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観光地のゴミ問題 解決へ!社会の難題に挑むGo!MEプロジェクト

観光地でゴミが落ちているのを見て、残念な気分になった経験はありませんか?海外からは「キレイな国」と見られることが多い日本ですが、実は観光地におけるゴミのポイ捨てやその処理費用は、長年の課題になっているんです。
JTBでは以前からこの問題に向き合ってきましたが、いま、新しい発想で改めてゴミ問題に挑むプロジェクトがあります。その名も「Go!ME(ゴーミー)」
今回はこのプロジェクトを立ち上げ推進している社員に、インタビューしてみました。

高橋 佑基(たかはし ゆうき)
入社以来、埼玉で法人営業を担当。社内新規事業公募制度「JUMP!!!」での受賞をきっかけに現在の部署へ異動し、Go!MEの推進リーダーとして、エリア事業開発に従事。趣味はキャンプ。
石原 隆之介(いしはら りゅうのすけ)
入社以来、大阪で法人営業を担当。2022年より、現部署に異動。観光ICT領域の事業開発を担当しながら、Go!ME推進プロジェクトにも携わる。

ゴミ問題に悩み続けている日本の観光地

―― Go!MEが生まれた背景を教えてください。

高橋:
日本の観光地において、ゴミのポイ捨てはずいぶん前から解決できずにいる問題です。ここ最近のインバウンドの活況を見ていると、これからさらに大きな問題になっていくかもしれません。原因のひとつとして考えられるのは「ゴミ箱の少なさ」です。観光庁のアンケートによると、「外国人旅行者が、訪日旅行中に困ったこと」の第1位(23.4%)がまさに「ゴミ箱が少ない」だったとか。
でもこれって外国人に限ったことではなくて、私自身、国内で観光中のお客様がコンビニや道端にゴミを放置するケースを何度も目にしてきているんですよね。そこでゴミ問題に対する解決策として、ゴミ箱を適切に設置することからスタートできないか・・・と企画したのが、この「Go!ME」です。

平日も人々でにぎわっている川越一番街商店街(埼玉県)観光中に出たゴミはどうしているのか―

そもそもこの問題は、単にゴミ箱の数を増やせばよいという話ではないんです。観光客の方が持ち込んでくるゴミの処理費用って、実は現地の観光事業者や自治体が負担しているんですね。そのため、ゴミが増えるとそのぶん、自治体の費用負担も大きくなってしまうという問題が発生します。
そこで、観光客の方が出したゴミの処理費用の一部を、ご自身で負担してもらうことで、これを解決できないかと考えました。いまは「旅行者がゴミを持ち帰る」という方法しかありませんが、お客様に「お金を払ってゴミを処分してもらう」という新しい提案ができればと。

このアイデアをを事業化すべく、私はJTBグループの新規事業公募制度「JUMP!!!」へ応募。いくつかの審査を通過し、プロジェクトが動き出しました。
ちなみにGo!MEとは「ゴミ」をもじった名前ですが、ゴミ問題を解決しなければすべて環境に=ME=自分に還ってくるという意味も込められています。

観光地のゴミ問題の応援は、景観を守ることにつながる。

―― 「処理にお金を払ってもらう」のは、簡単ではなさそうですね。

石原:私は途中からこのプロジェクトに参加したのですが、最初は「観光客に、この価値観を受け入れてもらえるか」という点でハードルの高さを感じました。もちろん社会的に意義のある事業だとは思ったんですけど、そのときはまだ「ゴミを有料で捨てる」という文化をなじませる自信がなかった。一方で「交流創造事業」に取り組むJTBだからこそ率先してやらなければいけないし、地球にとって必要不可欠な挑戦でもある。ある意味ワクワクしたことを覚えています。

高橋:いまは事業化に向けた実証実験を行っています。仕組みは簡単で、Go!ME専用のゴミ箱を観光地に設置するだけ。Go!MEの趣旨に共感したお客様が、ゴミ箱に掲示された二次元コードから、既定の金額を「応援金」という形でキャッシュレス決済するシステムです。ゴミ箱にはGo!MEの趣旨や協力方法など、お客様への案内も分かりやすく記載しました。

―― なにか工夫した点はありますか?

