コトノハサエ

歳を重ねれば迷いはなくなるものだと思っていた。しかし、いくつになっても迷い続けることに…

コトノハサエ

歳を重ねれば迷いはなくなるものだと思っていた。しかし、いくつになっても迷い続けることに気づいた。そしてそれは、ちっとも恥ずかしいことじゃないってことにも。

マガジン

  • 足音

    いつのことだったろう、サエがこの街にあらわれたのは。

  • ハハの子離れ

    ひとり親のワタシと一人っ子のムスコの親離れ子離れ。 一人なのに葛藤は二人分。

  • 画面の向こう

    あの日から35年が立つ。 ステキな男子はたくさんいたのに、なんであの子のことを好きになっちゃったんだろう…

  • 【歌詞小説】あの日。あの場所。

    忙しなく走るワタシは、ふと足を止める。 この歌を最後に聴いたのは、いつだったろう。 次の瞬間、あの時あの場所にワタシは佇ずんでいる。

最近の記事

「シゴト、ヤメたいって言ったんだ」

「は?」  過去形? 「『やりたいことがあるんです』って、店長に伝えた」 「で?」 店長はどう言ったんだい? 「人事担当に伝えるって

    • 使えないお金

      「あ、これ」 ハンバーグが旨いと評判の店で 特大を平らげたムスコが 白い封筒を差し出す 「ん?何コレ?」  覗き込む。 「言ってたじゃん。  "働くようになったら、   何年かかってもいいから   月1,000円ずつでもいいから   学費の半分は返してね"   って。だからコレ、はい。」  「え?…でも足りてるの?   家賃ちゃんと払えてる?   ご飯ちゃんと食べてる?」  ふふん!  ヤツが鼻で笑う  「あげるって言ってるうちに   もらっといたら。  

      • 「そんなに思い詰めてると思わなかった」

        「毎晩、愚痴は聞いてはいたけど、  習い事とかボランティア始めたから、  それで気分転換できてるんだと思ってた…」 あの時 「ホントにこれでいいのか」って 思ったの そして ワタシしかいなかったキミに ピン!と伸びた背筋を 見せたかった 「オレのかあちゃん、かっこエエ!」 これが次の目標。

        • 『見切りつけずに、育ててくれてありがとう』

          『じいちゃんにあげて』 初任給で買ったというポロシャツが届いた。 届いた、と連絡を入れると 『あのさ…』 『ん?』 『別に何かあったワケでもないんだけどさ…』 『…うん…』 ゴクリと生唾を飲み込む。 『これまでオレに見切りつけんと  育ててくれてありがとう』  さっきまで 嬉しそうにシャツを羽織るチチに チョット(いや、かなり) 嫉妬したけど いまや このジジィさえ 可愛く見える

        「シゴト、ヤメたいって言ったんだ」

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        • 足音
          0本
        • ハハの子離れ
          22本
        • 画面の向こう
          2本
        • 【歌詞小説】あの日。あの場所。
          7本

        記事

          「こちらが当店一番人気の〇〇です」

          「オススメはどれですか?」 学生くささの抜けてない ひょろっとした店員に聞いてみた。 「あ、はい。」 まっすぐワタシを見て手を差し伸べる。 「お客さまの後ろにあります●●が 3番目に人気のある商品です。そして…こちらへどうぞ。」 ワタシをその先へ誘導する。 「こちらが2番目に人気の商品で△△です。それから…」 店先まで連れて行かれた。 「こちらが当店で一番人気の〇〇です」「こちら、中は□□でできておりまして………」 流暢な語りでもなく スカっと垢抜けてる風でもなく

          「こちらが当店一番人気の〇〇です」

          Happy Birthday

          『今日は、ワタシがイチバン大切に思っている日です。味わって過ごしたいと思います。 生まれてきてくれてありがとう。』 『ありがとうございます。 今年は環境が大きく変わった歳なので、今年も健やかに生きることを目標に生きたいと思います。』 キミは この世に存在してくれるだけでいい キミは ワタシがこの世にいた証だから

          「ムスコに『クソばばぁ』とか言われたりしなかった?」

          「うち、母子家庭だから…」 それだけは言っちゃいけない、って 思ってたんだろうな 聞いたことはないけど ヤツは そんなヤツだから

          「ムスコに『クソばばぁ』とか言われたりしなかった?」

          「おつかれさまです!」

          白シャツに 深緑のキャップとタイとエプロン 先輩に会釈するヤツの背中は イッパシの社会人だ なんだか鼻の奥がツンとする。 向かいに座るカップルや 隣でお茶を飲む女の子の輪郭が にじんで見える 涙の塩気が効いた抹茶あんみつ  『親の醍醐味』は苦くて甘かった

