見出し画像

第79期名人戦第1局大盤解説会レポ その3

2日目大盤解説会開始

2日目の大盤解説会場は、前日より参加者の出足が明らかに早かった。第1局の決着を前にした参加者の盛り上がりと熱気を感じた。

午後2時。2日目の大盤解説会が始まった。最初に登壇したのは前日と同じく野月八段と安食女流。野月八段はコンサカラーの赤いネクタイとチーフに赤い靴。安食女流は淡いチェックのスカートに明るいグレーのジャケットを合わせた春らしい装いだった。

野月八段の丁寧かつ理論的なわかりやすい解説と、安食女流の柔らかくほんわかした聞き手とのやり取りが、聞いていて心地よかった。

形勢は渡辺名人がやや有利と見られており、時間も多く残していた。

アフタヌーンティーと髙見七段再び

解説が休憩に入った午後3時。私は友人と椿山荘のロビーラウンジ「ル・ジャルダン」に向かった。

佐藤天彦九段がお好きだろうなと思わせる、ヨーロッパ風の家具や調度品が置かれたラウンジ。一面のガラス張りの窓から椿山荘の庭を一望できる最高のロケーション。三段のスタンドに盛り付けられた見た目も味も絶品のスイーツと料理。香り高くバラエティに富んだ紅茶。スタッフのつかず離れずの心地良いサービス。私は視覚、味覚、嗅覚を総動員してアフタヌーンティーを楽しんだ。

画像1

約1時間30分後。料理を食べ終え、最後にもう一杯紅茶をオーダーするか悩んでいた時に、ツイッターのフォロワーさんから「髙見先生が大盤解説会に登場したようです」とのリプライが来た。友人に会計の立て替えを頼み、急いで大盤解説会場に戻ると、ちょうどダブル解説の野月八段と髙見七段の記念撮影タイムが終わり、解説が始まるところだった。

私はフォロワーさんと友人の優しさに感謝しつつ、野月八段と髙見七段の軽快な解説に聞き入った。

野月八段と髙見七段のダブル解説

野月八段と髙見七段は、子供将棋スクールの元先生と生徒の間柄である。

野月八段は、髙見七段の顔をまじまじと見ながら「ABEMAトーナメントのチーム藤井の動画見たけど、髙見さん立派になったねえ」と言い、参加者の爆笑を誘った。「小学生の頃から知っているものですからね」と言う野月八段に、髙見七段が少し複雑な表情をして「久しぶりに先生みありますね」と絶妙な返しをした。

野月八段の「小さい頃はいい子だったんですよ」を受けて、髙見七段が目線を会場に向けて「いい子だったそうですよ」と笑い、息の合った掛け合いが繰り広げられた。

将棋は、千日手含みの局面を打開して端から仕掛けた斎藤八段に対し、渡辺名人が穴熊に組み替え、自陣を固めて細い攻めをつなげる得意の展開に持ち込み、優勢から勝勢に近い状況へと差を広げていた。斎藤八段は長考を繰り返し、残り時間の差も1時間以上開いていた。

休憩に入る直前に、髙見七段は斎藤八段の次の一手を、「妖しく指すならこの手」と、9段目に角を打ちつけて渡辺名人の攻めを受ける自陣角と予想したが、野月八段には意外だったようで「髙見くん、もし当たったら好きなものをあげるよ」「本当ですか?約束ですよ」というやり取りがあった。

髙見七段は、昨日と同様に、休憩時間中も会場後方に立ち、ABEMAのスタッフからスタッフジャンパーを借りて羽織り、「宣伝します」と写真撮影タイムを設けてくれた。

その最中、斎藤八段が髙見七段の予想した手を指した。「すごーい!」「さすがです」参加者から歓声が上がった。髙見七段は会場の裏手につながるドアを開けて「野月先生!旅行券くださーい!」と言っておどけてみせた。

髙見七段ならではのサービス精神満点の言動に、参加者は大喜びだった。

夕食休憩中の出来事

対局者の夕食休憩は午後6時から30分間。渡辺名人の手番で休憩に入り、次の一手問題が出題された。

次の一手解答用紙に早々と番号を書き込んで投票箱に入れ、私は一人で椿山荘の庭を散策しようと外に出た。

ライトアップされた幻想的な小道や新緑の木々を覆う雲海、池に架かる深紅の橋を写真に撮りながら歩いていると、雨粒が顔に当たった。夜の帷が降りてきた空に突然閃光が走り、雷鳴が轟いた。

もしかして、何かが起きる予兆なのだろうか。まさかね。そんなことを思いながら、ツイッターに庭の写真をアップし「何かが起きる予兆?」と書いてツイートを投稿した。

この後に、本当に何かが起こるなんて、想像もしていなかった。

#将棋 #名人戦 #大盤解説会 #渡辺明名人 #斎藤慎太郎八段 #椿山荘 #アフタヌーンティー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?