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2020年の「日向坂で会いましょう」を振り返りましょう

ことしは「日向坂で会いましょう」にずいぶん助けられた。どんなにしんどくても、とりあえず日曜深夜1時5分にテレビを点ければ、30分間はいろいろな嫌なことを忘れることができる。彼女にふられて落ち込んでいるとき、緊急事態宣言が発出されて家から一歩も出られなくなったとき、行き先の見えない仕事に漠然とした不安を抱えているとき…振り返れば25年間の人生でいちばんの受難の年だったが、いつでも明るく元気な日向坂のメンバーと出会えたことは、とても幸せなことだった。

少々感傷的な前書きになってしまったが、今回はことしの「日向坂で会いましょう」の企画を、最初から最後まで一連の流れでふりかえってみたいと思う。井口眞緒の卒業やリモートでの番組制作、その後のソーシャルディスタンスを確保した収録など、イレギュラーなこともあったが、この日向坂46とこの番組は逆境をも取り込んで進化を続けてきた。できる限り放送当時の空気感を思い出しながら、「日向坂で会いましょう」の1年間を総括したい。

1.Love Me Doの襲来とみーぱんの覚醒

新年一発目の企画は「新春! 心ハラハラ初夢紙芝居 2020年ラッキーガールを決めましょう! 」(1月6日/13日放送)だった。オープニングからいきなり「夢芝居」を流すふざけっぷり。僕がこの番組を追いかけ始めたのは去年の9月だけど、テロップやBGMのネタの細かさに気づき出したのはこの頃からだったと思う。この回には占い師のLove Me Doが登場。独特の長髪スタイルや、めいめいへの願望丸出しの占い結果(「猫耳つけた水着だったらいい」とアドバイス)がおひさまの心をつかみ、出演後も日向坂に縁あるタレントとして妙な人気を持続している。彼自身、番組出演後も日向坂46のドキュメンタリーを鑑賞したり、「めいークリスマス!!!」とツイートしクリスマスを祝福するなど、おひさま活動をエンジョイしているらしい。

ちなみにことしの「日向坂で会いましょう」のスタジオゲストは、結局Love Me Do ひとりであった。後述のアンガールズ田中も一応同じ枠ではあるが、ドッキリ企画なので毛色が違うと言えよう。AbemaTV「みえる」番組内でキャプテンがLove Me Doに占いをしてもらったと話していたが、もしかしたら来年もどこかで占い企画があるのかもしれない。

「帰ってきた日向坂46の世界一やりたい授業!」(1月27日/2月3日放送)は、まなふぃのサンリオ講義が秀逸だった。メンバーがサンリオキャラのカチューシャをかぶっている時点で優勝。みんな可愛い。さらにまなふぃの芯を食ったツッコミが冴え渡っていて、とてもおもしろかった。ツッコミ不在の日向坂46において彼女のキャラに焦点が当たるようになったのは、リモート収録期間の企画がキッカケだが、思えばこの頃すでに地ならしは住んでいたと言える。2月10日の放送は「誕生日の春日をご機嫌に! 30分まるごと丹生祭り」。メンバーひとりにフォーカスを当てる企画は本当にめずらしい。このあと番組的にも丹生ちゃんをプッシュするのかと思ったが、全然そんなことはなかった。ゴリ押しせずとも彼女は外の世界へ羽ばたいていくことになるけれども。

このあとは「4thシングルヒットキャンペーン 一歩踏み出せない女子高生を元気付けましょう!」(2月14日放送)や「こさかなが言うもんだから 日向坂46 4thシングルのMV解説を皆でしましょう!」(2月24日放送)など、4thシングル「ソンナコトナイヨ」の販促企画がつづき、ケイマックス色は抑えめになる。このときはまだ王道アイドル番組をやっていたのだ。ヒット祈願というとメンバーに負荷のかかる過酷な企画が多く、オトナのつくった人工的な感動ドラマの匂いが強くて複雑な気持ちになることもあったから、今回のようにハッピーないたずらは見ていて気持ちが良かった。ADの格好をしてもまったくバレない河田陽菜(このあとの新三期生やアンガールズ田中へのドッキリ企画でも見せた仕掛け人としてのセンスが光る)や、気づいてほしくてマスクを外してしまうお美玖(そういえばまだ高校生だった…と気付かされる)など、生き生きしているメンバーも見どころだ。