          「おつかれさまです!」

          「かぁさん、考え方バグってる。」

          大いに結構。 他人(ひと)に褒められ 他人(ひと)に羨ましがられ 他人(ひと)に評価され そんなジブンがギモンだったから そんなジブンが見本だと キミはきっと後悔するから ほめ言葉だと思っていいよね? マサカのご忠言? けどね こんなワタシになることできたのは キミがココにいるからなんだ。

          「かぁさん、考え方バグってる。」

          「早く覚えたいと思った」

          新入社員の事前研修として バイトのシフトに入ったムスコ オンラインのバイトしか知らないカレ リアルバイトは初 叩きのめされて帰ってくるであろう 胸が潰れる想いで 言葉を選びつつ聞く 「どうだった?」 I have to learn the job quickly. ではなくて I want to learn the job quickly. やるじゃないか ムスコ

          「早く覚えたいと思った」

          「7,000円?」

          「おかあさん、お仕事で1ヶ月に何円もらってると思う?」 5,000円はもらっていると思ったのだろう。 でも10,000円なんて大金はもらえないに違いない。 一年生にとって、10,000円は大金だ。 そんなカレも 今春 社会人一年生

          「お金、使い過ぎじゃない?」

          「今度の車検の時に車買い換えようかと思うのよ。」  →「その次の車検まで乗ろうよ」 「スマホ新しくしたら?就職決まったお祝いに。ついでにワタシもiPhoneに替えたいの」  →「オレは今のが使いやすいから」 「今のパソコン持ち運びしやすいけど、イマイチ使いづらいのよね。デスクトップ買おうかな」  →「それ、この間買ったばかりだろ?」 「かぁさん、最近お金、使い過ぎじゃない?」 キミを宿して決めた披露宴と 来月卒業のキミの学費。 桁違いだったけど 一ミリの後悔もない 無

          「お金、使い過ぎじゃない?」

          「そうだよ、考えてるよ」

          抽選に当たったと跳び上がって喜ぶ いとこにつきあって会場に向かう。 ムスコとそれほど歳の違わないア−ティストのコンサート。 最近の若い子のウタは 上手いんだか下手なんだか。      *** 酔い覚めやらぬイトコを横目に ムスコの横顔につぶやく。 「アンタたちって何思ってンのか、  わかんなかったんたけどさ…  いろいろ考えてんだね。  何も言わないから気付かなかったけど。」 久しぶりに視線が交わる。 「あぁ、オレたちだって考えてるよ、いろいろ」 見てたんだね。 ワ

          「そうだよ、考えてるよ」

          「もう一回受けてみる」

          「え?一度受けて落とされたんでしょ?」 「うん。でも説明会の時、 『当社の制作したものです』って、 見せてもらったカタログが すごくかっこよくてさ。 こんなの作りたい、って思ったんだ。 調べたらまだ募集かけてるから、 もう一回面接受けようと思って。」 「・・・」      ***   友人に聞いてみた。 「一度受けて落ちた会社の面接、もう一度申し込む?」 「ん~。そうですね~。  なんか気まずくて、私なら申し込みにくいかな…」 ―――だよね――― 「自分だったら落とされた

          「もう一回受けてみる」

          「初めて会ったときに言われたんだ」

          「最近、声大きくない?  まっすぐ見て話すようになったし」 「オレ、自分でも気づいてなくて。  初めて会ったときに『目見て話さないよね』って言われて。  だから人と話すとき、気を付けるようにしたんだ」 年頃になると 男の子ってこんなもんなんだと思ってた。 ワタシしかいないから ワタシが全部教えてやらないといけないんだって思ってた。 でも オヤは万能じゃない。 しかし オヤが完璧でなくても 世間がちゃんと教えてくれる。 世の中って捨てたもんじゃない。 「いい友達やな」

          「初めて会ったときに言われたんだ」

          「そんな、会ったことない人と話して大丈夫なんか?」

          いくつかのオンラインコミュニティに参加し zoomMTGをハシゴするワタシに ムスコが眉間のシワを見せつける。 ニヤリ。 「アンタがパソコンに向かって  毎晩はしゃいでた高校ンときのワタシの気持ち、  わかったやろ?」 プッッ‼ ムスコは吹き出す。 「あ~~オヤの親になった気分やわ~」 (⌒▽⌒)  

          「そんな、会ったことない人と話して大丈夫なんか?」