見出し画像

ペライチ小説~感動の手紙~

結婚式はいよいよ佳境。
教会で誓いの儀式を終えた新郎新婦が大広間に移動して披露宴が行われている。
高校時代のクラスメイトが30歳を記念して行われた同窓会で再会し、その後結婚に至った2人ということでテーブルにはかつての友人や先生たちが顔を赤らめて着座している。
2人の今の主戦場である職場の同僚たちも数人列席しているが、高校時代の友人たちに対しては控えめにテーブルを囲んでいた。
「それでは新婦よりご両親へ感謝の手紙をお願いします」
数多くの結婚式を取り仕切ってきたという女性の司会者が力強い声でアナウンスした。
列席者の女性たちの中には泣くことを予想して小さなバッグからハンカチを取り出す者もいる。
 
『お父さん、お母さん、きょうは結婚式に来てくれてありがとう。
この場に来るまで色んなことがあったね。本当に大切に育ててくれていたんだなと手紙を書く時にこれまでの人生を振り返ってみて強くそう感じました。20代半ばを過ぎた頃から早く結婚しろと言っていたお父さん。
ヒロ君を初めて実家に連れて行き挨拶をした後で、結婚には反対だとお父さんが言い出した時は本当に驚きました。あの時は私も感情的になってしまい口を利かない時間もあったね。ただお父さんが私たちのことを真剣に考えたからこそ、ああいう事を言ってくれたんだと今では感謝しています。あの時はごめんね、そしてありがとう』
 
会場からは鼻をすする音も聞こえてきている。
新婦がフゥ~と息を吐いて手紙の続きを読む。
 
『お父さんとの関係が上手くいかなくなった時、私を支えてくれたのはお母さんでした。お母さんは言葉足らずのお父さんの気持ちを私たちに伝えてくれ、お父さんのことも、お父さんとお母さんの夫婦の絆も、そして結婚の持つ意味も教えてもらいました。
本当に分からず屋の娘でお母さんには迷惑と心配をかけてごめんね、そしてありがとう』
 
男性の参列者の中にも涙を堪えている人もおり、ベテランの女性司会者もハンカチで目尻を抑えている。
 
ただ新婦の両親は娘のことをじっと見つめたまま、困惑の表情を浮かべていた。
顔にはそんなこっとあったっけ?という文字が張り付いている。
娘は手紙に目を落とし「ChatGPT」が作成した手紙の続きを読む。

ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