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第79期名人戦第1局大盤解説会レポ その1

将棋界の春

2年ぶりに、将棋界の春が椿山荘で始まった。

2021年2月26日、第79期A級順位戦最終局。A級1期目の斎藤慎太郎八段が、8勝1敗の好成績で渡辺明名人への挑戦を決めた。

昨年の第78期名人戦で豊島将之竜王名人(当時)を下して初の名人位に就き、三冠を保持する現棋界最強との呼び声が高い渡辺名人に、人気と実力を兼ね備えた若手俊英の斎藤八段が挑戦する第79期名人戦七番勝負は、将棋界で大きな話題になっていた。

斎藤八段は私の推し棋士の一人で、三度目のタイトル挑戦が名人戦という大舞台で実現するのは嬉しい限りだった。

コロナ禍と将棋界

2020年3月に出された新型コロナウィルスの感染拡大を避けるための緊急事態宣言により、遠距離の移動を伴う対局はすべて延期となった。将棋界に春を告げる名人戦の開始も、4月から6月に延期された。

2020年5月25日に全都道府県の緊急事態宣言が解除され、延期されていた対局やタイトル戦が再開された後も、タイトル戦の前夜祭、大盤解説会、将棋まつりなどのファン参加型の将棋イベントは軒並み中止され、棋士や女流棋士とファンが直接交流する機会はほぼなくなってしまった。例年なら全国各地を転戦するタイトル戦も、東西の将棋会館で行われることが増えた。

ホテル椿山荘東京

第79期名人戦七番勝負第1局は、幸いにも、2021年4月8日、9日の両日に、例年名人戦第1局が開催されているホテル椿山荘東京で行われることが決まった。

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椿山荘での名人戦前夜祭は、天井のシャンデリアがきらめく広々としたホールに、有名店の一流の料理や色とりどりのデザートが並ぶ豪華なものである。所属の東西を問わず参加する棋士や女流棋士が多く、将棋ファンにとってはなかなかお会いできない先生方と直接話ができる貴重な機会で、私の毎年の楽しみだった。

しかし、コロナ禍がおさまったとは言い難い状況の中、今年も、飲食を伴い密になりやすい前夜祭はもとより、大盤解説会の開催も難しいのではないかと思っていた。

せめて現地の空気だけでも味わいたいと思っていたところ、将棋好きの友人から、第1局2日目に当たる4月8日の午後3時から、椿山荘のアフタヌーンティーに行かないかと誘われた。私は渡りに船と快諾し、スケジュールを確保した。

名人戦第1局大盤解説会の開催決定

名人戦七番勝負の開幕が約1週間後に迫った3月30日。日本将棋連盟のホームページに、名人戦第1局大盤解説会開催のお知らせと、1日目、2日目それぞれの大盤解説会への参加申し込みフォームが掲載された。

私は予想外の展開に歓喜した。きっと直前まで日本将棋連盟、主催の毎日新聞社と朝日新聞社、会場の椿山荘など関係各所の方々が悩み、考え、工夫し調整してくれたのだろうと思い、感謝の気持ちでいっぱいになりながら、早速2日目の大盤解説会への参加を申し込んだ。

最推しが副立会人

翌日。私は、はたとあることに気がついた。

2日目の大盤解説会は午後2時開始である。副立会人の髙見泰地七段は解説の上手さに定評があり、ファンへのサービス精神にあふれる人気棋士で、挑戦者の斎藤八段とは同い年。おそらく大盤解説会に顔を出してくれるに違いない。

私が友人とアフタヌーンティーを楽しんでいる時間帯は、終局まで時間的余裕があり、いかにも副立会人が大盤解説会に出てきそうなタイミングではないか。

髙見七段は私の最推しである。コロナ禍で将棋イベントがことごとくなくなり、お会いしたのは1年以上前だ。現地まで行きながら顔を見られないのは悲しすぎる。一方で、念願だった椿山荘のアフタヌーンティーも諦めたくない。

ジレンマを解決する方法として、私は1日目の大盤解説会にも参加しようと思いついた。家庭の事情で午後5時半には会場を出なければならないが、髙見七段が大盤解説会に来るとすれば封じ手準備前の可能性が高い。1日目に髙見七段の解説を聞くことができれば、2日目のアフタヌーンティー中に髙見七段が再び大盤解説会に来たとしても仕方がないと割り切れる。

私のスケジュールはもろもろねじ込めばなんとかなる。なんとかする。

2日目のチケットは早々に完売していたが、幸いにも1日目はまだ余裕があり、私は無事にチケットを確保することができた。加えて、夫の協力を得て2日目は終局まで現地にいられることになった。

#将棋 #名人戦 #大盤解説会 #渡辺明名人 #斎藤慎太郎八段 #椿山荘

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