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ペライチ小説~The die is cast~

また戦争が始まった。
自国の領土を広げるため、大国が言い掛かりを付けて隣接している小国に侵攻したのだ。
地球が誕生した時、海がすべての大地を覆っていた。いつからか大地ができ、いつからか大地に人間が住み、いつからか人間は国を作り、いつからか国境で分け、いつの間にか領土を巡って争うようになった。
この光景を見て、地球を作ったものは、そして人間を作ったものは何を感じているのか。

大国のリーダーが国民に向けて声を荒げている。
『隣国は核兵器を作り完成させた。このままでは我が国は滅ぼされてしまう。その前に攻めるしかない。他国に侵略されない為には先に攻めるしかない』
この声に3分の1の国民が熱狂している。残りの3分の1はこの声明に疑問を感じ、残りの3分の1は興味なくいつも通りの日常を過ごしている。

核兵器を持っていると言い掛かりを付けられた小国のリーダーは徹底抗戦を決めた。
『正義は我が国にあります。国民が一丸となれば必ず打ち勝つことができます。皆で力を合わせてこの難局を乗り越えましょう』
この声に小国の国民は熱狂した。武器を手に取り、最前線に向かった。
だが大国はあっという間に国境を越え、小国の首都に迫ってきている。小国を支援する国からは次々に武器などの救援物資が届くが地力の差が出て、首都陥落は時間の問題となった。

小国の国民の命は次々と奪われ、連日メディアを通して死亡者数が世界に伝えられていた。
このニュースに小国の国民は涙した。大国の国民も小国を憂い、自国の抗えない現実に涙した。小国を支援する世界中の人たちも涙した。涙は世界中に広がった。
毎日、毎日、毎日世界中の人たちが涙を流した。毎日、毎日、毎日世界中の人たちが涙を流した。毎日、毎日、毎日世界中の人たちが涙を流した。
やがてその涙は川となり、海へと流れた。
悲しいニュースが伝えられる度、世界中の人たちが涙を流した。
やがて海の水かさは増し、大地を少しずつ覆っていった。
毎日、毎日、毎日世界中の人たちが涙を流した。
海の水かさは増し、やがて地球上のすべての大地を覆った。
領土がなくなり、境界もなくなった。人間の数は徐々に減っていき、やがて1人もいなくなった。
地球から争いごとが消えた。

ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