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詩人へのインタビューや往復書簡など。
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森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」: 最終回 コロスとコーラス、「炊飯器」、「A Freedom Song」、まだ歌われない歌

森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」: 最終回 コロスとコーラス、「炊飯器」、「A Freedom Song」、まだ歌われない歌

From M to Y

お返事を書かねば書かねばといっているうちに日本は10連休におよぶゴールデンウィークに突入してしまいました。例年では、左右をちらちらと見ながら「いっせいのせ」でないと休むこともできない、と人々が我が身を嘆く古典的で日本人らしい自虐を耳にし、私としてはその陳腐さに鼻白むことも多いのですが、今年は少し様子が違うようです。

ご存知の通り、5月1日から新しい天皇が即位し元号が変わ

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PIW 文月悠光インタビュー: Out on the Town but seriously

PIW 文月悠光インタビュー: Out on the Town but seriously

この記事は、Poetry International Webの文月悠光特集の一環として掲載した英文インタビューの和訳です。ただし英語から日本語に直したのは前半のエッセイ部分のみ。インタビュー部分はもともと日本語で交わしたものをPIWのために英訳しました。したがってここに掲載したものが原文ということになります。(上の写真は森野千聖さんの撮影)。



2009年に発表された文月悠光のデビュー詩集は

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森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」: 第14回  群読版ロレンス、 ストーリーとその解体、 ジョン・バーガー『G』、 時里二郎『名井島』、 自由と他者

森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」: 第14回  群読版ロレンス、 ストーリーとその解体、 ジョン・バーガー『G』、 時里二郎『名井島』、 自由と他者

from M to Y

昨年末は時間を作ってお会いいただき、ありがとうございました。横浜でのお茶会、楽しかったです。あの時は風邪を召されていましたが、今は回復なさったでしょうか? 四元さんとお会いする時はいつも緊張してしまってしどろもどろになってしまうのですが、私は『前立腺歌日記』の感想や、年明けに公演がおこなわれる「群読版ロレンス」の話などを拙くもお話ししたと記憶しています。そして、「群読版ロ

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森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 『詩と音楽と社会的現実と』:第13回 愛の決疑論、『さよなら、ロレンス』群読版リメイク、AIポエトリー、30年目のトロン

森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 『詩と音楽と社会的現実と』:第13回 愛の決疑論、『さよなら、ロレンス』群読版リメイク、AIポエトリー、30年目のトロン

from M to Y

こちらもお手紙をいただいてから1ヶ月以上経ってしまいました。私はその間に日本を離れていたわけではないのですが、雑事にかまけていると1ヶ月はあっという間ですね。

「往復書簡をやっている間は直接会わないほうが面白くなりそう」というのは私も同感です。会って話してしまうと書く話題がなくなってしまうから、という消極的な理由もありますが、なんというか、一方で書簡をやり取りしてい

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森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 『詩と音楽と社会的現実と』:第12回 映画「デイヴァイン・ディーバ」、早稲田大学セクハラ事件、前立腺と男性性、エロスと権力をめぐって

森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 『詩と音楽と社会的現実と』:第12回 映画「デイヴァイン・ディーバ」、早稲田大学セクハラ事件、前立腺と男性性、エロスと権力をめぐって

from M to Y

「野生」と「野性」の表記の違いに気づかず、お恥ずかしいかぎりです。レヴィ=ストロースの『野生の思考』を想起する私にとっては、「やせい」はどれもこれも「野生」と表記するのだと思っていました。調べてみたところ、森村誠一の小説は『野性の証明』だそうです。とはいえ、正直に言って両者のニュアンスの違いを私はよくわかっていないかもしれません。

学生には「あやふやに使っている単語

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トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐往復書簡 第七回

トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐往復書簡 第七回

四元さん、こんにちは。

また投げたボールが返ってきちゃいました、「頭で書くタイプの詩人」問題、飲みながら朝まで語れそうですね(笑)。

「頭で書く」詩は読んでいても不気味さに欠けて驚かされない、という四元さんの言葉で思い出したのが、ある作家の言葉だったと思いますが、(すみません、うろ覚えですが)「新しい文学があるのではない、新しい生理があるのである」

頭で考えていても、全く違う「生理体」には勝

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トルコ・ハルフェティ連詩を終えて: 三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第六回

