見出し画像

ペライチ小説~ワールドカップで世界もボールもひとつ~

サッカーの世界最高峰の戦いが始まった。
各大陸予選を勝ち上がってきたチームが集まり一番強いサッカーチームを決める。
全世界が注目をする大会でオリンピックよりも視聴者数は多いと言われている。
 
しかし大問題が持ち上がった。
「ボールは1個しか使用を認めない」
SDGsの観点から環境に配慮し、1つのボールをみんなで使い分けようと話し合いで決まったらしい。
選手、監督、サポーターと様々なところから抗議の声は上がったが、スーツを着た決定権を持った人たちにこの声は届かず、その決定のまま開幕を迎えた。
 
ボールがピッチの外に出た際にはサポーターやボールボーイが協力してくれてすぐに試合を再開することができた。
 
それでも全32チームが参加しているこの大会、毎試合激しいボールの奪い合いが行われる。つまり試合を重ねるにつれてどんどんボールの元気がなくなり、決勝戦を迎えた頃には、ボールにはほぼ空気は入っておらず、元々ボールだったと言うことが言われれば分かるレベルのボールで決勝戦を迎えることになった。
 
主審の笛が吹かれワールドカップ最後の試合が始まった。
 
試合は一進一退、どちらも譲らない熱戦が続いている、というかぺチャンコのボールが今どこにあるのか、蹴っている最中の選手にしか分からない状態で試合は進んで行く。
 
監督もベンチから飛び出して何か指示を送っているが、もはやどんな指示を送ろうとも、そういうことではない攻防が続いている。
 
ボールが足に当たらず、世界最高峰プレイヤーたちが明らかにサッカーではない競技を決勝の舞台で繰り広げている。
 
試合は結局0-0で決着。PK戦の予定だったがボールが跡形もなく無くなってしまい試合続行は不可能になった。
試合後の表彰式。スーツを着た人たちが一丸となった選手、監督、サポーターからボールの様に丸くなるまで蹴られ続けていた。

ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