「ひなあいVSひなましょう いい加減白黒つけましょう! 愛称統一マッチ」(3月2日/9日放送)では、春日がプレイヤーにまわる代わりにみーぱんがMC横のアシスタントを務めた。個人的には「日向坂で会いましょう」における彼女の立ち位置はこの企画をターニングポイントに大きく変わったと思っている。これまで一期生の中でも年少の天然キャラというポジションではあるものの、いまいち目立つことができていなかった。しかし、この企画のみーぱんは持ち前の明るさを存分に発揮し、「ばばぁの噛み方」で笑いを誘うなど、大車輪の活躍を見せていたのだ。正直、僕はあまり彼女にピンときていない時期もあったのだけど、これを機にその魅力に気づくことができた。このあとアルバムリード曲「アザトカワイイ」のセンターに抜擢されたほか、「女子グルメバーガー部」への出演、「ZIP!」の「キテルネ!」レポーター就任を果たすなど、みーぱんにとって2020年は躍進の年になった。その兆候が「ひなあいVSひなましょう」にあるのではないだろうか。

2.新三期生の登場

ことしの日向坂46を振り返る上で忘れてはならないのが新三期生の加入だろう。髙橋未来虹、森本茉莉、山口陽世の3人は、4月6日放送の「拝啓 若さん、ひなのに友達が出来たもんで、新3期生をみんなに紹介しましょう」で、はじめてファンの前に姿を見せることになった。

彼女たちが加入するまで「ひとりぼっち」の三期生だった上村ひなのはかつてブログのタイトルで『今ね、とても友達が欲しいんです。気を使わずに何でも話せて一緒にどこへでも行けるような友達。そんな友達、欲しいもんだ。』と気持ちをこぼしていた。キャプテンの佐々木久美が上村ひなの配属当時『同期がいないのは大変なことも多いと思いますが、悲しい思いなんてする暇もないくらい私たちが可愛がってあげる予定です』とコメントしたことは本心だろうし、現にメンバーたちもそのとおりのことをしてきたのだろうけど、やはり先輩は先輩、完全に心を開くのは難しいだろう。

だからこそ、この番組であくまで上村ひなのが新三期生のことを「お友達」と呼んでいたのはとても感慨深かった。やっと「気を使わずに何でも話せて一緒にどこへでも行けるような友達」ができたんだと。同じオーディションに受かりながらアイドルとしては1年以上後輩、しかも上村ひなのはすでに二列目に昇格しているとなると、かならずしもフラットに行かない部分もあろうが、各メンバーのブログやトークを見ているといつも一緒に行動をともにしているようでたいへん微笑ましい。いずれ彼女たちにも後輩ができるんだろうと思うと、将来が楽しみである。

余談だが、この企画で森本茉莉が「手にボンドを付けて乾いた皮を剥がす」趣味を披露した際、若林に耳打ちされたとおりのコメントをして滑らされ、ぷんぷん起こるこさかなのリアクションは最高だった。「ひなあい」ベストイチャイチャのひとつだと思う。たのしそうにはしゃぐふたりの横で、微妙に悔しそうな表情をするお美玖もかわいいので、ぜひ注目して見てみてほしい。

「オードリーさん、ぜひ見てほしい企画があるんです」(4月13日/20日/27日放送)は、感染症対策の制約が入る前の最後の収録となった企画だ。そしてこの回は2020年の日向坂46の行く末を決定づける分岐点となった。言わずもがな「やってる/やってない」論争の幕開けである。渡邉美穂が提唱する「世の中には天然のぶりっ子と”やってる”ぶりっ子がいる」という概念は、期せずして世の中のムーブメントと同期した。「あざとくて何が悪いの?」のレギュラー放送化、それから「あざとい」という言葉のポジティブな受容への変化…1stアルバム「ひなたざか」のリード曲「アザトカワイイ」もこの流れを意識した楽曲と言えるだろう。B.L.T.等のインタビューで渡邉美穂本人が困惑を示すほどに、「ぶりっ子」のムーブメントは冠番組の枠を超えて日向坂46の活動全体に波及していくことになる。ちなみに同企画内でみーぱんが出演を希望していたオードリーMCの「どうぶつピース」には、夏に「5週連続コラボ企画」と銘打った大規模企画で共演を果たした。つくづくテレビ東京はアイドルファンを転がすのがうまい…。