石原:そうですね。まず大事なのが、Go!ME専用ゴミ箱の存在に気づいてもらうことです。実は最初のゴミ箱は、何の特徴もない銀色のスチールの箱にポスターを貼り付けただけのものだったのですが、ほとんど気づかれなかったんです・・・。関心を持ってもらわないと、どんなに自分たちが良い取り組みだと思ってやっていても、お客様には届かないのだと痛感しました。

高橋:そこでデザインの専門学校にご協力いただき、「ゴミ箱デザインコンテスト」を実施しました。「見える、気づく、立ち止まる」といったキーワードで、どうやってゴミ箱の前でお客様に足を留めていただくか。私たちも審査をさせていただいたのですが、発見がたくさんありました。

川越一番街商店街に設置された「Go!ME」専用ゴミ箱(二代目/名古屋モード学園の学生さん達によるデザイン)。利用料金(応援金)は1回100円。

石原:できるだけ目立つデザインがいいなとは思っていましたが、観光地の雰囲気は大切にしたい。景観条例があるエリアでは制限も出てきてしまいます。そういう意味で難しい審査でしたね。グランプリにはご当地感のあるとても素敵な作品が選ばれたのですが、ピクトグラムを使っているので外国人の方にも分かりやすいのではと期待しています。
この新しいデザインのゴミ箱のおかげで、ようやく足を留めてもらえるようになりました。

―― やっぱりデザインも大切なのですね、手ごたえはどうですか?

高橋:ありがたいことに、各設置協力店の皆様からも評価いただいています。ポジティブなお声をいただけるとやはりうれしいですね。
でもこのゴミ箱を通じてお客様へ本当に伝えたいメッセージは、Go!MEという取り組み自体の価値や意義です。「皆さんの応援金がゴミ処理費用になる」ということはもちろんですが、結果として目の前の景色や環境の美しさを守ることにもつながっている。そういうことをきちんと伝えたい。
そうすることで、むしろ「応援したい(お金を出したい)」という思いにもつながるんじゃないかと思うんです。

変化したゴミへの意識、そこで芽生えた交流。

―― 具体的な事例を教えてください。

高橋:埼玉県の川越一番街商店街では、すでに200人の方に応援金を支払っていただきました。また群馬県の谷川岳ロープウェイでの実証実験では、現地からの要望を受け、予定していた期間を延長して設置を続けています。ゴミの分別が促進されたことで、ゴミの総量が減ったという報告もありました。

石原:私は実証実験のなかで、地域や観光施設からの期待はもちろん、世の中の関心の高さも感じています。というのも、最初は想像もしていませんでしたが、意外と「有料でゴミを捨てる」ということをポジティブに捉えてくださる方がいたんですね。特に若い方が多い印象です。いまは小学校からSDGsなどを学ぶ機会があるそうなので、その影響かもしれません。そんな次世代の方々と一緒に、観光地の未来を創っていきたいです。

「Go!ME」専用ゴミ箱を設置いただいた亀屋さんにて。

高橋:また、これはゴミ箱を置かせていただいた店舗の方から聞いた話ですが、ゴミ箱を見た方からGo!MEについて質問されることがあり、それをきっかけに接客以上の会話が生まれることもあるそうです。私たちの取り組みが交流のきっかけになる、これはうれしい驚きでしたね。
また、実はこのゴミ箱に貼ってある二次元バーコードからは、お客様が応援メッセージを送ることもできるんです。「店員さんの対応、とても温かかったです。 また買いに行きます」「親切に教えてくださり、ありがとうございました!」といった声を、各お店へフィードバックして、喜んでいただいています。

石原:Go!MEをきっかけに、そして新たなつながりによって、観光客の方のその地域への愛着も高まっている気がします。人流による物理的な交流だけではなく、心の交流も創造していくのがJTBの使命だと思っています。

さらなる広がりを目指して。

―― 最後に、今後の展望を聞かせてください。

Go!MEの挑戦はまだはじまったばかり、今後にご期待ください!

高橋:そうですね。これからこの取り組みを全国の観光地へ広げていきたいと考えています。そのためには単なる横展開ではなくて、社会やそれぞれの地域の課題に向き合い、お客様が感じる本質的な価値やニーズの理解が大切だと思っています。
Go!MEをきっかけに、「普段からゴミを出さない」という意識や行動の変化につなげ、最終的には美しい観光地を保ち続けられる仕組みを確立して、海外へも挑戦したい。その先にはSDGsの2030年ゴールも見据えています。

石原:この挑戦は現在進行形ですが、「人流の中で出たゴミに対しJTBが責任を持つ」ことに真摯に向き合いたい。そして全国、やがては全世界へしっかりと広げていきたいです。また、おこがましいかもしれませんが、社内の新規事業公募制度から生まれたこの「GO!ME」を成功させることで、社会課題に向き合って挑戦する企業風土づくりにも貢献したいと考えています。そこから次のアイデアが生まれ、その芽が開花して、世の中やJTBの発展につながれば、こんなにうれしいことはありません。

―― 高橋さん、石原さん、ありがとうございました!

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