トルコ・ハルフェティ連詩を終えて: 三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第六回

三宅さん、

「頭で書くタイプの詩人」問題、炸裂しましたね。

なんだか三宅さんに僕の詩の弁論陳述をやってもらったみたいな。

でも正直いうと、「頭で書く」のはやっぱりいけない、というか頭で書いた詩は書いていても面白くないし、読んでも不気味さに欠けて驚かされない、という思いはあるんです。三宅さんの言葉を借りると、システムの外に出ていけない。

「機智」や「奇想」がそのまま「頭で書く」ことに繋がって

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トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第五回

トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第五回

四元さん、

お返事ありがとうございます。

今回も色々考えさせられます。まずは、「頭で書くタイプ」の詩人について(笑)。四元さんの仰ったように、定型詩においてはそれは褒め言葉ではないですよね。俳句よりも短歌の方が嫌われるかもしれません。よく歌会などの批評で、歌のダメだしする時に、「これは観念的だ」とか、「頭で作っている」という決め台詞があります。そういう言葉が出るたびに、「また出たよ」と思ってし

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森山至貴 X 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」:第6回

森山至貴 X 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」:第6回

vol. 10 from M to Y:

四元さんからの手紙を読んで、日本語以外のアジアの言語での合唱曲(か歌曲)を書きたい、と一時期強く思っていたことを思い出しました。当たり前のことですが、日本の合唱曲は多くの場合日本語の合唱曲です。その次に多いのはラテン語か英語の合唱曲で、それ以外の言語で書かれた曲は数えるほどしかありません。言語が変わると言葉のイントネーションとリズムが変わるので、必然的に

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森山至貴 x 四元康祐 往復書簡 「詩と音楽と社会的現実と」 第11回:日大アメフト、 野性のエロス、ジプシーの少女たち

from M to Y

ある若いアメフトの選手の話をします。彼のことはもしかしたら四元さんもごぞんじかもしれません。そうです、定期戦で相手方の関西学院大学の選手に怪我をさせた、日本大学の学生のことです。

アメフトに詳しいわけでもなく、また新聞やインターネットのニュースを通じて伝聞情報を多少追いかけた程度ですので、大きく端折った説明にはなってしまいますが、事情はこういうことです。つまり、権力を持

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トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第四回

トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第四回

三宅さん、

イスタンブールのDAMで行われたハルフェティ連詩の発表会、当日別の詩祭とぶつかったとかで参加者は少なかったけれど、密度は高く、深く掘り下げた意見が交わされたましたね。連詩から受ける日本とトルコの詩人の資質の違いについて感想を述べてくれたのは、サリ・バラート(Salih Balat)という詩人です。人柄は優しそうなのだけれど、静かなる威厳というか、詩人としての風格を感じさせる人ですよね

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トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第三回

トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第三回

四元さん、お返事ありがとうございます。

様々な四元さんの投げかけ、大変興味深い問題が潜んでいるように思えます。

そうだ、まず、「ところで、肝心の連詩のテクストはどうなっているんだい?」と思われる方もいらっしゃると思うんですが、諸事情により、ここでは今のところ、全文を載っけられず、さわりだけしかご紹介できないのが残念なのですが、その場の背景をサイド・ストーリー的に書き出していくうちにぼんやり連詩

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トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第二回

トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第二回

三宅さん、

お手紙ありがとうございました。あれからちょうど一ヶ月ですね。まるでついさっきだったような。それでていてもう何年も前の出来事のような。

本当に夢のようでした。初日の発句ならぬ発詩で、ゴクチェが「手に手をとって小舟から湖に飛び込む」という一行を書いたら、その翌々日(でしたっけ?)ほとんど水没した建物の屋根の上から、本当にみんなで手を繋いで飛び込んだり。物静かでお淑やかなペリンや若いエル

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トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第一回

トルコ・ハルフェティ連詩を終えて:三宅勇介 x 四元康祐 往復書簡第一回

四元さん、こんにちは。

今回、四元さんに誘われて、トルコの詩人の方々とトルコにて連詩を作るという企画に参加させていただき、途方もなく貴重な体験をさせていただきました。まず最初に御礼を申し上げます。また、私にとって、単に、詩歌の話だけではなく、自分の人生における体験としても大きな衝撃を持ちました。新しいものの見方を知ったという意味でも、またトルコの詩人のみなさんやそのご家族、友人、そして大変可愛ら

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