3.2020年の日向坂を決定づける一撃

ゴールデンウィークに入るといよいよスタジオ収録分のストックが無くなり、 過去映像を使った企画が続くことになる。だが、単なる総集編でお茶を濁さないのがこの番組のすごいところだ。「未公開SP 日向坂46カット女王決定戦」(5月4日/11日放送)では、本放送に乗らなかった未公開素材を「意欲的に企画に参加したメンバーを表彰するため」という形式で特集。「ひらがな推し」時代の素材も含めて、カットされたのが不思議なぐらい面白い場面がたくさんあり、なんなら定期的にやってほしいぐらい興味深い内容だった。そのあとは一ヶ月にわたり「見たい!聞きたい!話しタイ! 総集編で尺をヒッパレ」(5月18日/25日/6月1日/8日)と題して、フリートークを交えた過去放送分のふりかえり企画を開催。これまで明かされることのなかった「宮崎ロケ」前日の夕食会における「春日テーブル」での様子が語られたほか、まなふぃがツッコミキャラとして頭角を表し始めるなど、総集編以上の見どころにあふれていた。しかし、いちばん重要なのは「やってる/天然ネタ」がこの企画内ではじめて定着したことであろう。たしかにこのネタの初出は「オードリーさん、ぜひ見てほしい企画があるんです」なのだが、本当に定番の流れになったのは、渡邉美穂が本企画にてリモート初出演をした際、渾身の「ぶりっ子」をカマしたからであり、それにオードリー若林、齊藤京子、宮田愛萌が乗っかって番組全体の流れをハックしたからである。さらにその後キャプテンやかとし、富田鈴花がフリップを使って「まるや」のワイプ芸をしたことで、下半期の「日向坂で会いましょう」の流れは決定的なものとなった。これもメンバー内の内輪の笑いをそのまま制作側が吸収し、企画に反映させていったのが面白いところである。ちなみにこの頃からテロップの濃度と反映スピードがおかしなことになってくる。金曜夜の放送内容を日曜深夜のテロップに載せるとかどうかしているだろう。楽しいのでもっとやってほしいところだ。

また、同企画のフリートークの中でおたけが「OBKキャラをやめたい」と発言したことは「おたけのおバカキャラ払拭!リモート学力テスト」(6月15日/22日/29日/7月6日)の開催につながった。初のおたけフィーチャー企画である。「ひなあいVSひなましょう」におけるみーぱんと同じく、彼女にとってこの企画はひとつの転機になったのではないだろうか。というのも、1ヶ月放送されたこの企画 でほぼ唯一ずっと出ていた(勝ち抜けテストもシードとして最初から参加権が与えられた。全然答えていなかったが)彼女のすがたが、これまでにないぐらい自然体で、とっても輝いていたからだ。じっさいこの頃から「おたけが最近覚醒している」という評判がおひさまのあいだでもささやかれるようになった。メイクや髪型等の努力もあろうが、絶対にそれだけではない。顔つき、特に笑顔が本当に可愛くなったのだ。根っこの部分でなにか大きな変化があったに違いないと思っていたら、10月発売「IDOL AND READ」でのインタビューや、22歳の誕生日を迎えたブログでステイホーム期間中に心境の変化があったことを語っていた。

特に誕生日のブログはとてもいい文章なので、その一部をそのまま抜粋しよう。

意識が変わって本当にポジティブになれたんです
なんでも前向きに明るく生きているんです
 
私は顔がキツめだから、仕方ないとは思うのですが色々と勘違いされることが昔から本当に多いんです
だから最初は勘違いされにくいように笑う意識をずっとしていました
気付いたら自然に笑えるようになりました
笑っていたら楽しいって感じるようになりました
 
どんな時でも笑っていれば楽しいんです
だからどんな時でも笑顔でいれるようになりました
そしたら笑顔を褒めて下さる方が増えたんです

アイドルは夢のあるお仕事だから
それを実感して、毎日楽しくお仕事ができています

悪いところに気付くことが出来て、変わることが出来たのが21歳で大きく成長できた部分です

お仕事に取り組む気持ちも前とは全然違います

そう、「リモート学力テスト」は彼女がそんな心境の変化の真っ只中にいる中で収録された企画だったのだ。まさしく奇跡とも言うべきタイミングでおたけにフォーカスした企画が用意され、そして、彼女は見事に結果を残した。下半期の彼女の大活躍は言うまでもない。すべてが上手く噛み合って、高本彩花はアイドルとして「覚醒」したのだと思う。

