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第十四話 コレクター 1

絵画を購入し蒐集する人をコレクターと呼ぶのか、定義が曖昧だけれど、
千葉県に住むYさんが、個展を開くたびに一枚一枚と購入してサポートしてくださり、私にとってのコレクターだ。

Yさんは小さな出版社を経営し「学会新報」という医療機器関連の冊子の中で「絵の中のポエム」と表して1997年の春陽展に出品した「雨の運河」を元に詩を作ってくださった。

雨の運河

 雨が降っている
 どんよりした厚い雲間から
 降り続く雨
 空と河が一体となったグレイの世界だ
 もの憂げな心情から発する
 視線の向こうに見えるのは
 危うい棒線が交差する鉄橋
 鉄橋もまた雨にうたれて
 すでに溶解の気配さえ漂う
 時々轟音をたてて列車が通る
 川面にゆるゆると
 波動の渦がひろがっていく
 みずみずしい感性で
 見なれた日常の風景を
 叙情豊かに写している

現在80歳半ばくらいだろうか。独り住まいの家を離れるために、小さな作品のみ手元に残し、他の作品を送り返してくださった。ギャラリーURANOのウラノさんが「絵は購入者の倉庫に預けて保管されているようなもの」と言っていた。壁にかけていたであろう額の裏板の経年の傷みを、自分の痛みに感じる。
コレクターの期待を裏切らないような絵を描いてこれただろうか。


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