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「Nizi Project」と「M-1グランプリ」の共通項

周回遅れで「Nizi Project」にハマっている。まだ韓国合宿に行く前なので、僕はまだ最後にだれが残るかを知らない。最近はテレビに広告に至るところでNiziUを見かけるけれど、番組を完走する前に結果を知りたくないので、そういう時は薄目で見ることでネタバレを回避し、見覚えのある子がいても、記憶を消して見なかったことにしている。仕事終わりに夕飯を食べながら彼女たちの奮闘を見るのが最近のたのしみだ。

「Nizi Project」を見ていて、気づいたことがある。日本にはオーディション番組がない。アメリカには、ゆりやんレトリィバァも出場した長寿番組「アメリカズ・ゴット・タレント」がある。フランチャイズの英国版「ブリテンズ・ゴット・タレント」からスーザン・ボイルやポール・ポッツといったスターが見い出され、世界中で話題になったことを覚えている人も多いだろう。そしてもちろん、JYPエンターテインメントの母国・韓国は、オーディション番組の聖地である。このnoteではたびたび日向坂46について触れているが、同系列のAKB48からメンバーが選出されているIZ*ONE結成の様子も「PRODUCE 48」という番組で見ることができる。

日本でも昔まで遡れば山口百恵やピンクレディーを輩出した「スター誕生!」や、おニャン子倶楽部のメンバーオーディションが番組内であった「夕やけニャンニャン」など、いくつかの例を挙げることはできる。しかし、長い間スター発掘番組というジャンル自体が下火だったことは事実だ。ソニー・ミュージックと日本テレビが資本にモノを言わせてブームを作り上げた感はあるものの、「Nizi Project」は昨今の韓国のポップカルチャーの浸透やリアリティ・ショーの流行をうまくすくい取り、あらためてオーディション番組の需要を掘り起こしたと言える。

でも、本当にこの国はオーディション番組不毛地帯なのだろうか?オリンピック期間中の世間の盛り上がりや、夏の甲子園の加熱っぷりをみる限り、この国の住人は「がんばる人」のドラマが大好きである。ときにその卓越した技術そのものよりも、競技者のパーソナルな部分や、努力の裏に隠されたドラマの方を消費したがる傾向すらある。オーディション番組の醍醐味を理解する素地はあると言えよう。

そんなふうに目線をずらしたとき、ふと思い当たるイベントがあった。察しのいいひとはタイトルからすでに気づいていただろう。「M-1 グランプリ」に代表されるお笑いコンテストの数々である。

先日公開されネット上でも話題になったCreepy Nutsの楽曲とのコラボCM。漫才は身一つでセンターマイクの前に立ち、ことばで観客の心を動かしてしまうエンタテイメントだ。全身から力を振り絞るような表情で舞台袖に立つ芸人たちの姿に、僕たちは彼らの努力の日々を思う。「M-1 グランプリ」は、バイトで食いつなぎながら風呂なしアパートで暮らしていた人間が、一気に国民的スターになれる可能性があるイベントだ。テレビ番組でも優勝予想特集が組まれるようになり、もはや大会名の元ネタであるG-1レースやK-1といったビッグイベントに比肩する注目度といっても過言ではない。女性芸人のコンテスト「THE W」も去年優勝者の3時のヒロインが大ブレイクしたことをキッカケに風向きが変わりつつある。14日の放送を見ても、この番組から新しいスターを生むんだという日本テレビの強い意欲がにじみ出ていた。

すなわち、ここ20年の日本のエンタメ界は、アイドルではなく、お笑い芸人の「オーディション番組」が覇権を握っていたのである。ある意味、「M-1 グランプリ」や「キング・オブ・コント」でその需要が満たされてしまっていたので、「アメリカズ・ゴット・タレント」のようなフォーマットの番組は付け入る隙がなかったのだろう。そう考えると、審査員がずらりと並んでパフォーマンスを評価する絵面も、同じに見えてくる。

ことしの「M-1 グランプリ」は一体誰が優勝するだろうか。2021年のニュースターが決まるのは、12月20日(日)の夜である。

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