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沖縄のそこらへんの木でも紹介しておけ! 10種(7位、8位)モンパノキ、クサトベラ

7位 Heliotropium arboreum モンパノキ(ムラサキ科)

海岸から少し内側、日当たりのよいところに、モンパノキが生えています。

多肉質で大きい葉、豪快な樹形。インパクト大です。
今回、紹介する中で、もっとも目立つ木といってよいでしょう。
堂々とした風情が好まれ、リゾートホテルに植栽されることもあります。

葉は微毛に覆われ、全体として灰色がかってみえます。
南の島の植物なのに、ツヤツヤのワックス層は要らないのでしょうか。

ポイントは耐潮性(耐塩性)かもしれません。
浸透圧に勝って水を保てるなら、照葉でなくても生きていけそうです。
ムラサキ科のうち、Heliotropium属には、
 ・Heliotropium japonicum(スナビキソウ)
 ・Heliotropium curassavicum(アレチムラサキ)
など、塩に強い種が含まれます。

木を見つけたら葉に触れてみてください。
モンパは漢字で書くと紋羽。
紋羽はビロード、ベルベットの意味だそうです。
ある人は「ネル」と表現しました。
なでなで・・・、ネルのほうが近いような。
どんな感触かは現地を訪れた人だけのお楽しみです。

ヘリオトロピウム属ということで、念入りに嗅いだのですが、
香ると断言できるほどの強度はありませんでした。
ヒトの嗅覚はあまり鋭敏ではないです。
オオゴマダラ(沖縄県の蝶)なら「香るよ?」と言うかもしれません。

迫力あるモンパノキ
レンゲ(中華料理で使うスプーン)の形をした葉。
もしかして雨を集めて吸収できる?
繊毛がある
オオゴマダラ「ん? 香るよ」

8位 Scaevola taccada(S.frutescens)クサトベラ(クサトベラ科)

海岸で、足元を照葉が埋め尽くしていたらクサトベラです。

クサトベラは海岸でパイオニア・プランツ(先駆植物)を務めます。
海岸はフカフカの土がない厳しい場所ですが、日当たりだけは最高です。
砂浜の切り込み隊長はグンバイヒルガオ、
岩場の切り込み隊長はクサトベラに見えます。

周年、花をつけます。
グアムやサイパンに行ったことがある人は、
「ファン・フラワー」の英名で覚えているかもしれません。
花弁が片側に寄っている様子は扇のようです。

クサトベラの花を調べても、稼働中の葯は見つかりません。
探せど探せど、見つかるのは枯れた雄しべばかりです。
シンプルな「雄しべ先熟」ではないらしい。
クサトベラはどうやって受粉しているのでしょうか。

参考文献
Pollination ecology of the coastal pantropical hermaphroditic shrub Scaevola taccada (Goodeniaceae)
https://www.researchgate.net/publication/373490016

花が開く前、蕾のうちに葯を成熟させ、花粉を保管し、
受粉虫の背中にくる位置に突きだしてから再放出するようです。

キウイ農家は花粉を購入します。研究者も花粉を融通し合います。
しかし、植物自ら、花粉を保管するとは。

花が終わると、白い実が成ります。
鳥たちはこの実を食べにこないようです。
考えてみると、クサトベラに限らず、甘いはずのイチジク類や、黄色くて目立つはずのフクギの実も、沖縄では、ほぼ手つかずで落果していきます。
沖縄は、常態として実余りです。

沖縄にはヘビがいます。
暖かい南国では、ヘビは周年、活動できます。
ヘビにとって、鳥の卵やヒナは逃げることのない標的です。

「南の島は自然が豊かだから、鳥の天国に違いない」と出かけると、
「本土が天国だったのか?」と訝しがりながら帰宅することになります。
自然豊かは単純な話ではなさそうです。
(注:ヘビの研究者はヘビ天国と感じているかもしれません)

ともあれ、クサトベラは沖縄に限らず南の島にはふつうにあります。
南の島を訪れたときは再会を喜びましょう。

パイオニア・プランツの一つ、クサトベラ
フカフカの土がなくても
海岸を覆うように生えるクサトベラ
葉の表面にツヤがある。葉は外向きに丸まり、波がかかってもやりすごせそうに見える。
クサトベラの花と、花が散ったあと。
訪問中のアリのお目当ては蜜。
左:伸びようとする突起  中央:枯れた雄しべと突起  右:先端が膨らんだ突起
(クリックで拡大)
クサトベラの実


次号でランク内の樹種の紹介を終わります。
ではでは(^^)/

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