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ラノベ感想「30ページでループする。そして君を死の運命から救う。」

30ページという制約の中でループを繰り返し悲劇を回避するという小説ならではのループもの。
タイムリミットならぬページリミット・サスペンス。

多くの謎を残して物語は幕を閉じるのですが、その中でも最大の謎「怪物」は誰だったのかについて少し考察してみたいと思います。
最近は作家さんが自身のSNSで情報を発信されていたりしますが秋傘先生はTwitterをされていないようですし、あとがきもないので詳細は不明。
最初に言っておくと「こいつが怪物だ!」という結論はありません。
ただ僕の思いつきをダラダラ書き殴るだけになると思いますのでお暇な方だけお付き合いいただければと思います。

まず前提として考えないといけないのはこの謎は考察出来るのかどうか?
この一冊で完結しているのかシリーズものなのかというところ。
これに関しては続きが出ることを想定して書かれているのかを考えてみたいと思います。
まずはタイトルの巻数表記。
直近の電撃文庫の新シリーズのタイトルをざっと見たところ、タイトルに1巻と巻数が付いている作品は川原礫先生、榊一郎先生といったビッグネームの新作と86の外伝だけのようで、ほぼ1巻の表記はないようです。
1巻と書いてないからシリーズ化を想定していないわけではなさそうです。
次に巻末の次回予告。
最近の電撃文庫の作品だと「魔法少女ダービー」が2巻の予告があり物語が続くことが分かりました。
本作は予告どころかあとがきもないので詳細は不明。
確実な次巻の予定がないということは少なくとも作家さんとしては一冊で形になるものを書こうとされるのではないでしょうか。
つまり今作は次巻がないとしても単体で完結しているものとみることが出来そうです。

今作だけで考察は可能と仮定したところで次に考えないといけないのはこの謎に答えはあるのかどうか?
作中のヒントから推理出来るものなのか、そんなものはなくて不可能なのか。
お読みの通り怪物の正体について作中では明らかにされません。登場しただれかが怪物だったという事実だけがマキナボードによって示されます。
普通のミステリーならそれまでの登場人物の言動から推理し犯人を捜すわけですが、世の中には事件は解決しても犯人が不明のままというミステリーも少なくありません。
この場合極論犯人は誰でもいい、というパターンがあります。
作中で目立った人物でなくても計助が協力を仰いだ商店街の人達やトイボックスのホステスといった名前だけしか登場していない人物でも「作中に登場した人物」には違いないからです。
そしてその犯人の動機はなにか、どういう行動をしたのか、全てが謎のままでもその人物が犯人と言われればそういうことになる。
普通の人を装って狂人はあなたの身近にいるかもしれないというメッセージ性と共に使われたりしますね。
計助が街の人達の前では調査屋という仮面を被っていたように怪物も普段は普通の一般人という仮面を被っている、と考えるとテーマとしてもしっくりくる気がします。

もうひとつ怪物は特定不能だとする可能性としては計助自身も怪物の正体に思い当たっていないこと。
作中で犯人を明示しないけれど推理することは出来ると匂わせる文言としては探偵役の「途中から違和感はあった」「やはり思った通りだった」みたいなセリフがあります。
探偵役と同じものを見て来た読者もこれまでのヒントで同じ推理に行き着くことが出来ます、という意味ですね。
計助と私たち読者は同じものを見て来たわけですから計助が分からないものは私たちにもわからない、これが結構真実なんじゃないかなと思っています。



分からないと言っても怪物が作中に登場していることは間違いないので、では怪物の正体はいったい誰だったのか?

まず意外な犯人を考えてみると主人公というパターンがあります。
計助が二重人格で主人格が知らないうちに行動していた(あまり好まれないですね)。
計助が意図的に地の文やセリフで情報を伏せていた(いわゆる信頼出来ない語り手というやつですね)。
個人の意見ですがこのパターンだと最後でバラしてなんぼ。どうです驚いたでしょう? ってやるのが醍醐味なので伏せて隠したあげく考察してやっと辿り着くというのはないんじゃないかなと。

次にこれも王道のヒロインが犯人というパターン。
なにせ時湖は最後まで謎が多いヒロイン。可能性としてはあり得そうです。
始まりからしてなぜ六・十三の悪夢で計助を助けることが理想だったのか、なぜ沙羅が襲撃されることを知っていたのか、着ぐるみに残されたメッセージは誰にどうして塗り潰されているのか、数え上げればキリがありません。
動機としては最初から執着している計助のそばにいるため、とかでしょうか。

ただ一つ忘れていますね。
金山道楽によれば怪物は二千万円を寄付してよこす人物。とても主役の二人には無理そうです。
同時に、これは計助が道楽から聞いた話だけです。
一見怪物は財力のある人物と思えそうですがこれが道楽の嘘であればそうとは限りません。
ありえそうなのは道楽が怪物で計助に嘘を騙ったというパターン。
カネが全てで情に流されない道楽は真に頼れる仲間がいない怪物の人物像ともとれます。

財力のある人物となれば計助の雇い主である虎鉄やクラブの女主人揚羽も候補にあがりそうです。
特に虎鉄は言葉で相手を思い通りに操ろうとするところなんかは実に悪役っぽい。
怪物候補筆頭です。
ただ彼は揚羽と揉めている最中。揚羽の網に引っかかるような銃の取り引きなどするのか、そもそも銃くらい持っていそうというのが感想です。

最後に考えてみるのはそもそも怪物は単独犯なのか複数犯なのかということ。
複数犯というか、黒幕と実行犯ですね。
計助が戦っていた怪物は正真正銘のサイコで人を操り殺人や事件を実行させていた、実行犯は別にいたとすると時湖怪物説や虎鉄怪物説も通りそうです。
計助を襲った六・十三の悪夢。その内容は自爆テロだったそうですが、この事件は今回の事件と繋がりはないのか? というのは読んでいる間ずっと頭にあったことです。
計助がサーティー・ピリオドに招かれた時に聞こえた言葉、悲劇の遺児というのは過去との因縁を暗示しているように聞こえます。
もし怪物が他人を思い通りに操り悲劇を起こして楽しんでいるのだとしたら、六・十三の悪夢も怪物の仕業だったとなれば色々な因縁が繋がりそうです。


とくに身のない話を最後まで読んでくださった方ありがとうございました!

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