4.外仕事獲得への道

7月13日放送の「春日はつらいよ お帰り影さん 前編」を皮切りに「日向坂で会いましょう」はメインスタジオとリモートスタジオを併用した収録に戻ることになる。2週にわたって放送された影ちゃん復帰企画は、ひな壇でのフリートーク中心ながらとてもおもしろい内容で、ステイホーム期間を経たグループの成長を感じた。また「祝・ダディガ記念! 人生のパイセンに理想の娘の育て方を学ぼう! 」(7月27日/8月3日/10日放送)では、メンバーの親御さんからのアンケートを紹介。いかに彼女たちがたくさんの愛を受け、大事に育てられてきたかが分かり、面白さよりも愛おしさや感動が勝る回だった。また「ダメな親の条件」という項目でこさかな・美穂・ひなのこのちゃんの親が「春日事件」をいじり、スタジオのメンバーがうんざりした表情を浮かべたのは、運動会ではしゃぐ両親を見て恥ずかしがる子どもの姿を見ているようでほほえましい。これ見たら絶対メンバーの悪口なんてネットで言えないよね、と思う(当たり前すぎる話だが…)。「ひな川淳二の怪談ナイト」(7月17日放送)や「世間知らずちゃんの“はじめて”を温かい目で見守りましょう!」(7月24日放送)など、出演メンバーを少人数に絞っての単発企画は、いつも以上に一人ひとりにスポットライトが当たる分、推しの出演しているファンにとってはたまらなかっただろうと思う。個人的には浴衣姿のお美玖が衝撃的だった。これで高校生なんて、10年後はどうなってしまうんだろう。

8月31日放送の「アザトカワイくて何が悪いの? 第2回ぶりっ子選手権!! 前半」は世紀の問題作だった。考えてみれば、この回から年内最終回までぜんぶテンションがおかしい。完全に番組企画者のネジが飛んでしまったキッカケがこの「第2回ぶりっ子選手権」なのだ。これまでさんざん番組内でこすられてきた「まるや」「まる天」ネタを完結させる集大成として、写真集撮影期間の齊藤京子を除く21人で開催された本大会は、ほとんど「ぶりっ子」の革を被った大喜利大会であった。メンバー、オードリー、スタッフ…スタジオに居る全員がトランス状態に飲み込まれたとしか思えないカオスな空間。「ゆるふわカメラマン」すら混乱に乗じて贔屓する始末。特に21人全員の見せ場を残すべくタイトに編集された前編は、内容を詰め込みすぎてわけがわからない状態になっていた。視聴者の僕たちですら混乱し、深夜2時に体力を使い果たしてしまったのだから、収録に臨んだメンバーにとっては相当タフだったことだろう。恥じらいの残るまりもとのぶりっ子や、若林にいじめられて怒るこさかななど、細かい部分を上げればきりがないほど見どころがある。まちがいなくことしトップクラスに密度の濃い企画だった。

「祝!日向坂46 1stアルバムヒット祈願 魅せたい!釣りたい!聴かせタイ! めでタイ魚を海からヒッパレ」(9月14日/21日放送)では、「アザトカワイイ」の「見事につられました」の歌詞にちなんで釣り企画を実施。この番組にしてはお金のかかった企画だった。メンバーのメッセージ状況からして全員が泊まりかけのロケに挑んでいること、またその撮影にどきどきキャンプ佐藤満春が帯同していることが「ジャマしないラジオ」の公開収録で判明していたので、おひさまのあいだでは放送前からバレていたのだが、想像以上に濃ゆい内容だった。放送ではカットされてしまった分も含めると相当長い時間をかけて撮影していると思われる。漁船組の過酷さに比べ、出演時間が短いとはいえ地上組ののんきな雰囲気には思わず笑ってしまった。とくに市場での買い出しシーンはおたけワールド全開で最高だ。やはりメンバーのロケはすごく面白そうなので、このご時世、安全を保っての撮影はなかなか難しいとは思うが、ぜひもっとたくさんやってほしいと思う。

そして、ここから年末にかけて、制作スタッフ側の「もっとメンバーを外番組に売り出したい」という熱意のあふれる企画が続くことになる。「みなさん特技を推すしかない! あなたの特技を仕分けましょう! 」(9月28日/10月5日/12日放送)では、一発ギャグからモノマネ、バッティング、ドローン操縦と各メンバーがバラエティ豊かな特技を披露。あまり実用的でないものも多かった気がするが、みんなが悩みながらも自分のカラーを出そうと奮闘する姿が可愛らしかった。そして、他のメンバーの特技をさらっと奪ってしまうキャプテンとかとしの器用さの光る企画でもあった。11月30日と12月7日には類似企画として「目指せ! 外仕事マスター 出演オファーゲットだぜ! 」を放送。こちらは食レポの極意や「そり立つ壁」チャレンジなどわりと実践的な内容だった。特に「SASUKE」出演を夢見るめいめいに対しては、TBSプロデューサーで「3年目のデビュー」監督の竹中氏がリアクションを示しており、本当に「出演オファーゲット」できそうな勢いである。希望は口に出してナンボなのだ。

