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WAY WAVE @Club Malcolm(20240506)

 アルバムとともに歩み出す、新たな旅路を祝す饗宴。

 17年間所属した事務所を離れてセルフプロデュースへ舵を切った、姉・杏奈と妹・優奈によるリアルソウルシスターズのWAY WAVEが、独立後初となるアルバム『JOURNEY』のリリースを決定。独立を発表した昨年9月の定期公演の特別編〈部員集会Special 2023〉(記事→「WAY WAVE w/ 仮谷せいら、脇田もなり、PARIS on the City! @GARRET udagawa(20230910)」)では「年末には配信アルバムをリリースしたい」と話していたが、事務所の偉大さをヒシヒシと感じながら、手探り状態でスタートしたというセルフプロデュースゆえ予想以上に時間を費やし、当初の予定より半年のディレイをもってようやくアルバム・リリースに漕ぎつけた。

 しかしながら、半年遅れた分、配信のみならずフィジカル・プロダクツとしてアルバムが完成したのは、ファンにとっては朗報だろう。そのアルバム・リリースに先駆け、いち早く『JOURNEY』を手に入れることが出来る〈NEWアルバム先行発売記念ライブ〉がゴールデンウィーク最終日に開催
(杏奈は「連休最後という一番“エモくなる”時間」に足を運んだファンへ感謝を述べつつ、その貴重な時間を「日曜日に『音のソノリティ』を観た後みたいな」と独特な比喩で表現。おそらく『サザエさん』を観ると翌日の学校や仕事が頭を過ぎって憂鬱になると同義だと思われるが、『音のソノリティ』を観ているということは、小池姉妹はその直前の『世界の果てまでイッテQ!』も観ているということが判明)。“令和女子 FUNK”を掲げたWAY WAVE第2章の門出となるライヴに、早速足を運んだ。会場は渋谷警察署宇田川交番前にあるClub Malcolm。開演前はWAY WAVEのステージには欠かせないトライアングルの一角、arincoがDJプレイでフロアに集うオーディエンスの鼓動を高めていった。

 これまではスライ&ザ・ファミリー・ストーン「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」が出囃子を兼ねた定番のイントロダクションだったが、セルフプロデュースに移行したこともあってか、アース・ウィンド&ファイア「セプテンバー」に衣替え。既にarincoがプレイしているステージに、チアフルにソウルシスターズが登場し、自ら初のセルフプロデュース・アルバムを祝す宴が幕を開けた。

 前半はarincoによるミックス・メドレーを軸に、後半はアルバム『JOURNEY』収録曲の全曲披露という構成。前後半を繋ぐ中盤には、新たに完成させた『JOURNEY』のリード曲ともいえる「流されていこう」のミュージック・ヴィデオを解禁前に観賞するコーナーも。リリース前のアルバム購入や解禁前にミュージック・ヴィデオ放映など、このフロアに駆け付けた観客のためにいち早く提供する心遣いが、ファンにとっては嬉しい限りだ。

 WAY WAVEの2人は、ミュージック・ヴィデオ放映の合間に着替えて、放映直後に新衣装で再登場。優奈の「“Y2K”って流行ってるの知ってますか?」と(Y2Kカルチャーを疾うに経験したと思われる世代が多く詰めかけたオーディエンスを前に)マウント発言から始まったMCでは、新衣装がY2Kリヴァイヴァルを意識したと説明。ボトムパンツはクラッシュデニム、ギャル感あふれるトップスという、カントリーからポップシーンへとのし上がったUS女性シンガーとか、カウボーイハットを被った安室奈美恵や浜崎あゆみあたりで見られたコスチュームは、恐れを知らないギャルイズムと埃も舞う荒野もタフに進んで見せるというような力強さも感じさせた。だが、優奈が「Y2Kは知ってるけど、それぞれの文字が何を意味するかは分からない」と語ると、オーディエンスからYやKの意味を説明されて「なるほどね」と頷き、冒頭のマウントを恥ずかしがる一方、それを聞いてもまだピンとこない杏奈という構図に。そのほかMCでは「(優奈が話した直後に、同じ内容をさも初めて言ったかのように話して)全然話を聞いていない!」と諭されたり、「(先行発売のアルバム購入特典の生写真10種類を)コンプリート出来るかな?」との煽りに「ひっでぇやり方!」と反応するも、すかさず優奈に「いや、セルフプロデュースだから!うちらが決めてるから!」とツッコまれる杏奈といった、相変わらずのとぼけた姉妹コントを発動。仲の良さと笑いを提供していた。

 arincoミックス・メドレーでは、キャメオの最大のヒットとなった1996年の「ワード・アップ!」のカヴァーを含む、ノリが良い楽曲をダンサブルなテイストで繋ぎ合わせ、早々にパーティ・モードへ突入。夏の爽快感が伝わる「SUMMER BREEZE」を皮切りに、JBマナーのファンキーなリズムを刻む唸るロック「2番目の女」、ホーンが映えるイントロから脂質の濃いファンクを歌い上げ、拳を突き上げるファンク・ロック「WAVY GIRL」、“プッチョヘンザップ”とフロアに促してヴォルテージを上昇させるラップ・ロック「最高の彼氏」など、WAY WAVEのヴァラエティに富む楽曲を、アッパーなグルーヴとキャッチーをキーワードにarincoが仕立て上げ、昂揚の渦を呼び起こしていく。

