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電波凸爺メモリー 第九話

第九話 チャットGDP

トトロが俺の家のドアを見つめている。

こんな不気味なトトロを見たのも、トトロ自体も頭に「不気味」とつく事は滅多にないであろう。

俺は1mmも触りたくもないので蹴っ飛ばしてやろうと思ったが、中になんか入ってたりしたら怖いし何より駿(宮崎)に悪い。

そして俺の気持ちが不気味から徐々に怒りに変わっていったのがわかった。

あのクソ野郎め。

なんのつもりか直接問いただしてやる!

俺は凸兄と化し、奴を凹爺にする気でいた。

その時大家からの電話が鳴る。
いつもより大きく声をだして電話に出る。

俺「あ!大家さん!?ちょうどよかったす!今家の前にトトロの人形が置いてあって、意味不明なので俺今から凸爺の家行きます!!」

大家「え?はい?トトロ?え?トトロ?や!あの1人でいかないで下さい!私も今マンション着いたので一緒に行きましょう!」

大家はまたも混乱していた。そりゃそうだ。

今度出てきたのはトトロだもの。

すぐ1階で大家と合流した。

大家には凸爺が謝りに来た経緯を簡単に話すと、大家も含め管理会社もまだ凸爺とは連絡が取れてないとの事で、何故急に謝ってきたのか不思議がっていた。

しかし問題があった事は間違いないので、大家も凸爺に今回の騒動の理由を聞きたいと言っていたので一緒に行く。

大家とエレベーターで4階へ。そして廊下を歩く。
マンション作りはほぼ一緒だが、全然違う廊下に感じた。
霧雨にもならない細かい雨と強い風が吹く。

ピンポーン

凸爺の部屋のインターホンを大家が押す。

少しの間を置いてインターホンから小さく声が聞こえてきた。

大家「すいませーん!大家の〇〇です!あのですね、今味沢さんも一緒で色々お話し聞かせてもらいたいんですが〜」

インターホンから小さく声が聞こえた、しかし強風でよく聞こえない。大家がインターホンに耳を近づけてかろうじて聞きとった。

ワイ「なんて言ってました?」

大家「着替えるからちょっと待っててくれと言ってましたね」

着替える?なんだそりゃ?
何から何に着替えるのよ?電波防御スーツにでも着替えんのかよ?と思ったが、とりあえず凸爺本人がいたのでよかった。

凸爺を待つ間大家と世間話をした。仕事は何してるのか?大家はどこに住んでるのか?
そんなたわいも無い話をした。

やがてリアルに5分位かかって凸爺が出てきた。さっきと同じ服だ。

凸爺「…どうも…」

玄関には靴や棚は一つもなく、上着掛けや小物の棚を設置してる俺の家と全然違って見えた。

ドアストッパーを凸爺がつけたので、少し玄関の中に入った形で話始める。
意外にも凸爺から話してきた。

凸爺「この度は本当に申し訳ありませんでした…。大家さんにもご迷惑をおかけしました」

マスクと強風の為聞き取り辛いが、至極真っ当な謝罪だった。しかし俺は騙されない。
こいつはイカレジジイだ。

凸爺に初めてあった大家が答える。

大家「初めまして大家の〇〇です。内容は味沢さんから聞きましたが、私としては夜中にドンドンしたり迷惑行為をするのは辞めてもらいたいんですよ。で、その低周波ってのは今もまだ鳴ってたりするんですか?私そう言う電波とかネットとかよくわからないんで…」

そう言うと凸爺は何故かキョトンとした顔をしてこう言った。

凸爺「あれ?大家さん。私さっき話しましたよね。勘違いだったと。大家さんも返事してましたよ」

ワイ&大家「はい?」

大家はさっき突撃する前に、世間話の中で凸爺にはまだ誰も連絡とれてない、私も会うのは初めてだと言った。なんならさっき、はじめまして〜との挨拶もしていた。

大家「え?あ、いえ!私は凸爺さんとはお話しさせてもらってないですね。と言うか今日初めてお会いしましたから」

早くも大家は混乱しそうな感じだった。
大家よこれが凸爺だ。見事なもんだろう。

凸爺「や…あの大家さんも味沢さんもさっきの同じ会話の中でお話しさせてもらったんですけど、全て私の勘違いだったんで、先程謝りに言ったんです」

ワイ&大家「同じ会話!?」

時より吹く強い風が凸爺の言葉を聞き取りにくくする。

大家「だからお話させてもらってないですって!」

大家は凸爺ワールドに飲み込まれそうになるが、俺は質問をした。

ワイ「さっきからその話ってのは一体何で話してるんですか?」

凸爺「…何って、それはチャットですよ」

ワイ&大家「チャット!?!?」

凸爺「はい。えぇ。皆さんも使ってるチャットですよ。チャット…チャットGDP」

ワイ&大家「チャットGDP!?!?」

つづく


#電波凸爺メモリー

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