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記憶力

大学の入学式の日に出会って以来、
途中15年以上の空白期がありながらも、
仲良くしている友人がいる。

先週、その友人から、
「学生のとき、いつも私たちがお昼ごはん
 食べてると、部屋に入ってくる、変な人
 いたでしょ?」
って唐突にLINEが来た。
そうだったかなあ・・・って思ったけど、
話してるうちに、突然その人のことを
思い出せてびっくりした。

お昼時間の食堂はすごく混んでて、
私たちは、ゼミ室と呼ばれる
小教室が並んでいる棟の特定の部屋に
集まってごはんを食べてた。
時間割の都合とか、ほかの友達との付き合いとかで
必ずしも同じメンバーが集まってるわけでもなく、
ゆるく5~6人くらいの人間がなんとなくいて、
そのなかの誰かはいつもそこにいる、
って感じだったので、特に約束してなくても
そこに行けば誰かに会えた。
でも誰も来なくても、まあいいか、みたいな。

LINEもSNSもない、
1990年代の女子大生はそんなふうに
過ごしていた。

でも、その教室に特定の曜日(おそらく火曜日)に
「ここ、私たちが使うから」
って来る2人組がいた。
私たちは、すいませんって言って
彼女達が来たら部屋を譲っていた。
この部屋じゃなくても、別の部屋使えばいいのに、
って確かに話してた気がする。

2人組のひとりは、眼鏡かけてて
常に大教室でも最前列の席に座ってる人で、
もうひとりは、その眼鏡の人に
引っ張られてる感じの
おっとりした大柄な女の子。
いつも長いスカートをはいていて、
もっさりしてるけど、人はよさそうな。
っていう私の脳裏に浮かんだ
2人組の特徴を言うと、ああその人たち!!って。

でも、大学卒業してもう30年近く
たってるのに、なぜ突然そんなことを
思い出したん?
って聞くと、今ならもうちょっと強く
言い返せたとふと思って、と。

ええええええ、いまさらすぎる、
どんだけ負けず嫌い。笑

でもそういうのを真剣に言い出す、
ちょっと不思議ちゃんなんやけど
私がその出来事を思い出せたことに
すごく喜んでくれた。

彼女は、入学式のあとのオリエンテーションで
どこに座っていいのかよくわからなった私に
「ここ、おいでよ」
って声をかけてくれた優しい子。
誰に対しても何に対しても
物おじしない、いつも堂々としてる、
すごくかっこいい子。

仲良くなれて、うれしかったけど、
仲良くなればなるほど、
東京のお金持ちの家に生まれて
親はエリートで、まっすぐ育って
それを当然のことと思って
堂々と生きてきたんや、
私とはまったく違う世界の人や、
って思い知らされた。

昔、林真理子さんの著作に、
東京で育った友達にあこがれつつも
ひけめを感じている地方出身の私、
みたいな小説を読んだときに
ああ、これだって思ったことがある。

そのタイトルを今もう思い出せないけど、
山内マリコさんの『あのこは貴族』を
読んだときに、私がタイトルを思い出せない
あの小説に似てる、って思った。

彼女は、在学中にも1年留学してたけど、
卒業後にもまた留学して、MBA取得して、
外資系の企業に就職して、
海外にしょっちゅう出張したり、
1年くらいの駐在をしたりしていた。

私は早々に結婚して子ども生んで
話もあわなくなるし、
だんだん疎遠になってしまった。
15年以上連絡をとってなかったけど、
50歳を前にして、
人間関係を整理しようと思ったときに、
ほとんどは切るほうやったけど、
またできれば仲良くしたい、
と唯一思って連絡をしたのが
彼女やった。

私からの連絡を、彼女はとても喜んでくれた。
今は自分の会社を作って
仕事がんばってるから
お金持ちになっちゃった、って笑ってた。
それがぜんぜん嫌みじゃなくて、
相変わらずすごい人、って思った。

どんな仕事をしているのか
説明はしてくれたけど
私には難しすぎて、私は彼女の仕事を
正確には知らないんやけど。

でも、二人で会うと、お金はあるほうが
払えばいいから、って全額出してくれる。
お金のことで気まずくなりたくないから、
貸し借りとか、おごるおごられるは
なるべくしない主義の私でも、
彼女が稼いでる額を聞いて以来、
おとなしくおごってもらっている。
素直にありがたい。

稼ぎすぎちゃってることを
あんまり人に知られたくないから、
友人関係もすごく狭くなってしまったそうだ。
お金はあってもなくても大変なんやなあって
お金のない私は思う。
でも、昔の自分を知っている人がいて
こうやって思い出を共有できるのは
うれしいみたい。

もともと生まれも育ちも全く違って、
価値観とか大切にしてるものも違うのに
でも今もこうやって仲良くできているのは
ありがたい。
似たような考えの友達もいいけど、
こんなふうに全く違う友達って
刺激的でいいもんだ。

ちなみに、彼女からすると、
私と話すことで
普通の人の感覚を確認しているらしい。




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