旅館『吉田屋』再興
忙しなく日々が過ぎ行き、もう年が明けて日が経つが、去年の暮れの話をしようと思う。
『吉田屋』再興に至るまで
移り住んだこの町に時は江戸時代から佇む旅館『吉田屋』がある。私の現在の住まいだ。
旅館として営業されていたのはもう何十年も前のことで、この町に住む70代以上の方々には馴染みのある料理旅館だったようだ。
なんの縁もゆかりもない私がここに移り住み窯を据え、作陶・子育てに勤しむなか、ある日シンと静まり返ったお屋敷の中で、ふと声を聞いた。
『あの頃は賑やかだったなぁ、寂しいなぁ。もう一度、人が寄ってほしいなぁ…』
私は霊感もないしスピリチュアルに浸かってもいないのでもちろん実際に声が聞こえてきたわけではない。
しかし、風格と威厳の残るかつて賑やかだったであろう屋敷の中で、大きなお座敷をひとりぽつんと眺めていたら、そんな声が聞こえてきたように感じたのだ。
もったいない精神の強い私は陶器を売って得たお金のほとんどを注ぎ込み、この旅館の復興を決意する。
2021年の秋晴れの気持ち良い日だった。
どうやら床下から腐りかけているらしい屋敷中央に位置する物置きを調理場に、
仏間をダイニングに、
下水に繋がっていないボットン便所をサニタリールーム兼シャワー室に、
そして二階にある大きな大きな布団部屋(押入れ)をベッドルームに、私は壮大な構想を練り始めた。
想像は容易くワクワクする。「容易い」こと、「わくわくする」ことは叶えることができるというのが私の持論だ。
ともかく年末に工事は完了し、無事消防署と保健所の審査も通り許可証を頂いて、『旅館』として復興できるまでに至った。
解体や改修の記録については別の記事で綴っているのでぜひ読んでいただきい。
『体験型宿泊旅館』へ
この『旅館』は『体験型宿泊』を名目に掲げ、江戸時代から建つ旅館への宿泊と様々な体験をセットでできるようにしたいと思っている。
体験内容の構想は主にこんな具合だ。
・陶器作り体験
・里山での暮らし(町内の方を招いての郷土料理づくりや山歩きなど)
・林業、農業体験(町内企業様)
・様々な分野の教室(Julia Moli委託先企業様)
・移住体験
私が住んでみて、楽しい!と感じた里山での暮らしは、町の方々が進んで経験させてくださったものばかり。
例えば五平餅づくり、味噌づくり、それから田植えに蕎麦打ちに畑の耕し方、種の蒔き方、山菜の採り方にそれらの料理の仕方。山の歩き方。川での遊び方。
提携先の企業様の中には、東京でご活躍されているフローリスト、予約困難なお料理教室の方やお菓子を作られている方、コーヒーのスペシャリストなどがいらっしゃる。
宿泊込みの教室を、出張で来てくださったらなぁ…なんて企んでいるのだ。
もうすでに快諾してくださっている方々もいらっしゃるのでとても頼もしく楽しみである。
水の綺麗なとても素敵な町なので、空き家の紹介も兼ねて移住体験にもいらして欲しい。田舎でも不便無くたくさん仕事ができるということも知ってもらいたい。
それから提携先のお菓子屋さんにお泊まり出張出店して頂きイートインができたりしてこの町の方々の「たまのたのしみ」になれたらなぁ…なんて妄想も。
夢は広がるばかり。
『プレオープン』開始
先ずは2024年5月まで"プレオープン"とし、友人・知人を招きその方々から貴重な御意見を頂きながら『素敵』な旅館を目指したい。
プレオープン第一弾のお客さまは、提携先ギャラリー兼カフェのオーナー率いる6名様。
この日は移住体験をして頂き、町の散策やお隣の割烹『ふじ吉』さんのお料理や、カフェオーナー様のパンに合わせて、郷土野菜や農園の果物を楽しんだ。
前置きが長くなったが、今回はその様子を綴りたい。
チェックインは午後。
夜は「ふじ吉」さんのオードブルを注文し、朝食と昼はキッチンで調理したものを召し上がって頂いた。
昼のメニューは、
・cafe shuro のフオッカッチャ
・郷土野菜が入ったニイミ家特製スパイスカレー
・木の実の土鍋ご飯
・上矢作産いちご食べ比べ
・地元で採れたキウイフルーツ
夜はベッドルームとお座敷に分かれて眠って頂いた。
ちなみに全室利用しての最大人数は18名様となる。
例えば講師さまと生徒さまならば、廊下でも会うことのないしっかり区切られた別の部屋で休むことができ、その場合は講師側が最大6名、生徒様は最大12名のご利用が可能。階段を新たに設ける5月以降のことである。
最後に
『江戸時代から建つ建物』とはいえ、これまでたくさん手を掛けられてきたお屋敷なのでその部分を眺めることのできる場所は実際にはそう多くはない。
だけどこの改修で一部解体した部屋からはその時代を感じることの出来る壁や梁が顕になり、それがおもしろい魅せ場になった。
そして「手を掛け続けてあげればこういう造りの家はこの先もずっと建ってる」とは大工さんの言葉。
江戸、明治、大正、昭和、平成に令和と続く改修の痕も時代を感じられて見応えがあるし、その時代の人々に大事に守られて来た証なのかもしれない。
このお屋敷に来て頂いた時はぜひその痕を見つけて頂きたい。
御予約体型や宿泊料金についてはオープン準備が整い次第、改めて公開させて頂きます。
『行きたーい!って思って頂けるかな… ドキドキ。 準備頑張ります!
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