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MBA×病院総合医 というキャリア

 皆さん、おはようございます。南奈良総合医療センターの天野雅之です。私は家庭医療専門医とMBAを取得し、市中の急性期病院で働く「病院総合医」です。この記事では、私の世界観を変えてくれた『MBA』について、総合診療と絡めながらご紹介します。

MBAと総合診療は相性バツグン!

 日常診療の中で、ふと「企業の経営者と総合医は似ているな」と感じることがあります。経営者の一番の仕事は『意思決定』です。「不確実性に満ちた未分化な問題に対し、ジェネラリストとして全体像も細部の状況も見る」、「集めた情報をもとに、使える資源を適切に使用してチームで取り組むための戦略を決める」。…なんだかそのまま「総合診療医」に当てはまりそうな気がしませんか?

そもそもMBAとは何か

 MBAとはMaster of Business Administrationの略称です。日本語では経営学“修士”です。資格ではなく、経営学という学問を修めたことに対する「学位」です。大学院(ビジネススクール)に所属し、経営者としての考え方や振舞い方を学び、修士論文など所定のカリキュラムを修了すれば授与されます。MBAには国際認証制度があり、認定校を卒業すれば国際機関でもMBAホルダーという肩書を名乗ることができます。

私とMBAとの出会い

 卒後4年目の冬、恩師である志水太郎先生からの勧めがきっかけでした。それまでMBAのことを全く知りませんでしたが、話を聞いて「面白そう!」と直観しました。当時は「医学教育学修士」の取得と迷いました。部活の部長や演劇の監督などの自分の経験を経営学の視点から振り返ってみたかったこと、医学以外のことを学んでみたかったことから、まずはMBA取得を目指すことにしました。

ビジネススクール

 国際認証校かつ週末受講のできるNUCB Business Schoolに入学しました。ケースシナリオに基づくディスカッションを何十回とこなし、『もしも自分がアップルの社長だったら』『もし自分が起業したての小さな会社の社長だったら』など、いろいろな主人公になりきって『意思決定』を何度も追体験しました。社会経験豊富な同級生とのディスカッションは非常にエキサイティングでした。CMで目にするIT企業、有名な製薬企業、町工場の社長、流通業、ウェブデザイナー…、様々なバックグラウンドを持つクラスメイトと話すだけで、自分がいかに狭い世界で生きてきたか痛感させられました。

臨床業務との両立は大変だった

 学べた内容は非常に魅力的でしたが、苦労も沢山ありました。まず、単語がわからない。「マーケティング」「イノベーション」「サプライチェーン」…カタカナばかりで戸惑いました。漫画で描かれたやさしい解説本からスタートし、通勤電車内で100ページ以上ある大量の課題を読み込み、金曜日の夜から毎回2徹で課題提出とクラスディスカッションをこなしました。「卒業試験の勉強をしながら2連直をする」くらい辛かったですが、数年がかりでなんとか単位を取り、卒業できました。

MBAが総合診療にどう活きるか

 意思決定に際しての「不確実性との向き合い方」、「課題設定のチカラ」「優先順位のつけ方」の訓練により、日常診療のクオリティが高まりました。また、「チームのまとめかた」「行動経済学の応用法」「リーダーシップ」などを、教科書のみならず”ケースを用いて繰り返しシミュレーションできた”という経験が、病院総合医としての日々のチーム運営/チーム診療に活きていると感じています。

総合医はMBAを取得すべきか

 ビジネススクールは非常に多くのことを学べますが、学位取得にはそれなりの覚悟が必要です。エッセンスを学ぶのであれば、各ビジネススクールの講師が単発講義やオンラインレクチャーを開催していますし、最近は医療者向けの勉強会もあります。数年前に流行した『もしドラ』や、『ハーバードビジネスレビュー』などもおすすめです。もし、正式な学位取得にご興味をお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひお気軽にご連絡ください。
この記事が少しでも皆さんのキャリア選択の参考になれば幸いです。

(文責:天野 雅之 南奈良総合医療センター 総合診療科/教育研修センター)

※当記事の内容は、所属する学会や組織としての意見ではなく投稿者個人の意見です。
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