 MUSEMENTと小日向由衣それぞれのトリビュート作に提供し、アルバム『JOURNEY』のCD盤のみに収録されたarincoによるノンストップミックスにもセレクトされた「5時を過ぎたシンデレラ」「ドッペルゲンガー」という2曲の披露と、前述の「流されていこう」のミュージック・ヴィデオ観賞を終えると、後半に突入。新たなアレンジなども駆使したアルバム楽曲を存分に聴いてもらいたいということで、アルバム『JOURNEY』全曲を収録順に披露する展開は、まさに〈NEWアルバム先行発売記念ライブ〉の名に相応しい構成だ。

 絶対忘れるなから提供された「FREE MY SOUL」は、絶対忘れるなの客演ラップ・パートをエレクトロニックなアクセントを加えたインスト・パートへと装いを新たに。アルバムの冒頭に配され、勢いよくWAY WAVEの世界への扉を開くハイテンション・チューンは、ライヴステージでもオーディエンスの心を鷲摑みにするのにピッタリ。以降、コール&レスポンスとクラップを響かせ、リズミカルなホーンが鳴る「合コン三昧 Oh Year!」をはじめ、Pファンクなアプローチも醸し出す「断捨離FUNK」、ミュージック・ヴィデオも制作され、ダンスクラシックス/ディスコの世界へ一気に連れ去る(レイ・パーカー・ジュニア&レイディオ「パーティ・ナウ」あたりに通じる)イントロから駆け出す「流されていこう」と畳み掛けていく。アルバムの折り返しに配されたarincoによるインタールードもしっかり汲み入れながら、ラストの「僕らの旅」まで、さまざまな表情の楽曲を揃えたなかで、(ポンコツなMCを繰り広げていたとは思えない)リアルソウルシスターズならではのハーモニーと呼吸で、フロアを融点へといざなっていく。

 それにしても、「合コン三昧 Oh Year!」「断捨離FUNK」やスティールパン風のポコポコしたトロピカルな音色からチアフルなパッションへ移行する「貸切ジャングルジム」など、タイトルの独特のワードチョイスが面白いのも、WAY WAVEらしさ。アッパーなテンションのみならず、「友達終了のお知らせ」のようなセンチメンタルなソウル・チューンで聴かせたりと、押し引きもフレキシブル。arincoによるインタールードからシームレスに続く「September Wind」は、フレッシュな風とほんのりと夏の黄昏に触れたサマーエンドを彩るイーヴンキックなハウス・ダンサーだが、“セプテンバー”だけに、もしかしたらこの曲から出囃子の「セプテンバー」をインスピレーションしたのだろうか。

WAY WAVE NEW ALBUM『JOURNEY』

 「このアルバムの曲がいろいろな人に刺さって欲しい」と、さまざまな日常に寄り添う楽曲を届けていきたいという想いを、ファンへの感謝とともに伝えながら、まずは身近なファンに披露した100分のステージ。セルフプロデュースする苦悩とアルバム完成の達成感、眼前のファンの反応に喜びと安堵の微笑みを見せた後は、アンコールの「Looking For Woman」で音に乗り歌い踊る楽しさを全身で表現していた。

 旅を意味するタイトルを冠したアルバム『JOURNEY』を引っ提げて、新しい航路へと出発したWAY WAVE。自らの名に“道”を冠したシスターズが踏み出したJOURNEY=旅路には、どのような光景が待ち受けているのか。アルバムを耳にすれば、そのクオリティの高さと漲るエナジーに感化されるはず……そう願いながら、ライヴハウスの扉を抜け、喧騒に包まれた渋谷の街へとファンキーなリズムで歩き出したのだった。

◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 September (original by Earth, Wind & Fire)
~DJ arinco mix section~
02 SUMMER BREEZE
03 2番目の女
04 WAVY GIRL
05 最高の彼氏
06 Word Up! (original by Cameo)
07 マジカル恋愛体質
08 おどれないけどおどりたいの (original by ズクナシ)
09 焼酎Night
10 モノクロのキミ
~MC~(BGM: "Ain't No Stoppin' Us Now" by McFadden & Whitehead)
11 5時を過ぎたシンデレラ (original by MUSEMENT feat. WAY WAVE)(*J)
12 ドッペルゲンガー (original by 小日向由衣)(*J)
13 流されていこう(MUSIC VIDEO) 
14 FREE MY SOUL(album ver.) (*J)
15 合コン三昧 Oh Year! (*J)
16 断捨離FUNK (*J)
17 流されていこう (*J)
18 友達終了のお知らせ (*J)
19 interlude~arinco mix (*J)
20 September Wind (*J)
21 貸切ジャングルジム (*J)
22 Happy Birthday (*J)
23 僕らの旅 (*J) 
《ENCORE》
24 Looking For Woman

(*J): song from album "JOURNEY"

<MEMBERS>
WAY WAVE are:
小池杏奈(vo)
小池優奈(vo)

arinco(DJ)

WAY WAVE with arinco

◇◇◇
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