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インクルーシブなのは学校施設だけじゃない!糸魚川市立ひすいの里総合学校

一般社団法人公共建築協会の第16回公共建築賞「公共建築賞・優秀賞」を、⽷⿂川市⽴⽷⿂川⼩学校・糸⿂川市⽴ひすいの⾥総合学校として受賞しているなんて、全く知らないで伺った今回の訪問。

ちなみに、この「公共建築賞・優秀賞」同じときに受賞している建築物がこんな感じです。すごくないですか?

北陸新幹線の糸魚川駅を降りて、比較的すぐに到着した学校は、ここが学校?と思うほどのすばらしい赤レンガ。

まず見えてくるのがこの赤レンガ

 改築前は市の小学校の余裕教室を利用した県の特別支援学校が併設されていたが、市の小学校の改築に当たり県の特別支援学校の整備予定がないことから、県の特別支援学校を市が引き取った。そして市立の特別支援学校として、小学校整備に含めた一体の校舎として整備できたことは、行政の垣根を越えて、地域が連携して子どもたちを育てていくという地域力を示すものである。「糸魚川小学校」と「ひすいの里総合学校」は別々の学校であるが、子どもたちは同じ昇降口から登校し、お互いに挨拶を交わし、両校の児童が同じ校舎で生活している。
 特徴あるレンガの外観は、糸魚川駅のシンボルだった「赤レンガ車庫」のイメージを、市民の要望により「赤レンガ学校」として、記憶を継承したものである。学校建築としての新規性や独創性を狙った作品ではなく、むしろ児童が学ぶ場所としての本質的なアイデアを随所に盛り込み、明るく開放的な学びの環境をつくるという学校建築でもっとも大切にすべき空間イメージが、穏やかに実現された居心地のよい校舎になっている。

「公共建築」No.215 2018.11 p.44

この「公共建築」No.215 2018.11 p.44 に1階平面図が掲載されていますが、左上の給食室で、特別支援学校の児童生徒の分も作られています。校内を見学していた際にたまたま糸魚川小学校の栄養教諭の先生とすれ違い、給食についても伺うことができました。

Q 献立はいっしょ?
A 同じものを出しています。
Q 食具はどのようにしていますか?
A 個別に必要な子は持参してもらっています。基本は共通です。
Q 献立表も同じもの?
A そもそも子どもたちが見やすいように作っているので、共通です。

令和2年4月の給食だよりが公開されていました

 卒後必要となる、健康的で生活リズムのある毎日を過ごすためにも、食育はとても重要です。特に知的障害のある子の視覚的支援としても、赤・黄・緑の要素を意識してバランスよく食べられるようになるきっかけになるのではと思いました。親さえ読めればいいというような漢字だらけ(&ふりがなさえふっておけばいいような)の給食だよりより、ずっとウキウキする給食だより、こちらも嬉しくなりました!

 給食の献立を作る栄養教諭の先生も、特支の分もついでに作ってあげるという感じはまったくなく、どこに在籍していても「うちの学校の子たち」という感じで、赤黄緑にわけられた献立表をみながら中学部の子たちもとても楽しみにしているそうです。

 もう1か所、ご紹介したいのが、糸魚川小学校の図書室です。東洋大学名誉教授 長澤 悟先生が「新しい時代の学びに対応した学校施設の在り方について」の資料であげられているように、まさに糸魚川小学校の図書室はラーニング・コモンズとなっていました。そしてその図書室に、毎週授業でひすいの里総合学校の児童生徒も本を借りに来るそうです。絵本プラスアルファくらいの蔵書しかない図書室ではなく、びっくりするほど広い図書室に、各コーナー要所要所に子どもたちがきっと転がったり丸まったりしながら本を眺めているんだろうなと想像がつくスペースがあります。本を読む場所、ではなく、本を楽しむ、資料をながめる、なんとなく歩き回る、そんなことが可能な環境がありました。障害や特性があってもなくても、想像力も自主性も育つし、多様なニーズにもこたえられるだろうと感じました。

 図書室の司書の先生からお話を伺えました。整備はまだまだこれから、ということで、今の課題は、せっかく子どもたちがもっている端末を使った電子書籍の充実とのことでした。点字の本、大活字本など、さまざまな本を準備していることもお話くださいました。LLブックマルチメディアデイジー図書について意見交換ができたのもとても有意義でした。図書室に借りにくる時間とは別に、週1回支援学校の教室に司書の先生が行って読み聞かせなども行っているとのことでした。

 『総合教育技術』2019年8月号に〈学校環境整備〉特別支援学校と普通校の校舎合築で子ども・教師の心が育つそこにいる人々がつながっていっていることを見ることができ、インクルーシブにならなければいけないのは子供たちの教育の前に、保護者・教職員を含めた大人の社会や理解だと再確認しました。児童生徒に対して決めつけて可能性を制限するのではなく、みんなの「今」を幸せにする学校であり続けてほしいと願います。


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