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福田村事件をやっと語る~映画を観て

昨年秋、ひょんなことで「福田村事件を語る会」に参加しました。
会場のカフェで皆で映画「福田村事件」を鑑賞して感想を語り合う会と思い、事前に福田村事件を調べて行きました。
Wikipediaによると、福田村事件は関東大震災の後、朝鮮の人が混乱に乗じて火をつけたり井戸に毒を入れたりしているという流言飛語が飛び交っている状況下で、香川から薬の行商で福田村を通りかかった一行15名がその方言から朝鮮人と間違われ虐殺された事件です。日本人が日本人を殺した事件として注目されたようです。

福田村の場所を知り驚きました。福田村は千葉県野田市、わたしの実家からすぐのところです。流山に20年以上住みましたが、事件のことを聞いたこともありませんでした。地元の小中学校に通いながら何も知らなかったなんて、隠された感が否めません。

「福田村事件を語る会」はわたしが勘違いしており、皆さん映画を事前に鑑賞してからの感想シェア会でした。メンバーおひとりがパンフレットを貸してくれ、聞くのを中心に参加しました。
差別思想、群集心理、今だってアイテムが入れ代わって存在している問題だなどのことばが飛び交い、最後に感想を求められ、根っこは教育じゃないかと話しました。

その後、映画を観なきゃと思っては忙しさにかまけて観れていないと「今日これから福田村事件を語る会に参加するのよ」「福田村事件を観ました」などと親しい人から聞いたり、年末にも義母が「福田村事件の本を勧めているYouTubeがあってね、日本人として映画も観なくちゃいけない気がするわ」と言います。やっぱり観に行こうと映画館を検索し計画していたら、義母が元旦にタブレットを持ってきて、「ポイントでダウンロードしたから観ていいわよ」と渡してくれました。

昨日の夜、イヤホンをしてひとりダイニングで映画「福田村事件」を鑑賞しました。

井浦新、田中麗奈、豊原功補、永山瑛太、東出昌大、水道橋博士、柄本明など豪華キャスト。
なりゆきがわかっているのでそれがいつ来るのかドキドキしながら観ました。丁寧に伏線が張られ、凄惨な事件が淡々と描かれたよい映画だったと思います。
当然ですが、語る会で聴いて想像していた映画の内容よりひとりひとりが加害者だとしても繊細に描かれていて考えさせられました。
被害者のやるせなさ、朝鮮人だから殺してもいいのかと問うたセリフの裏側に見える日本の身分社会のひずみ、口では理想論を述べながらも行動が異なる村長の本音、身体を張って助けず傍観することの罪に苦しむ姿などなど、日本に住んでいて無縁ではない感情がいくつもいくつも描かれていました。

観るのがつらくはあったけど、「日本人として観るべき」と義母が思ったのがわかる内容でした。
有事の時に人を支えるものは何だろう。映画の中でも朝鮮人を探し回り血祭りにあげる人々をいさめようとする人の多くは教育を受けた人でした。教育が視野を広げ人のおそれに手をさしべてくれるのは確かだと思いました。虐殺された行商団は部落の出で、心のよりどころにしていたのが同じ身分の人の間で共有していた希望を書き出した声明文のようなものでした。
事件そのものにインパクトがあるけれど、現代の日常生活でも見られる人の感情の標本を見た気がしました。

テレビ局でのPRは断られたという映画、クラウドファンディングで上映にこぎつけた映画、予想外に著名な俳優が手を挙げて参加してくれたという映画、日本人として観てよかったと思いました。

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