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『ハウス・オブ・グッチ』感想。

2022年1月19日(水)

吉祥寺オデヲンで、『ハウス・オブ・グッチ』。

約2時間40分の長尺で、「長く感じた」という感想もいくつか目にしていたのだが、自分はむしろ思ったよりも短く感じたくらい。それだけ引きこまれたし、面白く観たということだ。資産家一族の崩壊の様を、時系列を追って淡々と描いてはいるのだが、名優たちの個性を炸裂させた演技と、かつてよく聴いた70年代&80年代のポップ・ヒット(ドナ・サマー、ジョージ・マイケル、ブロンディ、ユーリズミックスなどなど)の使い方のうまさで、少しも飽きさせない。

ファッション界版『ゴッドファーザー』と言えそうな群像劇で、(『ゴッドファーザー』と言えばの)アル・パチーノはさすがの存在感。ジャレッド・レトのクセ強すぎな怪演はおかしみと哀しみを誘い(変幻自在マンの真骨頂。『モービウス』がますます楽しみ)、アダム・ドライバーは同じリドリー・スコット監督作『最後の決闘裁判』とは真逆のキャラながら前半と後半の演じ分けも上手く、やはり色気ある俳優だよなと改めて思った。が、なんといっても素晴らしいのはレディ・ガガだ。『アリー/スター誕生』のときはまだ、シンガーでありながら演技も上手というくらいの範疇だったが、今作では完全にホンモノの女優としてそこにおり、前半→中盤→後半と、表情のみならず体形でも変化を表わしている。愛情→野心→狂気。溌剌とした歩き姿から、落ちぶれ、くたびれた佇まいまで。単なる悪女じゃなく、脆さまでも繊細に表現していて、ああいう役なのに観ていて不思議と嫌な感じがしない、むしろ妙な共感すら誘う演技が見事だった。ガガ、役者としての成功という意味では軽くマドンナを追い越しちゃった印象だ。

それにしても、リドリー・スコット。悪ノリと言えなくもない部分も含め、これだけ作家性を発揮し続けるのもすごいし、84歳にしてコロナの時代がどうしたと言わんばかりの超パワフルな活躍っぷりも、いやぁホントにすごいですなぁ。


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