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ペライチ小説~行けたら行くわ~

アイツとは小学校からの付き合いだから今年で知り合って約10年になる。
 
クラスが一緒になって、名前順で前と後ろだったことがキッカケで仲良くなった。
あいつはクラスでは明るく、ワイワイ盛り上がるタイプ。
俺もアイツと似ているところがあって、すぐに波長があった。クラスで人気のなかったアニメに2人ともがハマっていたことも要因の1つだったと今になって思い出す。
 
そんなアイツは放課後や休日になると、俺を含めて色んな友人から遊ぼうと誘われていた。そんなアイツが決まって言うセリフ。
「行けたら行くわ」
 
絶対に来ない奴のセリフだ。
行く可能性を匂わしているが、絶対に来ない奴のセリフだ。
クラスでは明るく元気なのに、放課後の誘いには乗ってこない。変わった奴だと感じているクラスメイトもいたが、いつしか皆気にならなくなるのがいつもの流れだった。小学校でも中学校でも高校でも。
 
そんなキャラクターのアイツと楽しく過ごしていた高校時代、俺は突然病気になった。
体調の悪い日が続き、病院に行った時にはもう手遅れだった。
医者は言いにくそうにしていたが、明らかに回復は見込めないことが言葉の端々と表情に出ていた。「なんで俺が」という気持ちは勿論あったが、誰かに当たって解決するわけではないことも分かっていた。悲しむ両親を見ると申し訳ない気持ちにもなった。
 
入院生活は半年に及んだ。
最初の頃はクラスメイトもお見舞いに来てくれていたが、徐々に来る人数は減っていった。
そんな中アイツは1人で病院に通い続けてくれた。
俺が死ぬ直前、最後に会話を交わした相手はアイツだった。
『さきに天国行って待ってるから、お前も来いよ』
『行けたら行くわ』
アイツはいつもの言葉を口にして、俺は永遠に目を閉じた。
 
そしてそれから数日後。
アイツは初めて自分の言った言葉を実行に移し、俺の元にやってきた。
 

ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