ものすごく「おたけっぽい」個人PVである。きっと彼女の理想の世界、どういう大人になりたいかが込められているのだろうと思った。バーなのにソフトドリンクを飲むあたりが可愛らしい。強いカクテルをがばがば流し込むおたけを見てみたかった気もする。たぶん本人がそんなにお酒得意ではないのだろう。正直、ほかの個人PVのパンチが強すぎて埋もれ気味なのだけれど、彼女が見せたい「おたけ」を、そのまま素直に落とし込んでいて誠実だし、いまこの瞬間の輝きを収めた作品として、僕はよろこんで受け取りたいと思う。そして、たしかにおたけの個人PVを作るならこれしかないよなという納得感があるのだ。


丹生明里「丹生明里のやりたいこと10個やってみた!」

丹生ちゃんが丹生ちゃんをしている。ユーチューバー風の編集がシンプルだが可愛らしい。彼女は自分でも動画編集ができるので、ぜひ自分でもYouTubeチャンネルを開設して、自由に暴れまわってほしいところだ。特に、自粛期間中にメッセージで発信していたゲーム実況動画はクオリティが高かったので、内側に留めておくのは残念だと思う。とはいえ、いまは忙しくてそんなことにまで手は回らないかもしれないが。時折彼女から感じる「狂気」がこのPVにも収められている。三枚下ろしした魚にそれぞれ名前をつけ始めたのには爆笑した。天真爛漫を突き抜けてサイコパスである。

ところで、丹生ちゃんは最初からキャラが濃く、「日向坂で会いましょう」でフォーカスが当たったり、外番組に呼ばれたりするのが比較的早かった、つまり「タレント」としてそれなりに地肩の強いメンバーとの印象が強かったのだが、最近また進化してきている。個人的には、お美玖と同じく、「余計な事までやりましょう」での活躍が大きかったように思う。ソロパーソナリティのトップバッターとして3ヶ月間畑を荒らしに荒らしていたが、二周目に入ってからは荒削りだった箇所を修正し、ひと回り視聴した姿を見せた。これまでは持ち前の球威でゴリゴリと三振を奪っていたところ、コントロールも加わって、狙ったところに剛速球を投げられるようになったイメージ。ブラックないじりも最近見せるようになった。案外、意地悪なことも言うのだ。そして、最近はビジュアルも末っ子感を脱却し、お姉さん感を前に出す機会が増えてきている。彼女もことし21歳だし、三期生がフレッシュさで売り出している中、徐々に次のステージを模索しているのではないだろうか。ブログやメッセージで度々登場する髪を下ろしたスタイルに対するファンのリアクションを見るに、そろそろタイミングではあると思う(という個人的願望)。


影山優佳「学びの化物 影山に1日休みを与えてみた」

「学びの化物」とは、すごいあだ名である。休みといいつつ学校の授業ばりに時間割を組んで貪欲にあたらしい知識を吸収していく。彼女のバイタリティと基礎スキルの高さには尊敬しかない。おそらく、裏では相当な努力を積んでいるのだろう。このPVもなっちょの民族楽器と同様、1日分の収録を相当短くまとめているので、食い足りなさはある。ダイジェストを見ているようだった。一つひとつの授業で彼女が学んだ内容、そこから得た気づきや今後への課題は、もっとたくさん語られていたはずだ。それをカットしてしまうのは良くないので、これもやはり完全版をリリースしてほしい。

「学びの化物 影山に1日休みを与えてみた」は、「なんでもこなせる完ぺき人間」という影ちゃんのパブリックイメージをなぞる内容だったけれど、一方で最近、彼女はブログでこんなことを漏らしている。

私の克服したいことは「できないことを人に知られる」ことです。

(中略)

小さいころからずっと、

自分ができないものがあることを人に知られると「弱い人だと認識されているの」などと

自分の弱みをみせることに謎の恐怖を抱いていたタイプの負けず嫌いは、

苦手な科目や単元ができたら徹夜で予習復習し、調理実習や体力テストの前には放課後の自主練を繰り返していました。

底なしの好奇心とともに続けてきたこの習慣は平均点型オールラウンダーを生み出しました。

(いろいろな方といろいろなお話ができることは素敵だなって思いますね!)

