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詩、小説メモ、スケッチ

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詩や小説のメモなどの習作です。
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記事一覧

生きること、言葉、そしてAI(詩)

生きること、言葉、そしてAI(詩)

会議は進んでいった
すでに代役は決まっていた
替えは誰でもできる
誰も何も言わない

沈黙

そこにいた人のことを 誰も話さない
その話さないことの 不自然さ

先月と何も変わらない議事進行
大体は異論は出ず賛成多数で進む審議と確認事項
では特になにもないようなのでこれで会議は終わります
議長の一言でみな足早に席を立つのもいつもどおり

でもわずかに何かがゆがんでいた
その自然すぎる日常が 不自然

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アルパカでもいいじゃない(詩)

アルパカでもいいじゃない(詩)

黒目がちな目 まんまる
まつ毛 びっしり
その目の奥は 何を思うのか
何があっても  どこ吹く風

フワモコの毛 どこまでも モコモコ
前足 後足 
案外すんなりと長い
背も高い

食欲旺盛 
いつでもむしゃむしゃ 
口をモゴモゴ
食事が終わっても
口の端には一本の藁 咥えたまま咀嚼

いやな奴 いやなことあったら
首を横ざまにかまえ 
次の瞬間 唾を吐く
案外アグレッシブ

そしてまた なにもな

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「抱擁」

「抱擁」

愛してほしかった

愛してほしかったんだ

そう、愛してほしかったの

ただ、愛してほしかったの

その言葉だけがぽつりうかんできた

はっきりうかんできた

誰かに愛してほしかったのかもしれない

おかあさんやおとうさんや

目の前の誰かさんや

そのために これまでこんな風に 
生きてきちゃったんだ わたし

でも ほんとうは

わたし自身に愛してほしかったんだ 

 いまやっと 届いた

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過去との再会(小説メモ)

過去との再会(小説メモ)

送られてきた本を、少しだけ読んだ。
一番最初のページに、「謹呈」という文字と彼の名前が書かれた白い紙が挟んであった。

実家からその封書が転送されてきたとき、大手出版社の名前が入っていたので、すぐに書籍だとわかった。
そのまま捨ててしまおうかという想いもあった。
しかし、本好きの性で、まるきり新しいハードカバーの本をいきなりゴミ箱に捨てることなんてできなかった。
あれからもう20年弱経過しているの

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愛は愛であり、説明する必要のないもの。

愛は愛であり、説明する必要のないもの。

「愛は愛であり、説明する必要のないものです。愛は呼吸と同じように、自然にあなたの人生に表われています。あなたの全存在と態度に反映しています。真のあなた自身です。あなたの中の私です。愛は完全に自由です。愛を閉じ込めることはできません。もし閉じ込めることができたら、それは神の愛とは言えません。それは人生のストレスや苦しみに耐えることのできない人間の所有愛にすぎません。神の愛は制限がありません。あらゆる

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「眼」

眼が欲しい

作家の眼
詩人の眼
画家の眼

詩:「夏至の前」

詩:「夏至の前」

わたしがムーミンママではない理由

ムーミンママは論文を書かない

ムーミンママは四十肩をさすりながら黒板に板書を書いたりしない

ムーミンママはセックスレスについて検索しない

ムーミンママは叱らない子育ての本を買ったりしない

ムーミンママが編み物をしているとき
わたしはすきま時間に俳句を作る

ムーミンママが皿洗いしているとき
わたしは食洗器を回しながら 子供と風呂に入る

ムーミンママは 

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孤高の人

孤高の人

豪奢なオペラ座

舞台の上でライトを浴びて輝いている、一人のダンサー。

輝きの頂点で、少しずつ内包していたものが、兆してくる。

複雑で繊細な、内に抱えているものが崩れていく。

表面はとても順調で輝かしい。

太陽の王のように、一点のくもりもない完璧さ。

一つ一つが完璧で、破格で、前代未聞だった。

才能豊かな問題児。

彼が皆の前で踊れば踊るほど、歓声と狂喜、陶酔が、美しい星空のとばりのよ

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恋

ずっとずっと片思い

一生片思い

別の人と一緒になっても

あなたは永遠の人

あなたと同じ夢がみたい

あなたの産み落とした世界を覗き込み くらり めまいのなかに落ちる

一つの完成形

どうやったら、どうやって

あなたの見つめている世界を知りたい

同じ世界を見たい

遠い遠い憧れをずっと追い続ける

あなたの視線の先

どこまで深く

「あなたが思っているより
ずっと 退屈な人間だよ」

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キラキラ

揺れることを許して

自分がしたいように 

シャンパンの気泡のようにこまやか

ほんのり漂ってくるパヒュームの香り

内から沸き立ってくる

恋する感覚 ときめく感覚

ほんのりした香りのまま

ケーキに飾るうすい金箔みたいに微かな

きらめき

A氏のオマージュ(短編ネタメモ)

A氏のオマージュ(短編ネタメモ)

己のことを小説に書き始めた彼のことを、周囲は彼の文学の敗北、挫折ととらえた。しかし、彼自身はそう思っていなかった。

 文壇から高く評価され、短編の名手とさえ呼ばれた彼には、もう何も残っていないのを自分では知っていたから。

 当時文壇の大御所であった大作家から、処女作が高く評価され、デビュー。華々しいデビュー。作家として知れわたった彼の名。

 しかし、いつしか、寄木細工を作り上げるように精緻な

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