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流動体について: 「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」感想
「迷おう。それが始まりだから。」のことばに誘われて、アイドルの世界の門を叩いた51,038人の少女たち。その中から選ばれた12人のメンバーが、幕張メッセイベントホールのステージに立っている。2023年2月11日・12日の二日間にかけて開催された「おもてなし会」は、そんな日向坂46 四期生が主役として舞台に上がる最初のライブだった。
見どころの多いライブだったけれど、中でも特に僕の印象に残ったのは
迷おう。それが始まりだから。:日向坂46新メンバー募集が示す「選択」
創業者の正垣泰彦いわく、サイゼリヤは「たくさんのメニューから好きな組み合わせで料理を選べること」かつ「なにを組み合わせてもお手軽な価格に抑えられること」ことを売りにしているらしい。正直、サイゼリヤはお腹いっぱい食べようと思うとそれほど安くはならない。吉野家やマクドナルドの方がコスパはいい。でも、サラダとパスタとデザートとドリンクバーを頼んでも1,000円を超えない。上限が決まっているから、お財布を
もっとみる青春の轍をたどって:「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」感想
※ このnoteは「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」を含みます。
あのときバス停でメガネを落としたわたしと、落とさなかったわたし。乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」のミュージックビデオは、このシングルをもって卒業する西野七瀬がアイドルになった世界と、アイドルにならず一般人のまま暮らす世界を並行して描いている。彼女が日本を代表するアイドルグループのトップにまで上り詰めたのも、きっと無数の
「女芸人No.1決定戦 THE W 2021」をふり返る
ことしで五回目を迎えた「女芸人No.1決定戦 THE W」。熱心に観るようになったのは第三回ぐらいからだけれど、今回は特に面白かったと思う。「M-1 グランプリ」や「キング・オブ・コント」のファイナリストはいまだに男性芸人が中心だ。分母からして違うとはいえ、この偏りはとても残念だと思う。だから女性芸人の中から頂点を選ぶ「THE W」は非常に意義深い大会だ。一方、「M-1 グランプリ」や「キング・オ
もっとみる「遅効性」のたのしさの正体:「ベイビーわるきゅーれ」感想
先週の土曜日、シネマ・チュプキ・タバタにて阪元裕吾監督による話題作「ベイビーわるきゅーれ」を観た。殺し屋として育てられたふたりの少女が高校卒業を機にルームシェアをはじめ、社会に「適合」するべく奮闘する姿を描くアクションコメディだ。なかなかタイミングが合わず、映画ファンのあいだで評判になってから実際に観に行くまでにだいぶ時間が経ってしまった。こうなると見聞きする感想からおぼろげながら映画の雰囲気や全
もっとみるとある一日(とその前後の数時間)の記録
Noteに溜まっているメモを整理しようと下書きを眺めていたら、ことしの8月15日に書いた日記が見つかった。東京オリンピックが終わってすぐの頃だ。わりとしっかり書いているのに、公開手前で放置してしまったらしい。せっかくなのでここに記録として残しておこうと思う。
金曜の夜は友人とひさびさに電話で話した。いつも最近ふれた映画や本の話からはじまって、夜遅くまで哲学や社会学にまつわるあれこれを語る。大学時