憧れだったアイドルになってからもそんな自分はあんまり変わらず、
変われない自分に心を離したくなることもありました。

でも、最近あることをきっかけに気づいたことがあります!

それは、私にとって大切なことは、

自分の弱みをどうやってカバーするかではなく、
自分の弱みをどうやって魅力的に見せるかだということです!

先日の「日向坂で会いましょう」の料理企画でも意外と抜けているところを見せていたし、じつは絵を描くのがヘタクソなのもバレ始めている。影ちゃんはオールマイティだからといってとっつきにくいところがないのが良いのだけど、それでもやはり本人は何事もハードルが上がってしまうこの現状にやりにくさも感じているのだろう。「B.L.T.」8月号の松田好花×渡邉美穂×富田鈴花の鼎談でも、「できるキャラ」にされた側のプレッシャーが語られていた。たしかにできて当たり前ってなかなか苦しい。今回の個人PVは、まじめで貪欲で前のめりな影ちゃんの魅力を見せてくれたけど、もし次があるとしたら、それはぜんぜん違うものになっているのかもしれない。


森本茉莉「MARIE IN WONDERLAND」

まりぃの個人PVは22人の中でも群を抜いて狂っている。ぱるのときも思ったけど、「本人原案」とはどこまでを指しているのだろう。「マトリックス」や「インセプション」を思わせる奇っ怪なSF風の映像から始まり、最後は「いなくなれ、群青」に落ち着く。再生したのが深夜だったので、悪い夢を見ていた気分になった。可愛らしさを全面に押し出したPVではないが、強烈に脳みそにこびりつくのは確かだ。

新三期生にぽつりぽつりと打席が回ってくる中、自分のフィールドがどこにあるかを模索している最中なのが森本茉莉だと思う。みくにんは外番組の出演いちばん乗りだったし、ぱるも「声春っ!」でゲストながらいい役をもらっていた。ファンの間でもなんとなくキャラが定着しつつある。そうすると、ふたりのちょうど中間にいる(身長も真ん中だ)まりぃは、たしかにポジション取りがむずかしい。上村ひなのという変化球も同期にいる。それでも埋もれずに溢れ出す彼女の個性とは何なのか、正直なところまだ僕にはわかっていないのだけど、まだ焦る必要はないだろうし、そのうち特大のホームランを打つことを期待している。こんなにイカれた個人PVを作りたがる子が、輝かないはずがないのだから。


松田好花「真夜中の松田さん」

最後はこのちゃん。はんなりした京都っ子のイメージそのままの笑顔と、うちに秘めたる泥臭い闘争心と、それから見ているこっちが羨ましくなるぐらい素直でストレートな感情表現。好きにならない人はいるのだろうか?それでいて彼女は「放送作家」なんてネタにされるぐらい、プロデュース能力にも長けている。グループの中にいながら「日向坂のオタク」なのだ。彼女から発信されるメンバーやグループの情報は、ファンの心をしっかりわかっていて、応援していて居心地のいい距離感だと思う。その感覚は当然セルフプロデュースにも活かされている。

「真夜中の松田さん」は、松田好花×ラジオという最高の組み合わせのPVだ。みんな彼女が「オードリーのオールナイトニッポン」のリスナーで、「リトルトゥース」を自称していると知っていればこその演出だと思う。「日向坂で会いましょう」でもみずから明かしていたように、リスナーとしてメールを送る姿も描かれる。モサい赤ジャージに学校の体操服、度のキツそうな丸メガネ。誰が着てもダサくなりそうだが、それをお茶目に着こなすのはさすが。じっさいにジャージで過ごしているかどうかはともかく、このちゃんの理想の世界を漂っているかのような映像だ。歌声にエコーがかかりすぎていて、しかも音量が小さくて聴き取りにくいのがすこし残念だった。そろそろ「花ちゃんズ」の新曲も欲しいところだが…。




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