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ペライチ小説~~幼馴染と遭遇

偶然の出会いに驚きは付きものだ。
小学校から高校まで一緒の学校に通っていた幼馴染が突然目の前に現れた。
人生でいうと何度も会っているのに一瞬誰か分からなかったということは相当動揺していたんだと思う。
確かに高校を卒業してから15年以上経ち、会うのも10年ぶりぐらい。
体の成長から声の変わり方までずっと見てきた相手なのに記憶を遡っても彼に辿り着くことができなかった。
「おっう」と挨拶というか咄嗟に出てしまった声で挨拶を交わし、何とか会話の入口に立つことはできた。お互い会っていなかった期間の報告を済ませ、会話の最初で聞くべきだったことを聞く。
 
「ここでなにしてんの?」
 
こことは、私の職場の近くで、ここを通ると駅から職場まで5分程時間を短縮できるため私は頻繁にここを通っている。
ただ誰かと会った記憶はなく、ましてや知り合いに会うなんて天文学的な確率だと思う。
聞こえていたと思うが続け様にもう一度聞いた。
 
「ここでなにしてんの?」
 
実はさぁ、と恥ずかしそうに話し始めた彼の表情は、小学生時代に映画を見る約束をしていたが寝坊して時間に遅れてきた時と変わらない表情だった。
 
「実はさぁ、明日この間知り合った相手とデートの約束してて、初デートだから前日に下見しておこうと思ってここに来たんだ」
 
30代も中盤になって前日にデートの下見をする彼を可愛く感じた。笑い過ぎない笑顔でこの回答に表情で応える。
人の恋路をこれほどまでに上手くいってほしいと願ったことはないだろう。
頑張れよと肩を叩いて別れた、ただあしたデートする相手とはきっと上手くいかないだろう。
ここは青山墓地。
初めてのデートで来る場所ではない。


ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