『夢十夜 第一夜』を読む。考察、感想③

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 夢十夜 第一夜 第三弾です。前回は女性が亡くなったところで終わっています。今回はその続きから。出典は変わらず、夏目漱石 夢十夜 (aozora.gr.jp) さん。

自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きな滑らかな縁の鋭するどい貝であった。

 約束していたことをやり始めましたね。まずは穴を掘るところから。でも真珠貝ってそんな家に普通にあるものなんだ。買ってくるとかではなく?飾り物なのか、何なのか。もしかしたら二人の間で真珠貝といえば、”あの”真珠貝という共通の何かがあったのかもしれませんね。

土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿しめった土の匂においもした。

  月の光の描写と、匂いの描写で、作業の生々しさをここまで描けるの、すごいと思う。たった一行で臨場感が生まれる。

穴はしばらくして掘れた。

 掘れたの!?!?!?!?!?!?すごくない?かなり重労働じゃない?貝殻で人一人が入れる大きさの穴掘るの。かなり土が柔らかくないときついし柔らかくてもきついよ。H×Hの念能力使った?

女をその中に入れた。

 これ女を運ぶのも割と重労働な気がする。いや当時の成人男性がムキムキだった説あるけど。すげえや。

そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。

 そして土をかけると。真珠貝の裏に月の光が差す描写、いいですね。動きが想像しやすい。

それから星の破片(かけ)の落ちたのを拾って来て、かるく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちている間に、角が取れて滑なめらかになったんだろうと思った。抱き上げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し暖くなった。

 約束の二つ目。星の破片(かけ)。真珠貝と星の破片、やはりお洒落すぎる。埋葬して少し心の整理がついたのか、胸と手が少し暖かくなっていますね。

自分は苔の上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石を眺めていた。そのうちに、女の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちて行った。一つと自分は勘定かんじょうした。
 しばらくするとまた唐紅からくれないの天道てんとうがのそりと上のぼって来た。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定した。

 約束の三つ目。あとは百年待つだけ。百年。あまりにも長いですね。待つという行為は、時間がなかなか過ぎない行為であり、本当に長く感じる気がする。とにかく赤い、紅い陽が、彼女の言ったように昇っては沈む。

自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り越して行った。それでも百年がまだ来ない。しまいには、苔の生えた丸い石を眺めて、自分は女に欺されたのではなかろうかと思い出した。

 やっぱり、待つという行為は苦痛で、何回数えても、何回数えても、百年は来ない。大体365日×100年なんて、Dr.Stoneの千空でもないのに、数えられるわけがない。墓石にも苔が生えはじめて、女を疑い始める。

すると石の下から斜に自分の方へ向いて青い茎が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺らぐ茎の頂に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁(はなびら)を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹(こた)えるほど匂った。

 なんか百合の花がにょきにょき生えてきましたね。そしてつぼみが開いて、鼻の先に徹えるほどの匂いが。

………なんかエッチじゃない???だって女性の象徴が花で、そのつぼみが’ふっくら’と開いて、徹えるほどの匂いって。えっちっち。

そこへ遥の上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。

 ほら!!!!露って!!!やっぱえっち!!!!

自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁(はなびら)に接吻した。

 ……えっち禁止!!!エモ!!!!!いやエッチだったことに変わりはないんだろうけど。でもこの接吻はなんかエッチじゃなくて、どっちかってとえもって感じだな。

自分が百合から顔を離す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。

 …綺麗だ。いいですね。今までは陽が沈んで昇ってることしか興味なかったけど、他のところにまで目が行って、結果として彼女?を見つけることができた。

「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。(完)

 いいですね、この結びも。来ない来ないと思っていた100年は、彼女は、気づけばもう来ていた。

 これ、どうなんでしょうね。逢いに来るって言ってくれてたから、少なくとも百合は彼女で、そのあとの暁の星も彼女なんだろうか。”たった一つ”っていう描写に、自分と彼女の訣別を感じる気もするし、いつでも隣は空いていますよ、という意味にも取れる気もする。

 ということで夢十夜 第一夜でした。久々に読みましたけどやっぱり切なくて、空気がひんやりしていて、いい話ですね。特に季節の描写とかないけど、絶対に暑くはなさそう。(あれ、明けの明星って見れる時期決まってたっけ→一応1月から9月らしい。逆に秋じゃないんだじゃあこれ。)

 夢十夜、読み直すとき、一夜から読み直して途中で離脱しがち。なので1話は割と覚えてたかも。楽しかったです。

 追々二夜もやると思うんですが、次何やるかは不明。ごんぎつねとかやりたい。

 以上、夢十夜 第一夜でした!お読みいただきありがとうございました!

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