先輩たちが芸達者すぎて割りを食いがちな新三期生のために「パイセン達が邪魔をする?三期生の素顔を引き出そう! 」(11月2日/9日放送)と題して、楽屋で彼女たちの生態を探る企画が用意されたのも、とても愛があると思った。オードリーや先輩たちの前ではなかなか出しにくい素の姿をあばくことで今後のキャラ発掘に役立てようということなのだろう。オードリー若林に操作された「いつでもどこでも変化球」な上村ひなのの仕掛けは最高としか言いようがない。また、「私、じつは若林さん嫌いなんだよね」というギリギリのイタズラに対するまりもとの「そっか!じゃあアンケートに書いておくね!」というあっけらかんとした(そして絶対に場の空気を悪くしない)返しは、彼女の人柄が出ていてすばらしかった。個人的には齊藤京子が楽屋に乱入したときの空気の変わりっぷりがお気に入り。けっして悪い意味ではなく、後輩たちから敬われているんだろうなと思った。そういう距離感の先輩がひとりぐらいいても悪くないだろう。

また、11月16日と23日には、以前こちらのnoteにも感想を書いた「大女優へのあゆみ 今こそ演技力を磨きましょう! 」が放送。ひな壇のトークとも、フリップ大喜利とも違う「日向坂で会いましょう」の新たな未来が垣間見えた企画だった。

そして年内最後にして最大の企画が「時は来た! やっとこさ私の番です アンガールズ田中をメチャクチャにしましょう!」(12月14日/21日/28日放送)だ。こちらは諸々の事情によりお蔵入りとなった「第2回 企画プレゼン大会」で渡邉美穂が発案したドッキリ企画を採用したものだが、ほとんどオードリーとアンガールズによる先輩・後輩論争に日向坂メンバーが巻き込まれた「事故」のような企画であった。オードリー若林の指令のもと、メンバーがアンガールズ田中を「メチャクチャ」にする…完全にアイドル番組をハッキングした深夜のお笑いバラエティなのだ。おのずとアンガールズ田中の大立ち回りにフォーカスが行きがちだし、じっさい3週目にはいじけて暴れる田中と、それをなだめる長尾プロデューサーというおじさんふたりしか映らない場面があったり、いろんな殻をぶち破ったトンデモ企画になっていたけど、ファンとして目が行くのはやはりメンバーたちの瞬発力だった。若林の無茶振りに応えるだけでなく、そこにもうひとひねり加える齊藤京子、指示がなくても天丼するかとし、からあげをほおばって全力スマイルを見せるひよたん、それから急なMC仕事も完ぺきにこなすキャプテン。河田陽菜の「演技力」もすばらしかった。なにより、みんなでドッキリを全力で楽しんでいるのがステキだ。アンガールズ田中と「ちっちゃいおにぎりを食べる」ADが、サビ入りお寿司を巡ってテーブルを引っ張り合う場面で、スタジオのメンバーが笑い転げていたのも最高だった。日向坂46のメンバー、オードリー、そして現場のスタッフがみんなで「たのしい番組」を作ろうとしている。そのチームワークの強さと独特の熱気が、テレビの画面越しでも伝わってくるのだ。だから「日向坂で会いましょう」はおもしろい。毎週かならず驚きがあるし、安心して見ていられるのである。まさしく一年の締めくくりに相応しい、総決算のような企画だった。

5. 終わりに

というわけで、総括と言いつつ、この一年のお気に入り企画をただ羅列するだけになってしまった。だが、こうやって順を追ってみると、徐々に番組のテンションが上ってきていることがわかるだろう。特に「リモート学力テスト」でリモートでも面白い番組がつくれると分かったあたりから、ぐんぐん制作側の熱量が上がっていったようにも見える。そして自粛期間中にたまっていたメンバーのエネルギーは、リモート収録やスタジオでの少人数収録を経て、いよいよ「アザトカワイくて何が悪いの? 第2回ぶりっ子選手権!!」で爆発することのなるのだ。その熱量のままアルバムヒット祈願「魅せたい!釣りたい!聴かせタイ! めでタイ魚を海からヒッパレ」に突入したことで、番組の勢いと流れは決定的なものになった。そして極めつけが「「時は来た! やっとこさ私の番です アンガールズ田中をメチャクチャにしましょう!」だ。もはやボルテージは最高潮だけど、まだまだこれ以上の世界を見せてくれるだろうと思わせてくれるのがすごい。アンガールズ田中以外の芸人とのコラボや、本格的なコント企画、オードリーとのロケというカードもまだ残っている。日向坂46と「日向坂で会いましょう」の進化ははじまったばかりだ。来年の彼女たちの活躍がいまから楽しみである。

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