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おすすめの本~“実践的”抗菌薬の選び方・使い方~

漠然と難しいと感じてしまう抗菌薬。構造ごとの分類や適応疾患は知っているつもりでも、実臨床での抗菌薬の使い分けに関してよく理解できておらず、分かりやすい本を探しているときに出会ったのがこちらです。

タイトル通り、『実践的』な抗菌薬の選び方や使い方を学べる一冊になっています。個人的なおすすめポイントを3つに絞ってご紹介します。

経口抗菌薬の使い分け

まず、生物学的利用率(bioavailability)が良好な経口抗菌薬を知ることが大事です。日本で実際に多く処方されている経口抗菌薬(第2・3世代セフェム系抗菌薬)は実は生物学的利用率が高くありません。次に、経口抗菌薬を使用する場面(=抗菌薬が必要かつ外来で治療可能な感染症)というのは比較的限られています。頻度の高い疾患とその起因微生物を知ることは、適切な抗菌薬を処方するための第一歩です。また、経口抗菌薬を処方する上で他の薬剤との相互作用を知っておくことも重要です。
本書では、具体的な数値とともに生物学的利用率が良好な経口抗菌薬およびセフェム系抗菌薬の一覧が記載されています。また、外来でよく遭遇する感染症とその原因微生物、および選択すべき抗菌薬や相互作用に注意すべき薬剤の組み合わせと具体的な有害事象もまとめられており、実際の外来診療で直ぐに使いやすいように工夫されています。

似た抗菌薬の使い分け

この章では、構造による分類と対象とする微生物による分類が行われています。構造による分類は確かに他の本でも解説されていることは多いですが、グループごとにポイントが記載されていたり、構造による分類から見た抗菌薬の選択の仕方が端的に説明されていたりして、読みやすく分かりやすい内容になっています。また、対象とする微生物による分類はより臨床で使いやすい分類の仕方だと感じました。微生物は数が多く苦手意識を持ちがちですが、この分類方法に関するページを読むと抗菌薬を選択する際に注目すべき微生物が分かり、それに伴って抗菌薬の使い方も整理されているため実臨床で活かしやすい知識を得ることができます。

実践的な使い分け

以前より「ペニシリンGとアンピシリンはどうやって使い分けるのだろうか?」「カルバペネム間での使い分けはあるのだろうか?」「ニューキノロン間での使い分けはあるのだろうか?」と言った疑問を持っていましたが、まさにその疑問に答えてくれるのがこの章です。ペニシリンGが使用される臨床状況、アンピシリンが使用される臨床状況、ブドウ球菌菌血症に対するペニシリンの適否、臓器移行性など、まさに知りたいと思っていた内容ばかりで非常に勉強になりました。それ以外の抗菌薬についても解説されており、まさに実臨床で困っていることを解決してもらえました。

あまり細かい内容をお伝えするとネタバレになってしまうので大まかな情報しかお伝えできませんでしたが、抗菌薬が苦手だと感じている方はもちろん、大体抗菌薬のことは分かってるけどスペクトラムが同じ抗菌薬も自信を持って使い分けられるようになりたいという方にもおすすめの一冊です。

文責:平山 果歩(自治医科大学附属病院 総合診療内科)

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