見出し画像

ペライチ小説~卒業試験~

「久しぶり~」
昼食を食べに会社を出た所で突然そう声を掛けてきた男のことを僕は覚えていなかった。
男はきちんとした格好をしていたこともあり、自分よりも年上に見え、反射的に失礼があってはマズいと思い僕は覚えていないと言うことはできなかった。
『久しぶり~です~』
軽い口調で一言返しながら頭を下げ、男のことを下まで上までチラッと見渡したが、思い出すことはできない。
「会うのは5年ぶりぐらいかな~」
 
5年ぶり?男がヒントをくれたが一向に答えに辿り着けない。
5年ぶりということは今29歳だから社会人になってから会っているということだ。
 
『5年前に会ったのってどこでしたっけ?』
「アレは確か~、新宿の喫茶店じゃなかったっけ?」
 
新宿の喫茶店。
コレは大ヒント、ようやく目の前の男の全容を解明できる…とはいかない。
僕は仕事柄喫茶店に行くことは頻繁にあるが、それは1人で仕事をするためであって、誰かと店に入ることはない。
彼女とのデート中ちょっと空いてしまった時間を埋めるために入ることもあるけれど、男と2人で喫茶店、皆目見当がつかない。
 
『新宿の喫茶店行ったような気がします~』
適当に一言返すがダメだ、この事件は迷宮入り。初動捜査を誤ったせいでどんどん答えが遠のいていっている。
 
「よしのり君は元気してる?」
ん?よしのりの知り合い?よしのりとは僕の小学校からの幼馴染。よしのりも居る状態で会ったってこと?
少し考えたところで問題は解決した。
目の前にいる男は○○だ。
 
以上のヒントを基に○○に入る言葉を埋めなさい。
隣の机を見るとクラス内で秀才と一目置かれている男の解答欄はほとんど埋まっていた。

ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